飛行機に乗って海外の空港に着くと、20年ほど前ならソニーやパナソニックなど日本の家電メーカーの広告を見て、日本人として誇らしさを感じたもんだ。
それがいまでは、韓国や中国企業の広告に取って代わられ意気消沈。
でも、『鬼滅の刃』の劇場版が全米のランキングでトップになったように、日本のアニメやマンガはいま海外でめちゃくちゃ存在感がある。
「圧倒的じゃないか、我が軍は」と胸を張っていいかもしれない。
でも家電と違ってアニメの場合、日本と外国の文化や価値観が違いがドでかい壁になっている。
日本語から現地の言葉に翻訳するのは何とかなるとしても、内容がその国の子ども向けの価値観に合ってないと放送することができない。
つい最近もロシアで「いぬやしき」、「東京喰種トーキョーグール」、「エルフェンリート」が過激で暴力的なシーンが多いといった理由で配信が禁止された。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
見ていて気持ちが重くなる(でも面白い)アニメを日本で『鬱アニメ』という。
刃物で人体を切って血が噴き出し、登場人物が絶叫するシーンなどがある上の3つはまさに鬱アニメで、お子様には刺激が強すぎるというのは理解できる。
でも、ロシアの裁判所がこのアニメをバンした理由は何なのか?
『この素晴らしい世界に祝福を!』『転生したらスライムだった件』『ゾンビランドサガ』
『ネコぱら』『プリンセスラバー!』
Russian Court bans isekai anime from the country for promoting “Reincarnation Beliefs”!
Anime like Konosuba, Zombie…
この5つのアニメをすべて見たワケではないんだが、人が切り刻まれるような残虐鬱シーンはなかったと思う。
特に『ゾンビランドサガ』なんて、ゾンビとなった少女が佐賀県を救うために『ご当地アイドル』として活動する様子を描いたアニメで、日本なら幼稚園児でもOKだ。
でも、今回ロシアでバンされた理由は『ISEKAI』にある。
この世で事故や何かの理由で亡くなり、気づくと異世界でスライムや英雄として転生していて、その世界で活躍する異世界ものアニメは、最近では「もう食べ飽きました」というぐらいよくある。
ロシアのある裁判所は、こうした異世界アニメによって子どもたちが「Reincarnation(生まれ変わり・転生)」の信仰を信じるようになり、死んだ後には、もっと楽しく充実した生活があると認識してしまう恐れがあると判断したらしい。
こうしたアニメは、子どもたちの自殺を引き起こす危険性があるということだろう。
これに日本のネットの反応は?
・エロでも暴力でもなく、転生が理由で禁止になるというのは珍しいケースだな。
・実際自殺助長してると思うよ
・外国人は現実とアニメを区別できない人多いよね
・ロシア正教というかカトリック系は輪廻転生を否定してるからな
・どちらかというと転生よりも悪魔が悪として描かれていないことの方が問題なんだろう。
・なんというかこういうの規制するのは平和じゃない証拠なんだろうな
若者がドラマや映画の自殺シーンに、悪い影響を受けることは世界中で指摘されている。
それでこのまえも世界保健機関(WHO)が「自殺の描写」を控えるよう、テレビ番組の制作者に呼びかけた。
ロシアで日本の『異世界アニメ』が禁止された理由もきっとこの延長だ。
にしても暴力や性的描写が問題視されるのは分かるとして、まさか転生が危険視される国があるとは。
こういうリアル世界での価値観や文化の違いはきっと、創造力で勝負する日本のアニメ関係者の想像を超えている。
異世界転生ものが流行った背景には、表現規制の厳しくなった死や戦闘シーンでも仮想空間なら描けるというメリットがあると思ったのだが、それを封じられると日本アニメには超逆風。
しかし、わが静岡がうんだ『ちびまる子ちゃん』に死角はない。
2012年にロシアで『ナルト』のお気に入りキャラが死んだことを悲嘆して、14歳の少年が飛び降り自殺した。
イギリス紙デーリーメールの記事(1 November 2012)
Russian teen leaps from apartment block after seeing his favourite Japanese cartoon character die on television
今回の『転スラ』や『このすば』がバンされた理由には、このときの議論が影響を与えているかもしれない。
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> ロシアのある裁判所は、こうした異世界アニメによって子どもたちが「Reincarnation(生まれ変わり・転生)」の信仰を信じるようになり、死んだ後には、もっと楽しく充実した生活があると認識してしまう恐れがあると判断したらしい。
> こうしたアニメは、子どもたちの自殺を引き起こす危険性があるということだろう。
ロシアに限らず、キリスト教圏において「自殺」とは非常に罪深い行いであり、造物主に与えられた命は決して勝手に終えてはならないものなんです。ある意味、事故死に比べても大変罪が深い「神への反逆」とみなされることもある。それくらい社会からの拒否感が強いことなんです。
しかし日本人にはそのような「自殺に対するタブー感覚」がほとんどありません。むしろ、自分の思いを果たせぬことに対して自死を選ぶのは「名誉の死」であるとも。あるいは、太平洋戦争末期の「神風特別攻撃隊」なんかも、お国のために自らが選ぶ「名誉の死」でした。日本では自殺者を責める人はほとんどいません。「無駄死にだ」と非難する人はいるかもしれないが、「負け犬だ」と蔑視するような人は日本人じゃない。
そのような感覚の違いが、この件の大きな原因になっているのだと思います。