大学のバスケットの試合で、監督が選手を集めてこんな作戦の指示を出す。
「よく聞け。いま我々のチームにできていないことが2つある。何か分かるか。それはディフェンスとオフェンスだ」
こんなギャグマンガみたいなことが韓国であったらしい。
40年ほど前、高麗大のバスケット部の監督が試合中に選手を呼んで、そんな作戦を伝えたという。
誇張された部分もあるけれど、韓国のスポーツ界ではこの話が伝説のように語られていて、驚くことに、その監督の“手腕”が高く評価されているのだ。
中央日報(2024.01.24)
詳細な作戦指示や選手管理はコーチに任せる。いい加減に見えるが、選手たちを信頼して大きな絵を描くスタイルだ。
【コラム】サッカー韓国監督の無作戦放任サッカー(1)
もちろん、これは結果を出していればの話だ。
当時、この監督が指導した高麗大バスケット部は試合に勝っていたから、こんな「リーダーシップ」が強調されたという。
一方で、いまのサッカー韓国代表を率いるクリンスマン監督はそうじゃない。
韓国はアジアカップで、「格下」と思われていたマレーシアに引き分け、国民の怒りを買った。
上のコラムでは、クリンスマン監督の指導スタイルは高麗大の監督と似ているが、リーダーシップを発揮しているのではなく、「無作戦放任」のようだと批判している。
「いま我々のチームにできていないことが2つある。それはディフェンスとオフェンスだ」
そんな指示は「ドーンと行ってバーンと点を取ってこい!」みたいに大ざっぱすぎて、個人的には、「あきらめたらそこで試合終了ですよ」の方がまだ効果的だと思う。
でも、韓国の指導では、選手に細かい戦術を伝え、それを確実に実行させることよりも、選手たちを信じて、思い切ってまかせるスタイルの方が合っているらしい。
知人のアメリカ人は日本と韓国の学校で英語を教えていた。
彼女も自分の経験から、日本人と比べて、韓国人の性格や考え方にはそんな傾向があると感じたと言う。
そのアメリカ人はニューヨーク出身の女性で、20代前半に日本へやって来て初めて英語を教えた。
それまで教師の経験はゼロ。
だから、“白紙”の状態(精神)に日本式の指導がたたき込まれたことになる。
彼女は最初のころ、日本の教え方が細かすぎることに戸惑った。
事前に英語の先生と授業の打ち合わせをすることになっていて、彼女が指導案を作成して先生に見せると、
「この活動の目的はなんですか? それなら、ここをこう変えましょう」
「このタイミングで、生徒にこんな質問をしてください。」
「この内容は生徒のレベルに合っていませんね。子どもたちのやる気を引き出すために、ここをこう変更して…」
と、ダメ出しをいくつもくらう。
授業の後には「反省会」をするから、アメリカ人の新米先生はすっかり疲れてしまった。
それでも、経験を積んで慣れていくと、その時間がだんだんと短くなり、精神的にもラクになる。
すると、「細かすぎるわ」という気持ちが薄れ、日本人の先生の熱心さに感心するようになった。
教師による個人差はあっても、日本の学校ではだいたいこんな感じだった。
その後、彼女は韓国へ渡り、今度はソウルの小中学校で英語を教えるようになる。
そこでも最初は、英語担当の先生との授業の打ち合わせがあったから、彼女は日本で作成していたような指導案を女性の先生に見せた。
すると、その韓国人先生から「ほとんど完璧で直すところがない! あなたは何者?」とビックリされたという。
彼女は後日、「あの時、先生の目が大きくなって、彼女が興奮したのは面白かった」と楽しそうに話していた。
自分の経歴は学校側へ伝えたはずなのに、この先生はそれを確認していなかったらしい。
このアメリカ人からすると、韓国人のこんなアバウトなところが日本人とは違う。
彼女が初めての授業を終えると、日本の学校と同じように、韓国人の先生と一緒に“振り返り”をした。
そこでは、少しアドバイスをもらっただけで、「あなたの授業はとても素晴らしかった! もう好きにやっていい」と称賛され、太鼓判を押される。
その後の授業では、たまに韓国人先生が見に来ることはあっても、基本的には彼女に「おまかせ」で、授業についてほとんど口を出さなかった。
「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の PDCAのうち、韓国では「Do」以外が日本よりもゆるかったと思われる。
このアメリカ人としては、はじめにハードモードを経験したことはラッキーで、韓国から日本の学校へ行っていたらゾッとすると言う。
このアメリカ人からすると、韓国の先生の態度に対する見方は2つある。
ひとつは、日本での経験がある自分は信頼されているというポジティブなもの。
もうひとつは、授業を自分に丸投げしているというネガティブなもの。
実際、韓国人の先生はその時間の裏で、別の個人的な仕事を進めていた。
日韓で教えた経験から、彼女はこんな違いを感じた。
日本人は計画的にものごとを進めて、細かいところまで配慮する一方、韓国人は大まかな情報を伝えて、あとは相手にまかせる。
それぞれメリット・デメリットはあるけれど、日韓の学校ではそのやり方が合っている。
夏休みの前に、それを象徴するような出来事があった。
韓国の中学校で先生から、2周間ほど前に「夏休みに英語のキャンプ(日本でいう夏期講習)をやってほしい」と頼まれた。
でも、彼女はすでに夏休みの計画を立てている。
それを伝えると、先生に「わたしも突然知らされて驚いた。何とかやってほしい」と強く頼まれて、仕方なくキャンプをすることになった。
キャンプについて知らされたのは、期間と参加する生徒の学年と人数だけ。
どんな教材を使い、どう教えるかは自分で考えることになったが、相談すればアドバイスはくれた。
経験上、日本の学校だったら、こんな事態は考えれないと言う。
韓国の学校で働いていると、急に仕事を頼まれたり、計画が変更されることがよくあって、彼女は「安定感」のある日本の学校との違いを感じた。
韓国式では、相手を信頼してまかせるが、無責任な放任主義のように感じることもある。
でも、このアメリカ人も性格や考え方は大ざっぱだから、全体的には、韓国のやり方のほうが合っていたらしい。
そんなアメリカ人の話は、「いま我々のチームにできていないことが2つある。それはディフェンスとオフェンスだ」という大胆な作戦と、根本でつながっていると思う。
楽しく読ませていただきました。
ここでも韓日の違いがはっきり見えますね。実は、韓国の現在の教育システムは、日帝時代に日本が朝鮮に植えた教育システムなんです。確かに、そこからアメリカのシステムが組み込まれて変質しましたが、基本的には日本が植えたシステムです。それでもこんな違いがあるんですね。
今日、韓国を世界10大強国としてリードするのに決定的な役割を果たしたのは、朴正熙元大統領です。彼の祖国近代化の精神は朝鮮の精神ではなく、日本の精神でした。彼は祖国のために「滅私奉公」するという信念で様々な困難を克服し、韓国を発展させました。滅私奉公は朝鮮の歴史には出てこない言葉で、これは当時の日本人の精神でした。
韓国と日本はお互いに必ず必要な存在だと思います。
韓国の学校は日本ほど細かく、厳しくないようです。
でも、このアメリカ人は韓国の子どもたちのほうが、日本の子どもたちより英語をうまく話すと言います。
やっぱり、韓国には韓国に合ったやり方があるんでしょうね。