正月文化とキリスト教からわかる、日本と韓国の社会・価値観の違い

日本と韓国の関係は、地理的には隣同士なのに、歴史認識で対立しているから、「近くて遠い国」と言われる。
台湾はソコが違う。同じ日本の統治を受けても、今では歴史問題を抱えていないから、日台は「近くて近い」関係と言える。
日韓は社会や価値観でも大きな違いがある。その理由を、これから「正月」と「キリスト教」の観点からみていこう。

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カワウソの習性と韓国の正月

カワウソは変わった生き物で、とった魚を食べる前に並べる習性がある。
古代の中国人には、その様子が先祖の霊にお供え物を並べている姿と重なったから、古典の『礼記』には「獺、魚を祭る」と書かれている。

カワウソは「天を頼りとする獣」という意味で漢字で「獺」と書き、彼らが魚を並べる儀式を「獺祭魚(だっさいぎょ)」という。
それが日本にも伝わり、今では春の季語に「獺(かわうそ)魚を祭る」がある。

一周回って、人間界で「獺祭魚」と似ているのが韓国の正月だ。韓国の人たちも正月になると、たくさんのごちそうを供えて先祖の霊を祀っている。

 

旧暦で祝う韓国の正月はいつ?

最近、知り合いの韓国人女性のハユンと話をしたとき、「あと2週間で正月だから、そろそろ準備をしないといけない」と聞いた。
日本は明治時代に正月を現在の西暦1月1日に移したが、韓国は今でも正月は旧暦にしたがっているから、今年は2月16日〜18日がその期間になる。

そのため正月が近づくと、ご先祖の霊にお供えする食べ物などを用意しないといけない。
日本人からすると、2月に正月を迎えるというのはタイミングを外しまくって、「場違い感」は否めない。
しかし、別の韓国人に言わせると、

「クリスマスというビッグイベントで燃え尽きるから、その1週間後に正月なんて考えられない。1ヶ月ぐらいの休憩はほしい。」

ということだ。
ほとんどの韓国人にとっては、春(冬)の正月と秋の秋夕(チュソク)が一年の2大イベントになる。日本人にとっての盆と正月と同じだ。

韓国でキリスト教徒が増えた歴史

その1週間後、今度は韓国人男性のドユンと話す機会があった。正月を目前にひかえて、忙しさもピークに達していると思ったら、「いや、私は忙しくないよ」と言われた。理由は、指摘されて思い出したのが、彼はキリスト教徒だった。

江戸時代の日本と同じように、朝鮮王朝もキリスト教を「邪教」として厳しく禁止していた。
19世紀後半、これも日本と同じで、朝鮮が開国するとキリスト教を解禁し、西洋人の布教活動を認め、信者も増えていった。

日本の統治が終わった1945年の前、人口の約2%がキリスト教徒だった。
戦後、キリスト教徒は爆発的に増えていき、1991年までには、カトリックとプロテスタントの合計で人口の約25%がキリスト教徒となった。
その後も信者は増え続け、2024年には人口の31%に達した。

この理由の1つに「南進」がある。
朝鮮戦争(1950〜1953年)の前まで、朝鮮半島のキリスト教徒の3分の2は北朝鮮に住んでいたという説があり、戦後、そのほとんどが韓国へ逃げてきた。(Christianity in Korea

日本は対照的に、クリスマスやバレンタインデーが人気で、最近はハロウィンも定着しているのに、キリスト教は受け入れられない。今でも人口の1%で「激レア」と言っていいほど、信者は少ない。

以前、アメリカ人のキリスト教の聖職者がそのことを不思議に思っていた。彼から見たら、日本人も韓国人も価値観や文化は似ているのに、なんでこんな一方的な結果になるのか、さっぱり理由がわからないという。

 

韓国正月の風景

韓国で正月にすること

韓国では伝統的に、正月(ソルナル)の朝に「茶礼(チャレ)」という儀式をおこなう。
先祖の霊にさまざまな食べ物を供えて、家族が両手両膝を床につけて頭を深々と下げて最高の敬意や感謝をあらわす。このお辞儀を「クンジョル」という。

正月と秋夕(チュソク)に先祖の霊に供えるものは同じだが、正月には「トックク」を食べるところが違う。

細長いお餅は「長寿」を表し、それをお金の形に切ったものは「財運」を意味する。つまり、トッククは正月にふさわしく、長生きと金運アップを象徴する縁起のいい食べ物だ。これを食べることで、1歳年をとると考えられている。
※以上の説明は地域によって違いがあるかもしれない。

韓国の正月は儒教、日本の正月は神道の考え方がベースになっている。日本では年神を家に迎え、その神の力が宿った鏡餅を食べることで、新しい年の健康や幸せを願う。
韓国の伝統的な正月では、こうした「新年の神」はおそらくいない。

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韓国のキリスト教徒は正月に何をする?

ドユンの家族はキリスト教徒だから、先祖の霊を祀る茶礼を「偶像崇拝」とみなし、正月にこの儀式をしない。正月の朝に聖書を読み、神に新年の幸せを祈るという。

ただし、これは彼の家族のケースで、同じキリスト教徒でも茶礼に対する考え方は違い、正月にすることも異なるらしい。
柔軟な信者は先祖の位牌やお供え物を用意し、宗教儀式ではなく、韓国文化と見なして「茶礼(チャレ)」をすることがある。
また、位牌は置かないが、「神」にお供え物をして、感謝の気持ちを伝える場合もあるらしい。

日本の初詣のように、家族で教会へ行って礼拝をするクリスチャンも多い。

しかし、厳格なキリスト教徒のドユンの家族も、正月料理の「トックク」は食べる。こうして韓国文化を継承し、韓国民とクリスチャンを両立している。
国民の約3割がキリスト教徒の韓国では、こうした正月風景が一般的だが、日本ではまず見られない。日本のキリスト教徒が正月をどう過ごしているか、知らない日本人がほとんどだと思われる。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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