建国から現在まで|韓国社会における日本文化の受け入れ方の推移

現在、日本では韓国文化が一時的なブームに終わらず、K-POPや韓国グルメなどはすっかり日常に溶け込んでいる。
しかし、その逆はどうだろう。

韓国には「日本の植民地支配」という歴史的なトラウマがある。
そのため日本文化の受け入れは複雑で、時代や政治の変化によって大きく移り変わってきた。
これから、韓国における日本文化の受容の歴史をみていこう。

 

目次

建国後の「倭色」排除

1945年8月15日、日本が降伏を受け入れると発表し戦争が終わった。
それによって朝鮮半島は日本の統治から解放され、1948年8月15日に大韓民国が建国された。
日付が同じなのは政治的な狙いがあったはずだ。

韓国では「日本的なもの」を「倭色(ウェセク)」と呼ぶことがある。
この言葉には「悪質・低質」といった否定的なニュアンスがあり、知人の中国人にこの漢字を見せると「これはひどい。とても侮辱的な言葉です」と眉をひそめた。

建国後、韓国社会は、日本語や日本風の文化などの「倭色」を駆逐することに全集中した。
当時、人びとの生活には日本の影響があまりにも濃く残っていて、独立国家としてのアイデンティティを確立するために必要な対応だったのだろう。

韓日国交正常化と「ねじれ」現象

その後、状況が少し変わったのが1965年の韓日国交正常化だ。
これをきっかけに、韓国社会は次第に「日本」を受け入れ始める。しかし、それは選択的で、日本の「製品」と「文化」が明確に分けられていた。

例えば、性能の良い日本のラジオを買って使うことは問題ないが、そのラジオから日本の歌を流すことは禁止されていた。
日本の高い技術力を利用し、生活を便利にすることがいいが、精神的に日本の影響を受けることは拒否するという姿勢から、このような「ねじれ現象」が生まれたのだ。

1970年代の「日本隠し」と国籍ロンダリング

しかし、1970年代以降になると、日本の文化は少しずつ韓国社会に広がっていく。
当時、対馬から肉眼で見えるほど近い釜山(プサン)では、市民が日本のテレビ放送を直接視聴することができたし、首都ソウルでは、韓国のテレビ局が日本の番組を模倣したコンテンツを作るようになった。

これは「パクリ」だから良いこととは言えないが、当時の韓国のテレビ局には番組制作のノウハウに不足していたから、これは仕方なかったかもしれない。

しかし、視聴者に「日本」を感じさせないように、日本的な要素は徹底的に排除されていた。
日本ではその現象を「日本隠し」と呼ぶことがあり、ある韓国メディアは「国籍ロンダリング」と表現した。
ポジティブに言うなら「韓国風のリメイク」だ。

例えば、ボクシング漫画の『明日のジョー』は、韓国版のタイトルが『チャンピオン・ハリケーン』に変更された。
舞台は東京ではなく、ソウルの貧民街に変えられ、登場人物の名前も「矢吹丈」から「ジョ」、「力石徹」も「ヤ・センマ」となり、韓国人という設定に書き換えられたのだ。

『タイガーマスク』では、主人公の伊達直人が子どもを助けようとして車にはねられ、亡くなって物語は終わる。
一方、韓国版の終わり方はこれ以上なく韓国的だ。
タイガーマスクは「兵役は韓国国民の神聖な義務だ」と言い残し、リングから去って物語が終わる。
その後、タイガーマスクが除隊して復帰したという設定で、また連載がはじまったらしい。

こうして、一般の韓国民に気づかれないように、日本の作品は社会に浸透していった。

タレントのユンソナさんが『ドラえもん』を、ずっと韓国のアニメだと思っていたというエピソードは有名だ。

「日本文化開放」と世代による記憶の違い

韓国社会において、日本文化が転機を迎えたのは、1997年に韓国政府が打ち出した文化開放政策だ。
これによって、日本のコンテンツがかなり解禁されていった。

この政府の決定は、韓国人の世代間で日本の作品に対する記憶の違いを生み出している。
1970〜80年代に子ども時代を過ごした世代は、“国籍ロンダリング”された『宇宙少年アトム』を思い浮かべ、日本文化の開放以降に育った世代は、正式に輸入された日本の原作と同じ『鉄腕アトム』を連想するという。

韓国社会では日本文化の見方や扱いが時代によって違うため、同じ作品であってもいつ出会ったかによって認識が異なるのだ。

 

※ここまでは中央日報の以下の記事(2017.07.29)を参考にした。

【BOOK】倭色禁止時代、アトムはどのようにして韓国に飛んできたか

「倭色」というのはきっと侮辱語だが、韓国ではわりと手軽に使われている。

現在も残る「倭色」への抵抗意識

21世紀に入って、日本のコンテンツが当たり前のように消費される今でも、倭色(日本文化)に対する抵抗意識は根強く残っている。

2009年に公開された映画『ラスト・ブラッド』では、主演の韓国人女優が「セーラー服に日本刀を持つ」という日本人を連想させる設定だったため、ネット民に激しく叩かれた。

 

つい最近も、朝鮮日報にこんな記事(2026/05/29)があった。

着物から韓服に着替え「Kファンタジー」として生まれ変わった日本のベストセラー

日本で児童小説『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』が、韓国で実写映画になった。
その際、こんなアレンジが加えられたという。

・昭和時代を連想させる日本的な駄菓子屋の建物は、韓国の伝統家屋である韓屋風の建物に変えられた。

・登場人物の衣装も日本の着物の代わりに、韓国の伝統衣装である韓服に変更された。

きっと原作のままでは「倭色」が強すぎて視聴者に敬遠されるため、「Kファンタジー」としてリメイクしたのだろう。
制作チームとしては、『ラスト・ブラッド』と同じ失敗を繰り返すことだけは避けたいはずだ。

韓国人が日本を旅行して、着物を着て観光して写真を撮ることは珍しくない。
個人として日本文化を楽しむことはいいけれど、公共の場で日本文化を強調することはためらわれるのだ。
日韓の文化交流が進んだ現在でも、「倭色」への警戒心は残っているし、見えない壁も存在している。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【韓国人が見た日本】ITは遅れていても、安全では先進的

韓国・日本に影響を与えた中国文化:ビビンバにみる五行思想

日本通の韓国人が思う、日本人と韓国人の良い/悪いところ

印象最悪でも、「昼は反日、夜は親日」という韓国人の日本観

韓国人の話 コーヒー文化・日本語と韓国語・スピード感の違い

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメントする

目次