はじめの一言
「ヨーロッパにはこんなに幸福で暮らし向きのよい農民はいないし、またこれほど温和で贈り物の豊富な土地はどこにもないという印象を抱かざるをえなかった(オールコック 江戸時代)」
「逝きし日の面影 平凡社」
今回の内容
・日本発の「かわいい文化」
・「かわいい」の語源
・世界に広がるkawaii文化
・日本発の「かわいい文化」
以前、日本の文化の特徴は「外国のものに変化を加えて独自のものにすること」をあげた。
その具体例が着物と扇子で、ともに中国にあったものを日本に持ってきてから日本風に変えている。
こう見ると、日本の文化は外来のものを「日本化」させて日本独自のものにしていることがわかる。
そんな日本文化について、日本と韓国にくわしい呉善花はこう書いている。
日本の生け花、お茶、庭、盆栽などについて、そのベースが中国にあったにせよ、(中略)
それらの文化は、日本の土壌のなかで高度につきつめられ、もはやコピーを脱した独自の輝きをもって自立していることを、誰もが認めるしかないからである。(ワサビの日本人と唐辛子の韓国人 呉善花)
でも、言い換えたら日本はゼロから新しく生み出した文化はないのか?
もちろん、そんなことはない。
日本が発明した文化もある。
それが日本発の「kawaii(かわいい)文化」。
たとえば、アメリカのニューズウィーク誌(2016・8・2号)にはこう書いてある。
かわいいものに夢中になるのは人類共通の本能だとしても、それを文化にしたのは日本だけだ。
このkawaii文化の1つが今世界を夢中にしているポケモン。
ポケモンを見つけて捕まえようと、スマートフォン片手に世界中の街をうろつく何百万もの人々。
彼らは日本発のカワイイ文化の新しいファン層―日本のアニメや漫画のファン、ロリータファッションのファンの後を追って、カワイイ文化に心酔した人々だ。
日本政府もこのカワイイ文化に注目して、世界に広げようとしている。
外務省はアニメのキャラクターなどを「カワイイ大使」に任命して、日本のポップカルチャーを海外に広めようとしている。
知人のアメリカ人もドイツ人もトルコ人もタイ人も使う「kawaii」はもはや世界共通語。
英語版ウィキペディアを見ると、カワイイの文化や美的センスは日本のポップカルチャー、それはエンターテインメント・衣類・食べ物・おもちゃ・個人的なアクセサリー・マンネリ(芸術や文学などの表現方法)で特に目立つ特徴だと書いてある。
The cuteness culture, or kawaii aesthetic, has become a prominent aspect of Japanese popular culture, entertainment, clothing, food, toys, personal appearance, and mannerisms.
英語版ウィキペディアで日本のカワイイ文化の例として、こんな工事用具が紹介されている。
静岡県には富士山がデザインされたものがあって、アメリカ人が「これは工事中だから危険だってことでしょ?でもこれを見たら近づきたくなる」と笑っていた。
たしかにこの感覚は海外ではなさそう。
・「かわいい」の語源
この「かわいい」という言葉の語源はなんだろう?
それを遡(さかのぼる)っていくと「顔」に関係があるらしい。
この単語の起源を遡ってゆくと、文語の「かはゆし」にぶつかる。それをさらに遡ると「かほはゆし」という言葉に突き当たる。「顔」と「映ゆし」が結合した言葉である。
(中略)「かほはゆし」をは直訳するならば、顔が以前にも増して明確に引き立ったり、興奮のあまり赤く色づいてしまうことを示すことになる。今日でいう「萌え」という単語は、その意味で先祖返り的なところがあり、興味深い。
(「かわいい論」 四方田犬彦)
ということで「かわいい」の意味をさかのぼると、それを見ると顔が「興奮のあまり赤く色づいてしまう」ということになる。
孫を見るおばあさんの顔を思い浮かべてしまう。
「かわいい」という日本語は、そのまま「kawaii」や「可愛」として世界に広がっている。
海外にはこの「かわいい」にぴったり合う言葉がないらしい。
でも、友人のイギリス人にきいてみたところ、イギリスでは「kawaii」という言葉を知っているのは日本が好きなイギリス人ぐらいで、まだ一般的な言葉にはなっていないという。
余談だけど、このとき、このイギリス人は「ニーシュ」と言っていた。
なんのことかと思ったら、「ニッチ(すき間)」のことだった。
日本人もがよく言う「ニッチ」という言葉はアメリカ英語で、イギリス英語では「ニーシュ」と発音するらしい。
ゆるキャラはカワイイ文化そのもの。
・世界に広がるkawaii文化
海外旅行に行くと、日本の「カワイイ文化」を見ることがある。
台湾ではハローキティの人気はすごい。
空港でハローキティがでかでかと描いてある飛行機を見たことがあった。
EVA AIRでは、「ハローキティジェット」としてこれを「売り」にしている。
EVA AIR
マレーシアのお菓子
中国で見かけた文房具
ところで著作権は?
ポケモンについていえば、海外で人気になったのは今になって始まったものではない。
1998年に公開された「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」がアメリカで大ヒットを記録している。
「ニューヨーカー」という雑誌の「その年にもっとも影響があった人物」に、なぜかポケモンが1位に選ばれている。
おまけ
変な日本らしさにあふれたのタイのショッピングモール。
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