7月4日はアメリカの独立記念日。
1776年7月4日に、アメリカのフィラデルフィアでイギリスからの独立を高らかに宣言した。
その記念の日が今の独立記念日になっている。
ちなみに、そのころの日本では、1772年に田沼意次が老中になったり、1782年には天明の大飢饉がおきたりしていた。アメリカ合衆国と老中・田沼意次は同じころに誕生した、と理解してOK。
さて、日本の世界史の授業では、アメリカの独立宣言についてこう習う。
独立宣言《アメリカ》
第2回大陸会議で採択された宣言。トマス=ジェファソンが中心になって起草し、フランクリンやジョン=ロックが補筆、修正した。ロックの自然法思想に基づき基本的人権革命権について述べたうえで、ジョージ3世の暴政を弾劾し、最後に独立を宣言して、のちのフランス人権宣言にも大きな影響を与えた。
「世界史用語集(山川出版)」
ここに出てくる「フランクリン」という人物はアメリカの国民的英雄で、100札ドルには彼の肖像が描かれている。
まえに、ノースカロライナ州出身のアメリカ人と話をしていて、
「アメリカ人は独立記念日に何をするんだ?」
と聞いてみたところ、
「バーベキューだよ。肉を食って食って、さらに食べて、ビールやワインを飲んで倒れる。それが独立記念日だ」
という答えが返ってきた。
それでは、ふだんの週末と変わらないのでは?
ちなみに、ノースカロライナ州はバーベキューがとても有名で、彼は「バーベキュー・ステイト(バーベキュー州)」と呼んでいた。
しかし、アメリカは広く、さまざまな人種や宗教の人たちがいる。
だから、「独立記念日はバーベキューだ!」と盛り上がる人もいれば、そんなノリにはついていけないアメリカ人もいる。
たとえば、アフリカから連れて来られた奴隷を先祖にもつ黒人はどうか?
彼らは同じアメリカ国民でも、白人とは違った視点で独立記念日を見るだろう。
SNSを見ていたら、知人のインド系アメリカ人が「アメリカの黒人にとって7月4日とは?」という内容の動画をシェアしていた。
動画に出てくるアフリカ系アメリカ人は、
「私はアメリカで生まれたけれど、自分をアメリカ人だと思ったことがない」
「私たちに国はない」
「7月4日を祝おうとは思わない」
「黒人として、自分は7月4日に誕生した市民だと思っていない」
と、自分はアメリカ人であることは認めていても、7月4日とは距離を置いている。
「アメリカの黒人にとって独立記念日(7月4日)とは?」
これについては、いろいろな答えがあるけど、こう考えている黒人が多そうだ。
「7月4日はアメリカの白人がイギリスから自由になった日で、自分たちには関係ない」
これはネイティブ・アメリカンにも当てはまる。
友人に黒人のアメリカ人がいる。
彼女の父親が亡くなって、父側の家族と話をしていると、「ある発見をした」とメールで教えてくれた。
I learned something interesting today!
I was talking with my father’s family at the funeral.
And I found out about my ancestor 〇〇. He was a moor. And he came to America from Spain AS A PASSENGER! This means my father’s family weren’t slaves when they came to the USA.
And that my DNA is about 20% European!
今日、興味深いことを知った!
お葬式で父の遺族と話していたら、私の先祖の〇〇〇のことがわかった。
彼はムーア人だった。彼はスペインから乗客としてアメリカに来た! つまり、父の一族は奴隷としてアメリカに来たのではなかったのだ。
そして、私のDNAの約20%はヨーロッパ人だった!
*ムーア人(Moors)とは、北西アフリカのイスラム教教徒のこと。
こういう話は日本人の間では出てこない。
先ほど、アメリカ独立宣言について、世界史用語集の説明を紹介したのだけど、その用語集には、こんなことが書いてある
「なお、奴隷制を批判した部分は独立宣言から削除された」
当時のアメリカ社会には奴隷制度を当然とする風潮があった。
100ドル札に描かれたフランクリンが、アメリカ国民がイギリスから自由になったことを宣言したとき、彼は黒人の奴隷を所有していたのだ。
同じアメリカ人でも、白人と黒人とではまったく違う背景をもっているから、同じように祝うことはむずかしい。
7月4日の独立記念日には、死ぬほどバーベキューを食べて祝う国民がいれば、「自分には関係がない」と背を向ける国民もいて、それぞれの価値観が尊重されている。
こうした多様性がアメリカらしいと思う。
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