日本に住むミャンマー人の話 価値観の違いや共通点、仏教やナッ信仰について

時間は誰にとっても平等でも、1年が始まるタイミングは国や文化によって違う。
ミャンマーでは、今年は4月13日に正月が始まって、東京の公園では伝統行事の「ティンジャン(水かけ祭り)」が行われた。水をかけ合うことで、昨年1年の穢れを洗い流し、心身を清めて新年を迎えるという意味がある。ただ、今年は3月に大地震が発生して多くの人が亡くなった影響で、東京では犠牲者への祈りが捧げられたという。
今回は、日本の地方都市で働く20代のミャンマー人男性から聞いた話をシェアしよう。

 

コブラに守られているミャンマーの仏像

 

ーー日本も仏教の影響が強いけど、ミャンマーではそれがマシマシになって、男性は出家してお坊さんになる習慣があると聞いた。

そうです。私は8歳のときに出家しました。出家して仏教僧になったら、もう俗世の人間ではなくなります。家族とも縁を切ることになりますから、親は私の名前を呼ぶことができませんでした。
お坊さんの生活で大変だったのは食事で、1日に2回、朝と昼だけしか食べることができませんでした。あとは托鉢をしたり、仏教について学んだり瞑想をしたりして過ごしていました。でも、出家は1週間だけだったので、何とか乗り越えられましたし、いい経験になりましたね。

 

ーー日本に住んでいて、ミャンマー人の価値観や考え方の違いを感じたことはある?

もちろんあります。
何年か前、私がホストになってクリスマス・パーティーを開いて、コストコで5万円以上のビールやチキンなどを買って、会場でそれを並べました。夕方になると、友だちの友だちとか、私の知らない人まで来て自由に食べて飲んで帰っていきました。
日本人の友人は「自分は何を持って行けばいい?」とメールで聞いてきて、「その必要はありません。何も持たずに来てください」と返信したら、ビックリしていましたね。
自分に大きな負担がかかっても、来てくれた人が楽しんでくれれば、それでいいと思うのがミャンマーの文化なんです。

ーー1人が5万円も出して会を主催して、他の人は好き勝手に食べて帰るというのは、たしかに日本人の一般的なパーティーのやり方とは違う。自分は1円も払わないというのは、気が引けて楽しめないかもしれない。

仏教的に言うと、他人に食事を振る舞うことで「功徳」を得ることができるんです。
ミャンマーでは息子が出家するとき、両親や祖父母は盛大なパーティーを開きます。大量の食べ物や飲み物を用意して、家にやってきた人たちに食べてもらいます。誰もお祝いの品やお金なんて持ってこないで、手ぶらで来て食べて飲んで、お腹いっぱいになったら帰ります。
自分もそんな考え方を受け継いでいるので、5万円を出してパーティーを開くのも自然なことなんです。
まぁ、ミャンマー人はそんな豪華なパーティーを何度か開くので、お金がたまりにくいんですけど。

 

ーーでは逆に、日本人とミャンマー人の価値観や考え方で似ていると感じたものはある?

日本の「わび・さび」です。「わび・さび」の考え方や価値観を象徴しているのが茶室だと聞きました。茶室は金や銀などを使って豪華な飾り付けをしません。私の理解では、それはお金や物への欲望を捨てて、シンプルに生きることを意味していて、仏教の考え方と共通しています。

 

ーー日本に住んでいて、不満に感じることは?

そう言われて、いま思い浮かぶことはありませんね。アメリカやヨーロッパならありますが。

ーーというと?

アメリカやヨーロッパのメディアは、ウクライナ戦争やイスラエルのガザ侵攻、それと最近では「トランプ関税」の報道が圧倒的に多くて、ミャンマーの内戦や大地震にはあまり関心を向けません。命の価値が違うのでしょうね。見て見ぬふりをしているのが腹立たしいです。その点、日本ではミャンマーの報道が多いと思います。

 

ーー日本では正月に玄関にしめ飾りを付けて、家の中に鏡餅を用意する。これは新年の神を迎える「依り代」になる。ミャンマーの文化で「依り代」みたいなものはある?

ミャンマーには、「ナッ」と呼ばれる神を信仰する文化があります。これは仏教のように理論が確立された宗教ではなく、もっと素朴な信仰です。神道の依り代に近いのは、ナッ信仰の神像ですね。これは神が宿っていると考えられていて、崇拝の対象となっています。神がいなくなれば、ただの置物になります。

 

 

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