日本人から「紳士の国」と言われたら、イギリス人はどう思う?

日本ではイギリスについて「紳士の国」、自国については「変態紳士の国」というイメージがある(しらんけど)。では、イギリス人はそう言われたら、どう感じるのか?
これから、そのことについて書いていこう。

目次

「紳士」のもともとの意味

前回の記事で「紳士」という言葉の由来について書いた。まずは、それをサラリとおさらいをしておこう。

今の日本でジェントルマン(紳士)は、「教養があって礼儀正しい男性」といったポジティブな意味で使われている。
しかし、紳士という言葉はもともと中国語で、帯をしめた役人を指していた。ただの役人ではなく、中国の支配層にいるような高級官僚だ。
明治時代、日本人が英語の「gentleman」を「紳士」と訳したことから、現在の意味で使われるようになった。

くわしいことは下の記事をご覧あれ。

「紳士」の意味や由来とは?もとは中国の支配者のこと。

 

唐の時代の役人。彼らが「紳士」だったのだろう。

「紳士」のイメージ

ネットで日本人が思い浮かべる「紳士」のイメージについて調べると、以下の特徴があった。

・高い教養のある男性。
・周囲にやさしく、さりげない気くばりができる。
・清潔感のある服装をしている。
・上品で礼儀正しい。
・感情的にならず、いつも冷静沈着。

そんな理想を体現している(と思われている)のが「英国紳士」だ。
日本では、イギリスを「紳士の国」みたいに偶像化することが昔からあった。明治時代には、イギリスを理想的な国と見ていた日本人も多く、福沢諭吉は「日本を東洋の英国にしたい」と言っている。
1902年に日英同盟を結んだときは、日本中が大喜びしたという。

日本にいるイギリス人に聞くと、日本人から「イギリスは紳士の国ですね」と言われた経験のある人は多い。
しかし、彼ら自身はどう思うのか?
イギリス人はそう言われて「イグザトリー」と納得するのか嬉しく思うか、それとも困ったり、「いいかげんウザイわっ」と迷惑に思ったりするのか。
知人のイギリス人にそのへんのことを聞いてみた。

日本人に「紳士の国」と言われたらどう思う?

数年前に日本で英語を教えていて、今は首都ロンドンで住んでいるイギリス人女性にメールで聞いていた。ちなみに彼女は30代で、同じく30代の夫と暮らしている。
「日本人から、『イギリスは紳士の国』って言われたらどう思うよ?」と質問し、そのイギリス人からきた返事がこちら。

「About your gentlemanly question,when I hear that kind of thing it just makes me giggle.I guess it’s a kind of old fashioned image, but it is a positive one so I am happy about that.」

「あなたの“紳士的な質問”についてですが、そういう話を聞くとつい笑ってしまいます。ちょっと古風なイメージなのかもしれませんが、良い意味なので、私なら嬉しくなりますね」ということで、彼女はポジティブに受け止めている。

彼女は母親にも聞いてみた。母は日本を旅行したことはあるが、住んだことはない。

「My mum says it just means good manners.She has known people who she would call a typical English gentleman.」

「母に言わせると、それは良い態度やふるまいを意味するだけです。彼女は典型的な英国紳士と呼べるような人々を知っています」ということで、お母さんは娘ほど喜んでいないらしい。

そしてこれが彼女の夫の意見で、彼も日本に住んでいたことがある。

「On the other hand, he thinks there are a lot of rude people around and would say English gentleman is just a stereotype.」

「一方、彼は周囲に失礼な人がたくさんいると考えていて、英国紳士は単なるステレオタイプ(型にはまった見方)に過ぎないと言うだろう」ということで、彼は“英国紳士”という言葉をすこしネガティブに考えているようだ。

彼は日本に住んでいたとき、サッカー観戦をしたことがある。
試合が終わった後、観客が列を作って静かにスタジアムから出ていく様子を見て、「イギリス人なら、こんな秩序正しく行動することは不可能だ! きっとそこら辺から怒鳴り声が聞こえてくる」と言って、日本人のマナーの良さに感心していた。

ちなみに彼はラーメンが大好き。ロンドンではラーメン1杯で2000円以上もするらしく、日本で食べまくっていた。彼がスープを飲み干し、丼を逆さにしてテーブルに置いて「これが日本のマナーだろ?」と言ったときは驚いた。
これはあまり紳士的とは言えない。

 

結論としては当たり前のことだが、イギリス人が日本人に「イギリスは紳士の国ですね」と言われた場合、どう感じるかは人によってう。褒め言葉として受けとる人もいれば、否定的に考える人もいる。そもそも「紳士」という言葉に対するイメージもイギリス人の中でいろいろありそうだ。
だから、「そう言われたらきっとイギリス人は喜ぶ」なんて固定観念は持たないほうがいい。

 

現在のロンドン市長は「サディク・カーン」というパキスタン系のイスラム教徒だ。
彼こそまさに英国紳士。
「英国紳士=白人男性」という見方は時代遅れだけではなく、差別的だ。

 

おまけ

あるイギリス人が日本から、「イギリスは紳士の国だ。紳士のスポーツと呼ばれるゴルフはイングランドで生まれた」と言われ、彼はイラッとした。
ゴルフ発祥の地はスコットランドのセント・アンドルーズで、イングランド人を嫌うスコットランド人は多い。だから、この日本人の発言は二重の意味で間違いだった。
スコットランド人に「イングランドは紳士の国ですね」と言った場合、彼はどんな反応をするのだろう?

 

追記

2020年、新型コロナウイルスの感染が世界規模で広がっていたとき、日本に住んでいたイギリス人がSNSで「外出自粛を求められているのに、静岡から東京へ花見に出かけてコロナに感染して、戻ってから周りの人に感染させた大馬鹿者がいる!」と書き込んだ。
すると、友人のイギリス人がこんなコメントを書き込んだ。

「So very, very stupid. In the UK these incidents are a hundredfold, it’s infuriating.」

とんでもなく馬鹿なヤツだな。でも、イギリスではそういうことが日本の100倍も起きていて、本当に腹が立つ。

全国民を平均的にみれば、日本人のほうが紳士的のようだ。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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