きょねんの１２月、ベトナム人女性が旅行で日本へやって来た。彼女が絶対に行きたかった場所は鎌倉で、その理由をSNSにこう書いていた。
「Ghé thăm địa điểm nổi tiếng trong bộ anime Slam Dunk tui yêu」
「スラムダンク」が大好きだから、アニメに出てくる有名な場所を訪れたかったという。
「Ghé thăm địa điểm nổi tiếng trong bộ anime Slam Dunk tui yê」
こんな風に、日本のアニメを見てあこがれて、「聖地巡礼」をする外国人は珍しくない。
ベトナム人が母国から持ってきたキーホルダー
少子化が進む最近の日本では、小中学校が閉校になったり、統合されたりすることがよくある。
いっぽう、今の日本は人口は減っているけれど、訪日外国人は増えている。
最近は、日本に来て電化製品やアクセサリーなどを買う「モノ消費」のトレンドは下火になり、最近の外国人観光客は、日本ならではの体験をしたいと思う人が増えてきて、「コト消費」に移行している。
茶道体験や忍者体験はありふれていて新鮮味がないから、今では廃校になった学校で外国人が生徒になって体験するツアーが注目を集めている。言ってみれば、制服のコスプレではなく、「生徒のコスプレ」だ。
ある学校体験ツアーの流れは、だいたいこんな感じだ。
・集合場所からバンに乗って廃校になった学校へ行く。もちろん、お化け屋敷みたいな状態ではなく、建物はしっかり管理されていて、内部はとてもきれい。
・校門で先生役のスタッフが出迎えてくれる。先生は基本的に英語を使うらしい。動画を見ると、サングラスをした先生がニコニコしながらあいさつしていて、アメリカンな雰囲気がただよっている。
・観光客は昇降口で上靴に履き替えてから、中に入って制服に着替える。
いろいろな上着やスカート、ズボン、ネクタイが用意されていて、それを組み合わせて自分だけの「一着」を作ることができる。
・教室で朝のホームルームをする。
・先生役が入ってくると、生徒たちは立ち上がって「礼」をして席に座る。
・授業では、書道、綱引きや玉入れ、日本刀（偽物）を使ったチャンバラなど、日本文化を体験する。
・生徒（外国人）が給食を配る役ともらう役になって、「いただきます」の合図で食べる。メニューはカレー、漬け物、牛乳、バナナだった。
・ほうきや雑巾を使って、教室や廊下を掃除する。
・体験の途中で警報が鳴ると、生徒たちは防災頭巾をかぶって避難訓練をおこなう。
・一日の体験が終わると、教室で先生役から卒業証書をもらう。生徒は両手で受け取って頭を下げる。
ホントかネタかわからないけど、サイトにはこんなことも書いてあった。
「Students who forget their homework should stand in the hallway.」
（宿題を忘れた生徒は廊下に立ってください。）
学校体験ツアーの動画を見て、外国人は以下の感想を書き込んだ。
・訪日観光客向けとはいえ、とても興味深いアクティビティだ。これを考えた人は天才だな。
・日本の学校って、ほかの国と違ってめっちゃ楽しそう😍
・制服がすごくかわいい！😍❤️
・すごく楽しそう。うらやましい 🙁 😥😫😫
・動画を見ているだけで日本に行きたくなる…。すごくカッコいいし、文化も大好き❤️🩹🥺🤗
・わたしなら行かない。焼きたての鰻を食べるためにお金を節約したい。
・あのスポーツユニフォームを見た瞬間、「イカゲーム！」って叫んじゃった。😂
・体育のユニフォームは「イカゲーム」とそっくり。しかも、綱引きまでしてる！
・ユニフォームがイカゲームみたいだって言う人が多いけど、あれはイカゲームのずっと前から日本の学校にあったものだよ。
・さあみんな、日本へ行く時間だ！
「Experience Japanese School Tour」で検索すれば、いろんなサイトや動画が見られる。政府広報オンラインも「Fun Tour Allows Visitors from Overseas to Experience Japanese School Life」でこのツアーを紹介している。
「学校体験ツアー」ではいろんなシーンで写真を撮ることができる。
ある外国人はアニメを見て、朝、高校生がパンをくわえて登校する場面にあこがれて、それを再現して写真を撮って満足していた。
ボクにこの体験ツアーについて教えてくれたのは、日本に１０年以上住んでいるアメリカ人だ。彼の話では、日本のアニメには学校を舞台にしたものが多く、学校の文化は海外と違って独自だから、外国人は興味を持つらしい。
彼も面白そうだと思って参加しようとしたけど、結局やめた。
実際にツアーを申し込む人には、そんなアニメファンのほかにも、日本に住んでいる留学生や外国人の家族がいるし、企業研修でこの体験をすることもある。
もちろん、日本人も参加できるけれど、料金は約４万円もするから、それなら写真を見て昔を懐かしむことを選ぶ人が圧倒的に多そう。
知人のアメリカ人がやめた理由もおカネだった。
でも、アニメであこがれた日本の学校生活を体験できるし、日本の伝統文化だけでなく、日本人の規律や礼儀の正しさ、自己責任などを学ぶこともできるから、それだけの価値はあると判断する外国人もいる。
下は体験ツアーの動画。
「Tourists experience Japanese school life at repurposed high school」
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