いま北京で行われているオリンピックで、ある外国人記者の食べたパスタが「ショボすぎる…」と話題だ。
Food in the media centre plumbing new depths. Vegetarian options already hard to come by; today’s was spaghetti with one (1) cherry tomato. pic.twitter.com/cIvSVxvqX9
— James Griffiths is in Beijing 🇨🇳 (@jgriffiths) February 12, 2022
記者(被害者)によると、メニューにはアーリオ・オーリ(ほぼペペロンチーノ)のスパゲティと書いてあったけど、実際に出てきた料理がコレ。
ポツンとさみしそうなトマト(the sad lone tomato)があるのだが、そもそも伝統的なアーリオ・オーリオにトマトなんてないと記者は不満そう。
ようこそ北京五輪へ。
オリンピックでの食事は街のレストランとは違うけど、これが中国版アーリオ・オーリオかもしれない。
日本の寿司がアメリカではカルフォルニアロールになったように、国が変われば、現地の人の好みや感覚、都合に合わせて料理も変化するのは「世界あるある」のひとつ。
「この南京ってナンデスカ?」と中国人と台湾人が首をひねった『まいどおおきに食堂』の一品
最近、イタリア人を対象にアンケート調査を行ったところ、彼らにとって最も受け入れがたいことは「パスタにケチャップをかけること」だった。
日本でいえば、まさにナポリタンじゃないですか。
これを「容認できる」が7%、「できない」が89%とほぼすべてのイタリア国民にとってナポリタンは「邪道」になるらしい。
共同通信(2022/2/5)
ナポリタン、イタリアでは邪道? 世論調査で市民がダメ出し
他に評判が悪かったのは「ピザにパイナップルを乗せること」って、これ近所のイタリア料理店のメニューじゃん。
こんなイタリア人の感想に日本のネット民の感想は?
・ナボリタンは駄菓子感覚で
・日本の老人が大好きな、麺をこしが消えるまで柔らかくゆでるのも
イタリア人は切れて、捨てるという
・ペペロンチーノが好きって言うと鼻で笑いナポリタンは食わずに批判
めんどくせえんだよあいつら
・日本人からしたら
寿司に味噌付けるみたいなものか
・鉄板に乗ったアツアツのナポリタンのうまさを知らないイタリア人こそ邪道ではないのか?
イタリア人は基本ラフで大ざっぱ。
先に止まっている車に、自分の車をゴツゴツぶつけて動かすことは平気なのに、自国の食文化については妥協を許さない。
まえに日本のアニメ『幼女戦記』で主人公のターニャが右手にナイフ、左手にフォークを持ってパスタを食べる映像を見て、「私は非常に重大な間違いに気づいた」と指摘するイタリア人がいた。
イタリア人ならパスタを切るために、ナイフを使うことはないという。
彼らは食についての妥協は堕落と考えているのか?
めんどくさし。
【欧州の食のマナー】イタリア人、日本アニメに“間違ってる!”
パスタを箸で食べるのはいいとしても、ソバみたいに「ズズズっ」とすすって食べるのはボクもNG。
インドで食べた「ヴィシュヌライス」という謎日本料理
ではここで、日本のナポリタンの歴史を見てよう。
明治時代の日本で西洋料理といえばフランス料理が主流で、トマトソースを使ったスパゲッティも「スパゲッティ・ア・ラ・ナポリテーヌ」とフランス料理として提供されたという。
これも現代イタリア人にはきっと激怒案件。
18~19世紀にアメリカで考案されたトマトケチャップは日本へは明治時代に伝わって、大正時代には、チャップを使って作るいまのナポリタンのようなスパゲティがあったという話もある。
昭和初期の雑誌には、スパゲティの代わりにうどんで作る「スパケテナポリタン」という料理が紹介されているから、このころはいろいろな要素が混じり合ってカオス状態だったのだろう。
でもとにかく、内容はどうあれ「ナポリタン」という名のパスタ料理は戦前からあった。
現在のナポリタンを考案した人物と言われるのが、ホテルニューグランドの総料理長だった入江茂忠だ。
戦後、アメリカ進駐軍の兵士がケチャップだけの具のないスパゲッティを食べているのを見て、「それだけじゃさみしすぎる」と入江が思ったことがナポリタン爆誕につながったという。
ケチャップだけでは味気ないと考え、生トマト、タマネギ、ニンニク、トマトペースト、オリーブオイルでトマトソースを作り、炒めたハム、ピーマン、マッシュルームを加えてソースで和えたスパゲッティを考案したという。
これを「スパゲッティーナポリタン」と呼んだのは、中世のナポリでは、一般人向けにトマトソースをかけたスパゲティが売られていたことにヒントを得たからだとか。
トマトソースと違って、トマトケチャップなら手間とカネがかからないから、町の洋食店がナポリタンをメニューに採用する。
1955年(昭和30年)に国産スパゲッティが販売されるようになり、その販売促進キャンペーンで「ケチャップを混ぜて炒めるパスタ」が紹介されると、その調理の簡単さが受けて徐々に喫茶店や家庭に広まっていったという。
70年代から、この料理が「ナポリタン」として全国に普及していったらしい。
明治時代にはフランス料理で、戦後にアメリカ風パスタ料理をルーツとして、日本人の味覚に合わせて発展したのがナポリタン。
つまり、本場をほぼガン無視して出来上がったイタリア料理だから、現在のイタリア人から見たら「邪道」と思うのもやむなし。
でも、まえに見たユーチューブ動画では、日本のナポリタンや明太子スパゲティを食べたイタリア人が、「意外とおいしい。値段のわりにはすごく良いと思う」と高評価をしていたから、食わず嫌いもあると思われる。
でも、トマト1個の「アーリオ・オーリ」は擁護不可能で、値段によっては外道か非道だ。
ゆるキャン△1期でパスタを折った時も向こうは騒いでいたっけ。
それは初耳です!