前回、韓国を旅行中のインド人ユーチューバーが観光地で、「危険なので、安全なインド側から撮影してください」という面白い誤訳を見つけたという話を紹介した。
しかし、笑っていられるのはそこまでだ。
彼は動画の中で「人種差別をされた」と主張している。
そのインド人が釜山の飲食店で、食事する様子を撮影しながら、テーブルに並べられた食べ物を説明していたら、韓国の男性に「動画を撮るな」と怒られた。
混雑状況にもよるけど、韓国の観光地にあるレストランで動画撮影を禁止するところは珍しいと思う。
そう言えばすこし前に、「SNSに写真を投稿をしないでください」との注意書きがあった韓国の飲食店が実は違法な営業をしていたというニュースを見た。
ほかにも、バスの中で韓国人の乗客は大きな声で話をしていたのに、インド人の彼が動画を撮影しながら話をしていると、ある乗客が「話すな」と言ってきたという。
彼のそんな「差別体験」が反響を呼んだ。
朝鮮日報の記事(2024/09/27)
動画を見たインド人ネットユーザーたちは「韓国人たちは人種差別がひどい」「私も韓国で人種差別を経験した」などのコメントを寄せている。
「なんでIndia?」 釜山を観光したインド人ユーチューバーが案内板の誤訳にツッコミ
もちろん、このユーチューバーに同意する人だけではない。
彼が怒られた理由として、勝手に撮影したから、大きな声で話していたから、といったマナー違反を指摘する人もいた。
友人の韓国人はソウルの外資系企業に勤めていて、海外へ出張に行くこともあり、外国人とやり取りをする機会が多い。
前にそんな彼と話をしていると、最近、彼の身近で人種差別があったと言う。
同じ会社のベトナム人が出張でソウルへやって来て、ナイトクラブかバーへ行ったら、外国人であることを理由に入店を断られた。「それはおかしい。これは人種差別だ!」と抗議をしても無駄で、仕方がないから彼らは別の店へ行ったという。
その話をベトナム人から聞かされた彼は、「本当に恥ずかしい。申し訳ない」と思わず謝罪した。
「情けないことですけど、韓国ではこんな話をたまに聞くんですよ。」
と彼は言っていたけれど、ボクも同じ話を日本にいる外国人から聞いて、謝りはしないけど、同じように恥ずかしく、申し訳ないと思ったことが何度かある。
差別がまったく存在しないという国は、きっとこの世に存在しない国、アニメの世界にある国だ。どこの国にもそんな闇はある。
韓国の場合、2019年に国家人権委員会が国内にいる外国人を対象に調査を行ったところ、68.4%が「人種差別を受けた経験がある」と答えている。その理由は、「韓国語ができないため(62.33%)」、「韓国人ではないため(59.7%)」、「人種によるもの(44.7%)」といったものが多い。
日本と韓国は人種構成がそっくりで、どっちも国民の95%以上が同じ人間で占められている。だから、多民族国家のアメリカやオーストラリアなどとは違い、白人・アジア人・黒人などのさまざまな人が街を歩いていることは普通はない。
日韓では全国のどこへ行っても、ほとんどの人が黒い目と髪、同じ肌の色をしている。
言葉も日本語や韓国語が通じないところはない。だから、インドのように地方へ旅行に行ったら、現地のホテルスタッフと言葉が通じず、英語で話をしないといけないという事態は起こらない。
そんな背景から、友人と話をしていて、日韓にある人種差別もタイプがよく似ていると感じた。
日本でも知り合いの外国人から、言葉ができないため、日本人ではないため、といった理由で入店を断られたり、不動産会社にアパートを紹介してもらえなかったという話を聞いたのは一度や二度ではない。
しかし、日本と韓国で、ニューズウィーク誌の記事が伝えるような、特定の人種をねらった暴力行為が発生したという話は聞いたことない。(2021/03/15)
止まらないアジア人狩り
アジア人というだけで、街を歩いていると、「黄色い猿は祖国へ帰れ」と怒鳴られるのはまだマシだ。このころ、アジア人のお年寄りが黒人の若者に突き飛ばされ、頭を打って死亡する事件が発生した。
シアトルでは日本人女性が石を入れた靴下で顔面を殴られ、歯は折れて鼻を骨折し、脳しんとうを起こす大けがを負った。医者からはもう前歯で食べることも、笑うこともできないと言われたという。
アジア系のお年寄りが1人で歩くのは危険なため、自治団が同行してくれるサービスもあるという。
パリでは2021年に日本人女性が道を歩いていると、男からいきなり顔に塩酸をかけられた。彼女はとっさに手で顔を守ったため、手に火傷を負ったものの、顔に塩酸がかかることはなかった。最悪の場合、失明していたところだ。
ここまで酷いケースではないが、イギリス人やドイツ人から話を聞くと、街中でアジア人が脅されたり、殴られたりする事件が起きている。
欧米でそんな人種差別事件が発生していることは、韓国人の友人も知っていた。
2人で話をしていて、日本と韓国にも人種差別行為があるとしても、それは間接的で陰湿的で、街を歩いている外国人を脅すとか、とつぜん危害を加えるといった暴力的な行為をニュースで聞いたことがない、という点で認識が一致した。
日韓には排他性はあるけれど、欧米にあるような強い憎悪が見られない。
もちろん、これは主観的な見方でしかない。
でも、街中で石を入れた靴下で外国人に殴りかかるとか、塩酸を浴びせる事件が日本で発生するとは思えない。
> 日韓には排他性はあるけれど、欧米にあるような強い憎悪が見られない。
> 街中で石を入れた靴下で外国人に殴りかかるとか、塩酸を浴びせる事件が日本で発生するとは思えない。
欧米における有色人種に対する差別と、日本における外国人差別が、そのように異なる様相を見せている理由は、差別の「原因」にあるような気がします。
この問題を何人かの白人に聞いたことがあるのですが、彼ら・彼女らの話を聞いていると、どうも有色人種(特に黒人)に対して「恐怖感」を抱いているように感じられます。かつて自分達が、奴隷制度の下に黒人に対して酷いことをしたという「負い目」が、彼らの心の奥底にあるからかもしれません。
でも日本人は、有色人種も含めて外国人に「恐怖感」を抱くことは、あまりないですよね。日本人が彼らに対して懸念することは、「家賃を払ってもらえないのでは?」「夜中に何か騒ぎを起こすのでは?」「ゴミをきちんと分別しないのでは?」といった「生活上のトラブル」のことが大部分だと思います。(少なくとも現在は)
ただしそれも、特定の人種・民族が集団で治安を乱すようなことを繰り返していると、いくら寛容な日本人でも、そのうち集団ヒステリーを起こして残酷な物理的制裁に走る恐れもあるかもしれません。