「仏教」は日本とタイの共通点で、どっちの国でもコンビニよりお寺の数のほうが多い。
現在、タイ国内には、3万5000〜4万5000のお寺があるとされている。
日本では約75000だから、寺の数ではタイを圧倒している。しかし、そのうち約20000のお寺は空き寺となっているから、日本ではお寺の「経営」が難しいことがわかる。
最近、タイ北部チェンマイ出身で、日本語学校に通う20代女性「プー(タイ語でカニの意味)」と一緒にお寺へ行って、そのあとカフェで話をした。
日本とタイでは同じ仏教が信仰されていても、やり方や考え方、人びとの信仰心はそれぞれ違う。前回に引き続き、今回はお供え物、線香の本数、おみくじなどについて書いていこう。
タイと日本のお寺はどう違う? チェンマイ女子と話して気づいた「宗教観」

お供え物はするけれど…
ーーこの前、パキスタン人を日本のお寺に連れて行ったんだ。イスラム教も仏教も神や仏を崇拝することは同じだけど、仏像の前にクッキーが置いてあるのを見て、「イスラム教ではアッラーにものを供える発想はないです」って言ってた。タイの仏教もお供えはするよね?
プー:はい、普通にしますよ。タイ人は食べ物、お花、線香なんかをお供えするので、仏像の前はよく「山盛り状態」になってまいす。お供え物をしないと、逆に失礼な気がします。それに、お寺の中で仏像の前に何もなかったら、なんかさみしいですね。
ーーその辺の感覚は日本人と同じだな。線香は何本あげるの?
プー:3本です。仏像で「3」は大切な数字なんでで、「仏・法(仏の教え)・僧」の3つを表しているんですよ! 日本は何本なんですか?
ーー(知ってることをドヤ顔で話されると、リアクションに困るな。)日本では宗派によってバラバラ。3本のところもあれば、1本のところもある。なかには線香を立てずに寝かせる宗派もある。
※天台宗や真言宗などでは3本、曹洞宗や浄土宗などでは1本。浄土真宗は1本を横にする。
プー:同じ仏教なのに、そんなにやり方が違うんですか?
ーー:三冠統一王者みたいに、1つにしてくれると楽なんだけどね。タイの仏教もいくつかグループがあるの?
プー:1つだけだと思います。お供え物のやり方で、違いがあるとは聞いたことありませんし。
※実際には、タイにも「マハーニカーイ」と「ダンマユート」という2大宗派があるらしい。

線香の本数でわかる、仏と幽霊の「格差」
プー:タイでは、ピー(精霊や幽霊)にも線香をあげるんです。仏様には3本ですけど、ピーには1本だけ。
ーー:そんな残酷な格差があるんだ。日本のお寺と神社みたいに、タイでは仏教とピー信仰(精霊信仰)は対等じゃないの?
プー:まったく違いますよ! ブッダは別格の存在です。ピーよりも、2つ上の次元にいらっしゃいます。タイのピー信仰って、「宗教」と言えるほどしっかりしたものじゃないです。
ーー:なるほど。それは興味深い。日本でもお葬式で線香をあげるときは1本なんだ。深く考えことはなかったけど、まだ仏様になっていない「幽霊」の状態だから、1本なのかもしれない。
※日本の仏教では、四十九日までは線香を1本にするのが一般的。

中国式のおみくじ
・お寺の中に、棒が何本も入った竹の筒がある。
・それをすこし下に向けて振ると、番号が書かれた棒が1本落ちる。
(激しく振るとすべての棒を床に落として、寺の人に叱られるおそれあり。)
・近くにある棚からその番号の紙を取り出したり、係の人に頼んで同じ番号の紙をもらう。
・その紙に運勢や吉凶が書かれている。
以上は大ざっぱな説明なので、くわしいことは各自で「おみくじ」で確認してくれ。
日本のおみくじはUFOキャッチー?
ーー:おみくじはどう? イスラム教ではそれも NGらしいけど、タイのお寺にもおみくじはあるの?
プー:ありますよ。でも、日本とはやり方が違います。さっきのお寺では、たくさんある中から、自分でくじを取り出すことができました。なんか UFOキャッチーみたいな感覚でした。
ーー:まぁ、ビジュとしてはそんな感じか。UFOキャッチー系じゃないとしたら、タイのおみくじはどんな感じなの?
プー:たくさんの棒が入った筒を斜めにして振ると、番号が書かれた棒が1本出てきます。それで、同じ番号の紙(くじ)と交換するのです。書かれている内容は、日本のおみくじと似たようなものですね。
ーー:その「シャカシャカ系」は中国と同じだな。もともとタイの仏教にはおみくじなんてなかったんじゃない? お寺へ行く目的が『タンブン(徳を積む)』なら、占いはいらない気がする。そもそも、おみくじは仏教本来の目的と合っていないような…。日本のお寺にもおみくじはあるから、それを非難する気はないけど。」
プー:え〜、わかりません。子どものころから、そのやり方だったから、おみくじに疑問を感じたことなんてありません。でも、タイの文化や社会には中国の影響があるから、じつはそうかもしれませんね。

おみくじはいくら払う?
ーー:さっきのお寺ではおみくじは100円だった。タイではいくらぐらい?
プー:決まっていません。それは「自分の気持ち」なんです。だから1バーツ(約5円)でも1万バーツでもオッケーです。
ーー:へ〜、自分しだいなんだ。『幸せはいつも自分の心がきめる』っていう相田みつを大先生のことばを思い出したよ。プーはいくら出してたの?」
プー:100バーツ(約500円)が多いですね。
※ネットを見ると、タイのおみくじは20B〜100Bが一般的らしい。
ーー:えっ、タイで100バーツは高くない? 今、パッタイ(タイ風焼きそば)はいくらぐらいするの?
プー:なんで基準がパッタイなんですか。まぁいいです。安い店なら60Bくらいですね。
ーー:日本の焼きそばを600円としてざっくり換算すると、感覚としては1000円か。最近、日本の物価はおかしくなっているけど、おみくじでその設定は強気すぎるな。
プー:タイ人の感覚だと、お寺にお金を出すのは「お布施(寄付)」の意味が強いんです。だから気前がよくなるんです。私の父は500バーツ(約2500円)を出したことがありますし、その何倍も出す人はきっといます。
ーー:日本のお坊さんが聞いたら、嫉妬にかられて地獄に落ちそう。最近、日本の物価はおかしくなって、チート行為が横行している。でも、おみくじの場合、『ステレス値上げ』は無理。お寺や神社の経営は難しいって聞くし、素直に値上げするしかないのかな。」
プー:タイみたいに、自分で決めれるようにしたらどうですか?
わい:日本でそれは危険だ。熱心なタイ人と違って、日本人のほとんどのは無宗教だから、5円玉ばかりを入れちゃいそう。お寺の経営で日本人の信心をあてにするのは、ギャンブルみたいなものだと思うよ。
プー:身もフタもない言い方ですね。日本には「喜捨(進んで寄付すること)」の文化はないんですか?
ーー:顕微鏡を使えば見つかるレベルじゃない? 日常生活でする喜捨なんて、お賽銭ぐらいだし。喜捨は仏教用語で、ふつうの日本人には馴染みがない。
プー:タイ人とは、信仰心やお金の感覚が違いますね〜。
ーー:信心と出費の大きさが比例しているのは、どこの国でも同じだよ。
プー:それが、日本とタイのお供え物やおみくじの差に表れていますね。ある意味、仏様とピーの格差よりも残酷じゃないですか?
ーー:日本のお寺にとってはそうかも。
※比叡山延暦寺のおみくじは1回1000円(値上がりしているかも)。お坊さんのありがたい話を聞けるから、高いと感じるかどうかは信仰心による。

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