ドイツ高級ホテルに“愛人”20人! タイ国王に国民の思いは?

 

先月の4連休のときに、渋谷でタイ人による反政府デモがあったらしい。

「プラユット(現政権のトップ)は出ていけー!」、「民主主義万歳!」といったタイ語のシュプレヒコールが響くという光景は、日本では本当にめずらしい。
いまタイでは若い人たちを中心に政府に対する不満が爆発していて、本国だけでなく、海外でもこんな反政府デモをおこなっているのだ。

でもここで取り上げたいのは、政府ではなくてタイの国王。
タイで国王は本当にスペシャルな存在になっていて、国民にとっては最高点に立つ人物で、タイ軍の総帥でもあり仏教の保護者でもある。
くわしいことはここをどうぞ。

タイ国王

 

タイで王や王室は絶対不可侵の聖域にあり、例えばネットで王を侮辱するコメントを書き込むと不敬罪が適用され、下手したら禁錮15年が科される。
だからこれまでタイでは公の場での国王批判なんてなかったのだけど、現在のラーマ10世(68歳)が国王の権限や政治的関与を強めたことが原因となり、国民のあいだで不満がふつふつとたまっていく。

そしてことしの夏、バンコクで不敬罪の廃止や王室予算の削減を求める動きが公然と現れるという、タイでは驚天動地の動きがあった。

産經新聞の社説(2020/10/8)

注目すべきは、王室改革を求める声の高まりだ。若者らは「不敬罪」の廃止や王室の権限縮小を求めている。かつてのタイでは考えられなかったことだ。

反政府デモ拡大/「タイ式」を変えるときだ

ラーマ10世

 

現在の国王が王室財産を自由に使えるよう法律を変えたことで、国民がコロナの感染拡大に苦しむ一方、ラーマ10世は異世界転生レベルのゴージャスな暮らしをしているようだ。

週刊エコノミスト・オンラインの記事(2020年9月24日)

ドイツメディアによると、国王は今年の3月、愛人20人とともに、アルプスを一望できるドイツの高級ホテルでコロナによる自粛生活を送っていたとされる。
渋谷のデモに参加した女性(40代、在日歴20年)は「金の出どころは国民の税金だ。もう我慢できない」と声を荒らげる。

「20人の愛人とドイツで暮らす」ワチラロンコン現国王への不満が爆発寸前 タイ反政府デモがなぜ渋谷で行われていたのか

 

これに警備と使用人をふくめたら総勢何人になるのか?
そういう生活は日本語では、自粛ではなくて豪遊と言う。

これに日本のネットの反応は?

・王室持つのかね
・そら国民も怒るわ
・タイで愛人集団と暮らすなら博愛主義として評価は違ったはず
・20人は多いな
愛人は一人、残りはメイドです・・ ぐらい要領よくやれば良いのに
・タイ王室の保有するであろう430億ドル(約4兆6千億円)は世界で最も裕福な王室であると発表しています。その金額は、イギリスのエリザベス女王の80倍。
・でも王というのは、もともとそういうもんじゃないのか
平等とか言い出すから違和感があるだけで
・日本も江戸時代が続いてたら同じようになったんじゃね?

 

日本とタイにはそれぞれ「欧米列強の植民地にならなかった」、「天皇と国王の“君主”がいる」という共通点があって、特に皇室と王室の交流は日タイ関係を深く強固にしている。
いまのタイ国王は特別としても、日本の天皇は海外の王や皇帝に比べ、むかしから質素と簡素につつまれて生活していたから、江戸時代が続いてもタイと同じようになることは考えられない。

 

王の写真にひざまずいて祈るタイ国民

 

知人のタイ人は国王や王室に敬意を持っていて、国に絶対必要な存在だと思っているけど、いまタイ国民がコロナで本当に苦しい思いをしているのに、自分は夢のような生活をしているのを見ると絶望的な気持ちになると言う。
でもこのタイ人は「20人の愛人」には寛容だ。
タイの歴史上、最高の名君といわれるラーマ五世(明治天皇と同時代の国王)は160人以上の妻がいたから(子供は77人)、20人の愛人については「しょうがないですねー」で済ませられるけど、お金の使い方にはめちゃくちゃ不満がある。
国王がいまのままだと国民の心が離れてしまい、タイ王室がこれからどうなるか分からないという不安も心から離れない。

タイの法律では国王が何をしても、その行為については誰も問い詰めることできないことになっている。
そのせいか現国王は愛人の数やお金の使い方などで、国民とかけ離れた常識をお持ちのようだ。
極めつけは「タイ国王 タンクトップ」で画像検索してほしい。
日本人からすると、信じられないような姿が出てくるから。
天皇がこれをしたら、皇室が吹き飛ぶ。

 

日本でいえば大正時代の1912年、「このままでは国がヤバいっ」と思ったタイの青年将校によるクーデターが進んでいた。
でもこれは事前に計画がバレて、100人以上が逮捕される。
当時の若者の目にタイはこう映っていて、王室の変革は不可避(ひょっとしたら廃止)と思っていた。

彼らは、タイは絶対君主制であるため、国家建設の利用すべき資源が、国王の私的享楽に浪費され、いつまでも発展しない、そのために英仏に領土を蚕食されていると考えていた。

「タイを知るための60章 (明石書店)」

 

こんなことを書くと不敬罪になりそうだけど、どうしてもいまのタイと重なってしまう。
愛人の数を減らせないとしても、せめて国内で豪遊すればいいのに。
パンがなければケーキを食べればいいじゃない」と言ったというマリーアントワネットのような国民音痴にならなければいいのだけど。

 

ちなみに前述のクーデター未遂事件だけど、じつはこれには明治日本も間接的に関係している。
同じアジア人の国である日本は立憲主義のもとに近代化を成功させ、世界的な強国になったのを青年将校が見て、日本を模範にしようと考えた結果、絶対王政のままではタイは発展できないという結論にいたった。

 

 

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4 件のコメント

  • > いまのタイ国王は特別としても、日本の天皇は海外の王や皇帝に比べ、むかしから質素と簡素につつまれて生活していたから、江戸時代が続いてもタイと同じようになることは考えられない。

    タイ国王の愛人たちについて述べ、日本の天皇についても述べるのであれば、

  •  マリー・アントワネットは”パンが無いならケーキを食べれば良いじゃない”などとは言っていないはずですが。歴史に詳しいkokontouzai氏にしては珍しいミスですね。

  • そうなんですね。
    たしかにマリーアントワネットがこう言ってはいないのですが、そう言ったと言われています。
    というのは当時の王室と庶民には理解不能レベルの格差があって、この言葉はその象徴です。
    ですから「マリーアントワネットが言った」だと間違いなのですが、そう伝えられるという意味で「~という」とするなら問題はないでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。