アメリカで最高峰の山は「デナリ」という。以前は、大統領の名前にちなんで「マッキンレー」と呼ばれていたが、2015年にオバマ大統領によって、ネイティブ・アメリカンの言葉に由来する「デナリ」に変更された。しかし、トランプ大統領はこの山の名前を「マッキンレー」に戻すつもりらしい。
国内の地名変更ならまだしも、今年2月、トランプ大統領は突然、メキシコ湾を「アメリカ湾」と呼ぶことにすると発表。これに対してメキシコは、「国際的に認められているのはメキシコ湾だ!」と反発し、国際問題に発展した。
特定の海域の呼び方をめぐる対立は、日本と韓国にもあり、これを「日本海呼称問題」と呼んでいる。
日本海は国際的に確立した唯一の呼び方で、国連をはじめとする多くの国際機関によって認められている。しかし、1992年に韓国が突然、日本海の表記を「東海(East Sea)」と単独に表記するか、日本海と「東海」を併記すべきだと主張し、この問題が始まったと外務省がHP「日本海呼称問題」で説明している。
最近になって言い出したわりには、韓国はこれまで2000年もの間「東海」が使用され続けてきたと、途方もない主張するが、「その根拠を示していません」と日本にバッサリ否定している。韓国側は「日本の植民地支配によって日本海の名称が広がった」と歴史を絡めて正当性を主張しているため、メンツにかけて引き下がれない状態だと思われる。
去年、この問題が飛び火して、日本地質学会や関係者が「大変失望しました」と声明を発表する事態が発生した。
日本のグーグル・マップでは併記されている。
2024年8月、4年ごとに開かれる国際学術大会「地質オリンピック」と呼ばれる万国地質学会議(IGC)が釜山で開かれ、121か国から、約7000人の地質学研究者が参加した。しかし、その場に日本の学者はほとんどおらず、韓国メディアは「ボイコットした」と報じた。
その理由は「日本地質学会」のHPを見れば明らかだ。
まず2015年に、IGC開催地の立候補について、大韓地質学会から日本地質学会に協力要請があり、日本側は共に発展することを願い、韓国側に全力でサポートすることを決めた。そして、2016年に「IGC2024」が韓国で開催されることが決定。
しかし、その後、2021年までの5年間、韓国の組織委員会から日本地質学会に情報提供や相談は一切なく、韓国側は突然計画案を発表した。その内容を見た日本地質学会は驚いた。
[Japan Sea]という単語が[East Sea (Japan Sea)]と,日本側に無断で書き換えられていました.さらに,その他の箇所にも[East Sea]の表記が使われていました
この時点で日本側は、韓国側がIGC2024を政治的な目的で利用しようとしているのではないかと懸念し、日本からの協力や参加は困難だと認識する。
国際水路機関のガイドラインでは、この海域は「Japan Sea」が唯一の名称とされ、それが世界標準になっているため、日本は国際的な学術大会ではこの呼称を使うべきだと訴えた。日本地質学会は、日韓両国の良好な協力体制のもとでIGC2024が開催されるように、韓国側と議論を行い、代わりに「国際海洋コード」を使う案を提案した。日本にとっては妥協的なアイデアで、これなら「日本海」や「東海」という名称を使わないため、韓国のメンツも保たれる。
しかし、期限を過ぎても韓国からの返事はなく、ようやく届いたメールには、日本海の正式表記を「East Sea/Japan Sea」と併記することを最終決定したと書いてあった。
あまりに一方的な対応に、日本地質学会と関係者は「この回答に大変失望しました.1年間の長い交渉を行ってきたにもかかわらず,韓国LOCは頑なに自らの主張をするのみでした」とHPに発表した。
結局、日本地質学会はIGC2024が政治利用されることを警戒し、ほとんどの人が参加を見送った。
朝鮮日報の報道によると、この事態をうけて韓国側では、日韓の政治的葛藤が学界にまで広がった事例とする見方が出たという。
ソース:[단독] “동해 대신 일본해만 표기해달라”…국제 학술대회 보이콧한 日지질학계
([単独]”東海の代わりに日本海だけ表記してほしい”…国際学術大会をボイコットした日本の地質学界)
韓国サイドは、学問的な議論のために「東海・日本海」の併記を提案したことで、一歩引いて日本に譲ったつもりだという。しかし、日本にしてみたら、万国地質学会議の韓国開催が決定したら「手のひら返し」をされたようなものだから、日韓の認識の違いは絶望的に大きい。
「アメリカ湾」は長くてもトランプ政権が退陣すれば、きっと元のメキシコ湾に戻り、問題は解決する。しかし、日本海呼称問題は、韓国が経済的・文化的に「大国」となって自信をつけたことで、今後さらに大きな問題になる予感がする。
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