静岡県といえば、日本一のお茶どころ。
とくに県中部、島田市のあたりでお茶の生産がさかんだ。
あるアメリカ人(ALT)がそれを実感した。
浜松から島田の学校に赴任した彼が「島田で驚いたこと」として、SNSに「この学校では蛇口からお茶が出てくる!想像できるか?」と写真付きで投稿していた。
知人・友人からも、「オーマイガー!」「アニメみたいだな」といった反応が返ってくる。
そのアメリカ人は浜松に5年間住んでいたから、静岡県のお茶の生産量は日本一ということは知っていた。
でもまさか、ひねるとお茶の出てくる蛇口があるとは思わなかった。
しかも観光地ではなくて学校で。
日本人は地域のよさや特徴をいかす発想をよくする。
高速道路のSAで、その土地ならではの食べ物や限定商品の多さに驚く外国人は多い。
それに非常識というか、“破常識”な発想を加えると「お茶蛇口」がつくられる。
そういえば10年ぐらい前、大阪から来た人が「静岡で初めてお茶割りを飲んだ」と言っていた。大阪には日本中の食べ物や飲み物があるけど、焼酎を緑茶で割ったお茶割りは見たことがなかった。
お茶割りなんて日本で一般的な飲み物だと思っていたけど、それは静岡だけらしい(当時は)。
*最近は「静岡割り」と言うらしい。
くわしいことはここをどうぞ。
静岡にはお茶の出てくる蛇口がある。
さいきん鳥取の空港にも、そんな蛇口が登場して話題を集めている。
さて、ひねると何がほとばしるでしょう?
鳥取の名産品で、“蛇口化”できるものといえば?
答えは「カニのだし」。
Jタウンネットにその記事(2018年12月 6日)がある。
蛇口をひねると…なんと「カニのだし汁」が! 鳥取・米子空港、専門店の味を無料で
鳥取といえば、カニがよくとれる「蟹取(かにとり)県」。
(ということをこの記事で初めて知った)
そんな地域性をいかして、米子空港に「カニ蛇口」を設置した。
これは来年2月までで、毎日100人分のだし汁を用意しているという。
「日本人はもちろん、外国人にもカニのだし汁を味わってほしい」と担当者は意気込んでいる。
外国人は驚くだろう。
でも、一人一杯が原則。
といってもそれが通用しない人もいるし、そのうち、カニのだし汁を水筒に入れている人がSNSで告発されると思う。
で、このニュースにネットの反応は?
・蛇口をひねるとビールがでてくるといいなぁとか思ったことは何度かあったが
この発想はなかった。
・蛇口の周りに蟹の絵を描いてハッキリさせておかないとアレルギー持ちが飲んでしまうかもよ
・蛇口ひねるとタピオカが!
あっ、詰まった!
・だし汁は蛇口に合わない
気温高いと臭くなりそう
中途半端にヌルいと生臭い
・空のペットボトルとか持ってきて10個くらい持ち帰りそうw
・博多は水炊きの汁が出てくるらしいぞ
毎日、ちゃんと分解して殺菌しないとやばいよ
たかが6L 100人でしょ?
すぐになくなるだろ
・いやカニは好きだけどそんなとこで飲みたいか?w
動画を探してみたら、鳥取では2年前にも同じようなことをしている。
このときはだし汁ではなくて、カニの肉が出てきていた。
とっとり動画ちゃんねる の カニニュース「カニ蛇口」(鳥取カニ動画)
さいきん20代のイギリス人女性と会ったときに、カニ蛇口のことを話した。
「アニメの世界みたい。ドラえもんで出てきそう」というのが彼女の感想。
お茶蛇口を知ったアメリカ人(たぶん)と同じことを言う。
そのイギリス人に言わせると、日本人は地域の特性をいかすことが得意だし、アニメみたいな発想もする。
「まえに友人のイギリス人からこんなことを聞いた。彼が四国の空港に着いたら、そこにはオレンジジュースが出てくる蛇口があったんだって。それを聞いてビックリしたわ」
「みかんで有名な県」と言っていたから愛媛県だろう。
こんな話を聞いていたから、今回のカニ蛇口を知っても「日本人らしい名産品のPRね」ぐらいしか思わなかった。
イギリスでそんな蛇口は聞いたことがないという。
ちなみにスペインには、蛇口からワインが出てくるところがある。
キリスト教のカミーノ巡礼(サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路)の途中にそんな場所があって、巡礼者は無料でワインを飲むことができる。
日本人の発想
お茶やカニ汁の出てくる蛇口はおいといて、日本人はむかしから地域の良さをいかした商品づくりをしている。
江戸時代はそれが盛んだった。
歴史の授業で「蔵屋敷」をならったと思う。
蔵屋敷
諸藩・旗本などが、年貢米・国産物を販売するためにおいた倉庫兼取引所。大阪に最も多く、中之島に集中した。
「日本史用語集 (山川出版)」
それまでの時代だったらこんなんムリ。
戦国時代は基本的に地産地消・自給自足だったから、自分の藩でつくったものを大阪や江戸に運んで、他藩に販売するということはなかった。
天下が統一されて争いのなかった江戸時代は超平和。
海上交通もさかんだったから、藩の武士による出張販売もできたわけだ。
日本全国の藩が大阪や江戸などに蔵屋敷をおいて、藩の特産品を売っていた。
ものが売れれば藩はもうかるし、生産者のやる気も出てくる。
当然、日本各地の名産品を見ることができるし、作り方をはじめいろいろな情報を得ることもできる。
そんな時代が数百年もあったのだ。
「地域性をいかすのがうまい」と外国人が言う日本人の発想も、このときの経験が関係していると思う。
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