魔女の伝説よりも恐ろしい「人類史上最悪の会議」
ドイツには、魔女たちがブロッケン山に集まってサバト(集会)を開くという「ワルプルギスの夜」の言い伝えがある。しかし、恐ろしいこの集会はファンタジー世界の伝説にすぎない。
しかし、1942年にベルリン郊外で開催された「ヴァンゼー会議」は、人類史上もっとも恐ろしい会議といっても過言ではない。
本当の意味で戦慄するのは、1942年にベルリン郊外で開催された「ヴァンゼー会議」だ。その内容を知れば、きっと魔女や悪魔さえ震え上がる。
この会議こそが、人類史上もっとも残酷な「殺人計画」が決められた場だったからだ。
ヴァンゼー会議が開催された理由と目的
第二次世界大戦中の1942年1月20日、ベルリン郊外のヴァンゼー湖畔にある別荘に、ナチス政権の重要人物たちが集まった。これがいわゆるヴァンゼー会議だ。
この会議の目的は、ヨーロッパに住むユダヤ人を組織的かつ効率的に殺害するための「具体的な手続き」を調整することだった。
会議を主導したのは、国家保安本部部長のラインハルト・ハイドリヒ。彼は「ユダヤ人問題の最終的解決」、つまりユダヤ人の絶滅任務をまかされていた人物だ。
1939年9月、ナチスドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦がはじまると、ナチスはヨーロッパの占領地でユダヤ人を虐殺していた。
ただ、それは銃殺などによる単発的な手法が多く、ユダヤ人の絶滅という最終目標からすると「効率」が悪かった。
そこで、ナチスは国家の全機関を挙げて「効率的な絶滅体制」を構築することにした。

ナチス・ドイツを象徴するエンブレム
今のドイツでは違法とされていて、これを身につけると警察に捕まる。
ホロコースト(ユダヤ人虐殺)の本格化:システム化された大量虐殺
ヴァンゼー会議には、外務省、法務省、内務省などの各省トップや親衛隊の代表が集まった。ハイドリヒを議長としたこの会議によって、以下のような「殺人システム」が構築される。
国家機関の連携: あらゆる官庁が協力体制をとる。
鉄道網の利用: 占領地のユダヤ人をできる限り早く、強制(絶滅)収容所へ移送する。
計画的殺害: 毒ガスや強制労働によって、計画的に人々を殺害する。
これによって、各地でバラバラに行われていた殺害が、絶滅収容所を中心に「点と線」で結ばれた。
ホロコースト(ユダヤ人虐殺)はただの虐殺ではない。国家が特定の民族の根絶を目的とし、「公式プロジェクト」として進められたことに大きな特徴がある。
「ユダヤ人の定義」をめぐる冷酷な議論
会議で大きな議論となったのが、「ユダヤ人の定義」だ。ナチスにとって、誰を殺害対象にするかは重要な問題だったのだ。
ユダヤ人の血が半分、あるいは4分の1入っている「混血者」はどう扱うべきか?
ドイツ人と結婚しているユダヤ人はどうなるのか?
これは核心的に重要な問題だった。
The situation of people who were half or quarter Jews, and of Jews who were married to non-Jews, was more complex.
ハイドリヒは「血の濃度」を重視し、ユダヤ人の祖父母を持つ者はユダヤ人(=虐殺対象)とした。
また、祖父母の一方がユダヤ人である場合は、以下の基準で判断された。
外見:ユダヤ人であることを示す「人種的に特に望ましくない容姿」をしているか。
思想:「ユダヤ人のような感情と行動を示す政治的記録」があるか。
この基準に当てはまれば「ユダヤ人」、そうでなければ「ドイツ人」とされ、紙一重の差で生か死かが決められた。他にも、党と国家の最高機関から「免除」を受けた人物も、ユダヤ人とは見なされなかった。
ユダヤ人かどうかの判断は例外規定もあって複雑なので、くわしいことは上記のリンク先を見て確認してほしい。
つまり、ナチス・ドイツはユダヤ人の絶滅を決定したが、じつは「ユダヤ人とは誰か?」ということがよく分からなかったのだ。
ヴァンゼー会議で出席者の間で激しい議論が交わされて、やっとそれが明確になった。
彼らが勝手に「ユダヤ人」を定義したため、それまで「自分はドイツ人だ」と信じていた人びとまでも、強制収容所へ送られることになったという。

1935年の「ニュルンベルク法」による人種分類(ドイツ人、混血人、ユダヤ人)。
ヴァンゼー会議でさらに細かく決められた。
国家による犯罪:ヴァンゼー会議が残したもの
ヴァンゼー会議とはなにか?
それは、高度な文明を持つ近代国家が、その組織力と技術を総動員して、一つの民族を地上から消し去ろうとした歴史的な証拠だ。
この会議の後、ホロコーストは本格化し、結果として約600万人ものユダヤ人が虐殺された。
ドイツでもっとも寒さが厳しい時期に、国家の重要人物が集まって、書類を交わしながら人種を定義し、大量虐殺の効率化を話し合った。人類の歴史で、これほど冷徹で恐ろしい会議は他にないだろう

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