キス文化の違い:ドイツ人とフランス人、社会主義者のキス

 

日本で5月23日は「キスの日」になっている。
1946(昭和21)年のこの日、『はたちの青春』の中で日本の映画史上、初めてのキスシーンが登場したことにちなんでこんな記念日が爆誕したと。
このキスシーンに大興奮したという日本人も、今は昔のはなし。

キスの“先進国”と言えば欧米で、あちらでは「おはよう」や「こんにちは」のあいさつ代わりに、家族や友人同士でほおとほおを当てるキスをよくする。
浜松では以前、日系ブラジル人の小学生が家でやってるその習慣を、学校で友人相手に再現して問題になったという話を聞いた。
これには悪意なんて一切なく、文化の違いでしかないから、多文化共生のゴールデンルール「郷に入っては郷に従え」に基づいて、その子には日本の学校では、日本式のあいさつをさせることで落ち着いたらしい。

 

さて、さっきキスの先進国として「欧米」とまとめてしまったのだが、その当事者に話を聞くと、それぞれの国や文化圏でキスのやり方は違っている。
ドイツ人の話では、相手とハグをして、ほっぺとほっぺでキスをすることは若い女性同士でよくあるし、唇を重ねるキスも街中でたまに見るという。
もちろんそれは同性愛ではなく、ただのあいさつで恋人と違って一瞬で終わる。
隣のフランス人はもっと積極的で意味が軽く、年齢や性別に関係なくキスが一般的な習慣になっているから、そのドイツ人も初対面のフランス人と会ったとき、あいさつとして突然ハグ&キスをされて戸惑った。

日本人が韓国へ行くと、女性同士が手をつないで歩いているのを見て驚く人も多いから、すぐ近くの国でも対人関係の距離感や常識はやっぱり違う。

 

 

フランスの習慣に困惑した知人のドイツ人がドン引きというか、それを超えて「disgusting」(とても不快な、へどが出そうな、おぞましい)と言ったのがベルリンの壁にあるコレだ。

 

 

落書きの下で2人のおっさん同士が唇を重ねて、「ぶっちゅ~」という効果音が聞こえてきそうなほど、熱烈なキッスをしている。
1979年にドイツ民主共和国(東ドイツ)の建国30周年記念を祝う式典で、当時の東ドイツとソ連の最高指導者・ホーネッカーブレジネフがあいさつとしてこんなキスをした。
その様子をベルリンの壁に描いたこの絵はとても有名で、世界で最も有名なキスシーンのひとつになっている。
ちなみに作品名は「神よ、この死に至る愛の中で我を生き延びさせ給え」だ。

知人にこれはドイツの文化かたずねると、「そんなワケあるか!これはロシアの文化だ。ボクから見たら、本当に disgusting だ!」と全身全霊で否定する。すまんな。
ロシアなどの東スラブ圏では、強い親しみを示すために男性同士でも唇でキスをすることもあるけど、それはポーランドなど西スラブ圏の人が見ても異様らしい。

こういう文化的な背景のほか、当時は同じ価値観を共有する社会主義国家の指導者同士が特別な連帯感を示すあいさつとして、こんな感じに唇と唇を重ねることもあったのだ。(Socialist fraternal kiss 
同じキスでも時代や文化圏によって、やり方や意味はそれぞれ違う。

 

これもベルリンの壁にある絵

 

ブレジネフによるキスの嵐

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。