初めて中国を旅行してから、もう20年がすぎた。
この20年間の中国の変化の速さはすさまじい。
いわゆる「ドッグイヤー」ってやつですね。
ドッグ‐イヤー(dog year)
情報産業における変化のスピードが速いことをいう語。犬の成長の1年が、人間の7年分に相当することから。
デジタル大辞泉の解説
特に上海の変化には目を見はるものがある。
行くたびに新しいビルが増えていった。
そしても物の値段も。
建物が高くなるのと比例して、物価も上昇していった。
中国の2004年から2014年までの10年間の経済の伸びは、日本の高度経済成長の時代とほぼ同じだという。
1960年代の日本経済の伸びはたぶんそれまでの人類史上、もっとも急速なもの。
上海はその時代の日本のようだ。
旅行で上海にいたときは、浦江飯店というホテルのドミトリーに泊まっていた。
ここ以外で上海で安く泊まれるホテルなんて、ほとんどなかったと思う。
それでもいつごろか、浦江飯店のドミトリーがなくなった。
そしていつの間にか地下鉄が走っていて、気がついたら上海にスターバックスが登場していた。
上海の中国人ガイドに聞いた話では、スターバックスの開店当初はいろいろとカオスだったらしい。
そのガイドがスタバでコーヒーを飲んでいたら、おじさん数人が入って来る。
手にはマージャンを持って。
そして、イスとテーブルを当然のように使って、スタバでマージャン大会を始めてしまう。
弁当と水筒も持ちこんでいて、それを食べたり飲んだりしながら楽しくマージャンをやっている。
彼らは何も注文しない。
「そんなことしていいんですか?」
ボクが聞くと、ガイドは「上海の夏は暑いんです。スターバックスはエアコンが効いていて気持ち良いんですよ」と、なぜか無法者のおじさんに理解を示す。
しかもスタバの店員は、だれ一人としてマージャンをやめさせようとしなかったらしい。
おっさんは野放しだ。
「その人たちを注意しても、自分の時給が上がるわけじゃないですしね。それに、怒られたら怖いじゃないですか」
スタバの店員にしてみたら、おじさんが店内でマージャンをしていても自分には関係ない。
だから見て見ぬふりをしていたらしい。
結局は、損得の問題だ。
ちなみに、今の中国のスターバックスでも、コーヒー1杯で何時間ねばっても店員に嫌な顔はされないとか。
ガイドの話を聞いていて、こんな疑問が頭に浮かんだ。
「スターバックスは中国で成功するのか?」
「三得利」はサントリーのこと。
中国といえば、世界最大のお茶大国。
お茶文化が浸透している中国でコーヒー文化が流行るのだろうか?
「中国でスタバはうまくいかないだろう」と思っていたら、実はそんなことはなかった。
サンケイビズの記事(2017.9.4)によると、スターバックスは中国で着々と成功を収めている。
中国に参入して20年近くがたつスターバックスは中国での店舗数を約2800に増やしている。7月には中国東部の合弁会社で提携先の持ち分を買い取り、フランチャイズ約1300店の経営権を握る12億ドル規模の契約をまとめた。
この記事を対して、日本のネットユーザーはこんなコメントをしている。
そりゃあ凄い
中国人はお茶飲みなさいよぉぉ。
コーヒー飲まなくて良いってばぁぁ。>7月には中国東部の合弁会社で提携先の持ち分を買い取り
よくできたな、さすがアメリカ
ドイツと日本はこれができない、だから1元も利益を本国に持ち帰れない
そうそう、これこれ。
個人的にこれが気になった。
「中国人はお茶飲みなさいよぉぉ」
中国はお茶文化の国で、歴史も長い。
中国でお茶を飲む習慣(喫茶)がふつうの人々にまで広がったのは、唐(618年 – 907年)の時代という。
喫茶の普及
茶の木の原産地は雲南地方と言われる。紀元前後に漢方薬の手法で茶葉を煎じて飲むようになり、喫茶が広まった。その後、唐代に喫茶が大流行して庶民にまで普及し、茶は課税対象となった。宋代になると、むした茶を乾燥し、粉末にして椀にとり、湯を注いで飲むようになった。
「世界史用語集 (山川出版)」
この喫茶の習慣が日本にも伝わる。
日本で茶を飲む習慣が広がったのは鎌倉時代のときだ。
今のコンビニの飲料コーナーにならんでいるお茶も、もとをたどると唐の喫茶文化に行きつく。
そんなお茶大国の中国で、お茶は飲まれなくなってしまったのだろうか?
もちろん、そんなことはない。
中国全体で見れば、まだまだお茶のほうが圧倒的に飲まれている。
小売りの販売比率を見ると、コーヒーはお茶の約10分の1でしかない(先ほどの記事から)。
でも、「コーヒーがお茶の10分の1」というのは、けっこう多いのかもしれない。
中国でふつうの人たちがお茶を飲むようになったのは唐の時代だ。
今から1000年も前のこと。
それに比べたら、中国で庶民がコーヒーを飲むようになったのは「最近」といっていい。
中国でふつうの人がコーヒーを飲む習慣は、今始まっているところなのだ。
先ほどの記事には、「かつてお茶だけを飲んでいた国にスターバックス効果が広がっている」と書いてあった。
「これからの中国でコーヒー文化は必ず流行る!」ということを見越して、スターバックスは中国で大規模な先行投資をしている。
今度中国に行くときは、「中国に広がるコーヒー文化」というものを見てみたいと思う。
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