いまと違って、戦前の日本には不経済のほかに不敬罪もあった。
そのころ天皇は神格化されていて、国民がその神性を汚すような言動をすると、「不敬である!」と警察に捕まってしまう。
日本で最後に不敬罪が適用されたのは1946年(昭和21年)。
「朕(昭和天皇)はタラフク食ってるぞ ナンジ人民 飢えて死ね」と書かれたプラカードを掲げた松島松太郎が逮捕された後、日本から不敬罪自体が無くなった。(プラカード事件)
さてタイには王室があって、むかしから日本の皇室との間で交流が行われてきた。
ただ、国王は神の化身と考えられているタイでは、王に対する敬意の示し方が独特で、たぶん戦前の日本人でもビックリするレベル。
この女性は一般人ではなくて、この国王の結婚相手だったはず。
王妃になる女性でも、王に対してはここまで深い敬意を示さないといけない。
そんなタイには世界でもっとも厳しいと言われる不敬罪があって、国王を侮辱したとみなされると最大で禁錮15年が科されるのだ。
なのに、こんなことをするヤツもいる。
AFPの記事(2023年3月8日)
アヒルカレンダーで王室侮辱、不敬罪で男性に禁錮2年 タイ
民主化を求めるデモで、警察の放水を防ぐために参加者がアヒルの浮具を使ったのをきっかけに、タイで黄色いアヒルは抗議のシンボルとなっている。
20代の男性が販売したカレンダーで、国王に似たポーズをしているアヒルがあったことで、この男性は警察に捕まり、有罪判決を受けて刑務所で2年間過ごすことになった。
これに日本のネット民の反応は?
・タイでよくそんなカレンダー出したな。
・北朝鮮なら処刑
・日本にこんな法律あったら、お前ら全員縛り首だなw
・国王のポーズってなんだよ
国王に聞いたら、別にいいよって言いそうなんだが
・アヒルかわいいやん
アヒルカレンダーで2年なら、「朕はタラフク食ってるぞ ナンジ人民 飢えて死ね」なら間違いなく15年コース。
不敬罪があるといっても、日本人がタイで国王や王室をあえて侮辱することはフツウなら考えられないし、そんな話も聞いたことはない。
でも結果的に、それに近いことをしてしまい、その場を凍りつかせた男なら会ったことがある。
それはバンコクのゲストハウスで会った日本人の大学生で、彼は屋台でパッタイ(タイ風焼きそば)を買って財布からお金を出そうとしたら、お札を落としてしまった。
風で流されるお札がスローモーションで見えて(本人談)、「逃すものかっ」と地面に着地したお札を足で踏んづける。
国王の顔かその裏面かは知らんけど、足でお札を押さえ付けた彼を見て、周りのタイ人は目を大きく開いて絶句する。
お金を踏みつける行為はどこの国でも良いことではないけれど、この反応はちょっとおかしい。
そう思った彼は、タイではすべての紙幣に国王の肖像画があることに気づいた。
そして、商品のパッタイを落としそうなほど驚いた屋台のおばちゃんに、「アナタ、それは絶対にしてはダメ!」と怒られた。
この時はタイ国民の「厳重注意」で終わって、その後、彼は日本人旅行者を相手に語り部となる。
アヒルカレンダーを販売することはなくても、これぐらいのことなら誰でもやりかねない。
海外ではお札やコインの取り扱いには十分注意すべき。
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