日本のアニメはいま世界中で人気で各国にファンがいる。
日本アニメは表現や世界観が独特だから、外国人はよく日本のアニメを「Anime」、それ以外のアニメを「Animation」と呼んで区別する。
そして知人のドイツ人やアメリカ人に聞くと、イタリア人(とフランス人)は他のヨーロッパ人に比べて食に対するこだわりが強い。
だからイタリア人が日本人の発想で描かれるアニメを見ると、「違う!そうじゃない」とツッコまざるを得ないこともあるようだ。
日本のアニメ好きが集まるSNSグループに外国人が参加して、日本語で感想を述べることは今ではそう珍しいことじゃない。
すると日本人だったら気づかないような、細かい文化の違いを指摘する外国人も出てくる。
最近では『幼女戦記』のこのシーンに、「それはダメ!」とツッコむイタリア人がいた。
ドイツ人のターニャが右手にナイフ、左手にフォークを持ってパスタを食べる画像を載せて、「私はこの非常に重大な間違いに気づいた。」とイタリア人が言う。
“まんまグーグル翻訳”の分かりにくい表現もあったから、ネイティブのワイが適切な日本語文章にして紹介しよう。
「私たちイタリア人はフォークでパスタを食べます。
でもパスタを切るために、ナイフを使うことはありません。
フォークで切ることはありますが、それは非常に大きなパスタに限ります。
このシーンのパスタには、私たちイタリア人がよく使うトマト、オレガノ、チーズがあります。
これは『ペンネ』だと思いますが、このような大きなサイズはイタリアにはありません。」
彼が言うには、ナイフでパスタを切る行為は「非常に重大な間違い」。
そんなにひどいマナー違反なのか?
でもこれはドイツ人ではなくて、このアニメを制作した日本人の発想だろう。
会話の内容ではなくて、このナイフとフォークで食事をするシーンは後につながる重要な場面でもないから、日本人の想像で描いたのだと思う。
それに『幼女戦記』は日本のサラリーマンが死んで、幼女の姿でドイツ軍人に生まれ変わるというファンタジーものだから、現実世界の細かいツッコミは無意味。
ターニャは日本で生活していた記憶を持っているから、日本人の感覚でパスタを食べたのかもしれない。
どちらにしても、パスタをナイフで切るのはイタリア人が驚くほどのマナー違反だから、これはヨーロッパ人ではなくて日本人の発想のはず。
ちなみに戦国時代の末期にやって来たヨーロッパ人宣教師でルイス・フロイス(1532年 – 1597年)は、ヨーロッパ人は手づかみで食事をするのに日本人は箸を使うと記録している。
ヨーロッパでは(少なくとも庶民は)、この当時はナイフとフォークを使っていなかった。
ペンネ
画像はNamiwoo
でも一応、イタリア在住の日本人に聞いてみた。
・ドイツ人と思われる一家が隣のテーブルで食事していたのですが、皆さんロングパスタをナイフで切っていて「!?」と思ったことを思い出しました。
・恥ずかしい話ですが、とても不器用なのでフェットチーネやスパゲティを食べるときには、ナイフで切ってから食べます!
・イタリアの人はパスタでナイフは使いません。
それにこのお皿のパスタも変ですね。
ふつうイタリアではペンネ、マカロニの形は一皿につき1種類です。パスタに合わせる具とソース、パターンは決まっていて異なる材料は混ぜません。
・パスタを切るなんて、言語道断です❣️ 絶対しちゃダメなことです。
・そう言われてみれば厚みのあるタリアテッレや、ボリュームのあるラザーニェでもナイフを使って切るイタリア人は、何十年も住んでるロンバルディアでは見てないですね。
もし切る必要があるなら、彼らはフォークで押し切ってます。
・パスタでは日本人が使うスプーンも使いません。フォークだけです。逆に、ピザはナイフとフォークで巻いてたべます
・パスタをナイフで切るのはアメリカのやり方かと思います。昔、そのような店でバイトしていた際に教えられました。
・イタリアの人から見るとありえない光景です。
これはイタリア人のコメント
・みなさんおはようございます。それは本当です!
イタリアではパスタにナイフは使いません。
焼きパスタ(ラザニアなど)だけナイフでカットしますが、スパゲッティではやりません。
・here in Italy we never cut pasta, in particular spaghetti. It happens sometimes with fork only for Baked pasta.
ということで、イタリア人はスパゲッティを食べるときにナイフを手に持たない。
これはマナー違反だけど、ドイツ人の中にはする人もいるらしい。
知人のドイツ人はこう言う。
「We usually dont use a knife for pasta, but some people cut spaghetti with the fork and spoon. Anyway, we dont eat it properly like intended by the italian… I dont feel uncomfortable seeing this, but it seems weird. 😅」
ふつうはパスタでナイフは使わない。でもフォークやスプーンでスパゲッティを切る人もいる。
とにかくドイツ人はイタリア人のように、“適切なやり方”を意識して食べない。
この場面を見て、不愉快には思わないけど違和感はある。
クラウン独和辞典のホームページにある「編集こぼれ話」には、イタリア人以外の人間にとっては、フォークだけで食べるのは落ち着かないとある。
ナイフとフォークでスパゲティを食べていたドイツ人にそのわけを聞いてみたところ、
スパゲティの作法に反することは知っているが、ナイフを使わないとどうもうまく食べられないのだ、という答えだった。
北欧でもナイフとフォークでスパゲティを食べる人がいるというから、ヨーロッパ全体ではそう珍しいことではないかも。
イタリア人にとっては「非常に重大な間違い」である、スパゲッティでナイフを切る行為をドイツ人がすることはある。
だから『幼女戦記』のシーンについては、日本人かドイツ人の発想かは分からない。
でも、このワンシーンを見て外国人がすぐに違和感を感じ、そのスクショをネットのアニメグループにあげて、日本語でミスを”告発”して説明するというのが21世紀という時代だ。
これがイタリア人のパスタの食べ方
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若い頃にイタリアへ出張する機会があって、その時に向こうの人達がどう食べるか見てたのですが、確かにこのビデオの通りでした。男も女も老いも若いも皆、右手で持ったフォークを垂直に近い角度でお皿に立てて、パスタを巻き付けて器用に口の中へ運んでいました。(左手で皿を持ち上げることはないですが。)
思うに、アメリカ人やドイツ人には、パスタが「麺類」であるという感覚があまりないのでは? 麺類そのものを食する機会もあまり無いだろうし、ましてやフォークにくるくる巻き付けるなんて、そんな「大道芸」みたいな器用な食べ方は、彼らの文化伝統には含まれていないのだろうと思います。
世界的には、パスタの食べ方にはもう1種類あって、それは、左手でスプーンを持って、フォークの先端をスプーンへ押し付けながらくるくるパスタを巻き付けて食べる、というやり方です。これ、今はどうか知りませんが、日本人(の特に女の子たち)が昔はよくやっていました。なので自分もイタリアで女の子に「この食べ方はどう?」って聞いてみたら、「別に間違いじゃないけど、それ小さい子供がよくやる食べ方!」って馬鹿にされちゃいました。なので、それから大人の食べ方を練習して、今ではこのビデオと同じように食べられます。
ましてや、パスタを、蕎麦・うどんのように音を立てて啜っては絶対だめですよ。イタリア人女性の前でそれをやると、下手するとビンタされます。(何か侮蔑表現の一種なのかな?)
外国人がすしをフォークで食っててもなんも思わないけどなぁ