歴史否定と人種差別|韓国とアメリカ社会の最大級のタブー

目次

国ごとに存在する「聖域」と「地雷」

世界のどの国にも、伝統や歴史によって形成された大切な価値観がある。
その社会にとってはそれが「聖域」であり、それを否定すると地雷となって大爆発を起こす。

韓国社会にとって最大級の聖域は「正しい歴史」で、アメリカ社会にとっては「人権意識」だ。
そのため、それらに反する言動をすると、国民の怒りを買い大炎上する。
今回は、世界中で親しまれているコーヒーチェーンに「しくじり先生」になってもらい、その失敗から学んでいこう。

韓国のタブー:民主化の歴史と「タンクデー」炎上

最近、韓国のスターバックスが「タンクデー」というキャンペーンをおこなったところ、国中から非難を浴びて大炎上した。

なぜなら、キャンペーンがおこなわれた5月18日は、1980年に軍事政権が軍隊を出動させ、民主化を求める市民を武力弾圧した「光州事件」の追悼日だったから。
このとき、数百人の市民が死亡したといわれている。

現代の韓国において、市民が血を流して勝ち取った民主化の歴史は、決して茶化してはならない絶対的なタブーだ。
よりによって、その日に「タンク(戦車)」という言葉を使ったキャンペーンをしたから、
韓国のスターバックスは「公共の敵」となり、袋叩きにされた。

個人的に、不買運動が起こることは想像の範囲内にあったが、「一斉休業」する事態にまで発展するとは思わなかった。

この騒動を受け、韓国スタバは従業員に対して歴史教育(history lesson)をすることになったと、英BBCが報じている(2026/06/15)。

South Korea’s Starbucks to shut for staff history lesson after backlash

韓国国内のすべての店を午後3時に閉店し、トップの新世界グループの会長から従業員まで、歴史認識を高めるためのレッスンを受けたという。
もちろん、韓国スタバにとってこんな出来事は初めてのことだ。

韓国ではこうした動きを「感受性教育」と呼ぶらしい。
人権、差別、歴史、そしてマイノリティへの配慮などについて学び、無意識にあった偏見に気づき、社会意識を養うことで不適切な言動を防ぐための教育だ。

簡単に言えば炎上対策で、日本の企業でいう「コンプライアンス研修」に当たるだろう。
これを「感受性を高める」と呼ぶところに、国民感情を絶対視する韓国社会の特徴が見えてくる。

アメリカのタブー:根深い人種差別問題

今回の韓国の動きを見ると、アメリカの事例を思い出さずにはいられない。

2018年にフィラデルフィアにあるスタバの店舗で、2人の黒人男性が知人と待ち合わせをしていた。
2人は何も注文していなかったため、店長は不法侵入とみなして警察に通報し、彼らは警官に手錠をかけられ、警察署へ連行されてしまった。

これが「明白な人種差別」と見なされてスターバックスは大炎上し、全米で激しい抗議運動に発展した。

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事態を重く見たスターバックスは、全米にある数千の店舗を休業し、すべての従業員に対して人種的偏見をなくし、人権意識を高めるための教育をおこなった。

米韓の共通点と相違点

韓国スタバは、このときの米スタバの対応を参考にしたのだろう。
どちらも意識を変えるための教育だが、炎上鎮火をねらったパフォーマンス的な要素もあったと思われる。
日本社会でいうなら、どっちも「禊」の儀式をおこなったといえる。

ただ、米韓では異なる点がある。
個人的にネットの反応を見たかぎりでは、韓国での「歴史教育」に対しては、韓国内から批判の声が多く上がっている。

保守派や反リベラル的な立場と思われる人たちが、ネット上でこんな意見を書き込んでいる。

「不祥事を起こした企業が、全店舗を閉めてまで従業員に左派的な思想教育(感受性教育)を強制しているのは、まるで独裁国家のようだ」

韓国では政府がスタバのボイコットを呼びかけたが、アメリカ政府はそんなことをしなかった。
国がそんな流れを作ったため、韓国の保守派には批判的な人もいる。
ある論客は「憲法が保障する個人の自由と責任の原則に違反する全体主義的な発想だ」と訴えた。

アメリカのスタバが一斉研修をしたときは、こんな声を聞かなかった。

多文化共生のカギ|聖域とタブーの理解

世界のどの国でもタブーがあり、歴史や人権は尊重されている。
しかし、韓国では歴史意識、アメリカ社会では人権感覚がとくに重要視されていることを、スターバックスが身をもっておしえてくれた。

韓国人やアメリカ人と話をするときは、これらは最大級のタブーであることは理解しておいたほうがいい。
その地雷は、個人的な関係が終了するほどの爆発力を秘めている。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 韓国の古代,三韓時代には、”ソド(蘇塗)”という聖域がありました。
    どんなに凶悪な罪を犯した者でも、蘇塗に入れば彼を罰することはできませんでした。
    現在の韓国にも蘇塗があり、それが特定の「FRAME(フレーム)制作」です。例えば、「日本軍慰安婦は日帝によって性奴隷生活を強いられた人々だ」という枠組みを作れば、誰も反論を提起できません。歴史学者が調べてみると、日本軍の慰安婦は性奴隷生活を強要されたのではなく、意図的であれ偶然であれ売春させられた人々だったと発表すれば、彼は公共の敵となってしまいます。今、キム・ビョンホンさんはそのような罪で刑務所に収監されています。そして現在、慰安婦罰則法が施行され、慰安婦について事実を語れば直ちに罰せられるようになりました。スターバックス事件の題材となった光州での事件も同様です。光州のその事件は民主化運動ではありますが、市民が警察署をはじめ武器庫を襲撃し、武装して軍と対峙した事件であり、その中には北朝鮮のスパイが含まれていると主張する人もいるほど、純粋な民主化運動として確定するのは難しい問題があります。しかし、その事件は現在の法律で「民主化運動」と規定されており、それに反論して刑務所に入れられた人もいます。
    日本統治時代の3.1運動も同様です。韓国では3.1運動を非暴力・無抵抗の純粋な独立運動と定義していますが、多くの資料には朝鮮人の一部が武装して官庁を攻撃し、役人を殺したという証拠が残っています。3.1運動についてそのような反論を提起することも法の罰を受ける可能性が高いです。
    このように、今でも韓国には古代の蘇塗が残っています。

  • 現代の韓国の「聖域」は政治が大きく左右しています。
    時の政権によって都合のいい状況が作りやすいです。民主主義の国なら、国民が政権をしっかり監視する必要があります。それを嫌って「聖域」を設定するのでしょう。

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