友人のアメリカ人女性、エマ(仮名)は静岡の小中学校で英語を教えたあと、帰国して今はジョージア州に住んでいる。
彼女は日本でさまざまなカルチャーショックを感じた。
たとえば夏のある日、校舎内を歩いているとこんな「人災」に見舞われたことがある。
顔見知りの小学生の男の子と出会うと、彼が「さっき、これを捕まえた!」とカブトムシを、見せやがった。
世界的にみると日本人はかなりの「虫好き」で、大抵の外国人はそのテンションの高さについていけない。
日本に住んでいた別のアメリカ人はカブトムシについて、「ゴキブリの一種じゃないか。それをカゴに入れて飼うなんて信じられないね」と吐き捨てるように言った。
エマがカブトムシを見て思わず叫び声をあげると、小学生は面白がってさらにカブトムシを近づけてきたから、もう泣きそうになったという。
さて最近、そんな彼女と話をしたので、これからその模様を書いていく。

「アメリカン・ドリーム」はもはや死語?
ーーアメリカって王や貴族とかの身分制度を否定して、自由と平等を理念に建国されたんだよな?
だから、どんな立場の人でも努力しだいで成功できる機会が与えられていて、それは「アメリカン・ドリーム」と呼ばれている。
エマ:う〜ん、その認識はもう何周か遅れてるよ。
「日本には今でもニンジャやサムライがいる!」ってイメージよりはちょっと現実的なくらい。
ーー10年以上前に、東京のゲストハウスでそんなケニア人と会ったよ。
忍者や侍と会うことを期待していたのに、もういなくなったと知って彼はガッカリしていた。
エマ:「アメリカン・ドリーム」はそこまでじゃないけど、でも、もう死語に近い気がする。
最近のアメリカ社会では「階級」が固定化しつつあって、その壁を越えるのはどんどん難しくなっているから。
ーーそうみたいだよな。
SNSを見ていたら、アメリカに引っ越したある外国人がその見えない壁を感じて、「アメリカ人は違う階級の人と会うのを怖がっている」と言っていた。
エマもそう思う?
エマ:庶民がとんでもないセレブの集まりに出席するのならともかく、一般的に違う階級の人たちと会うなら、「恐れ」は言い過ぎで「違和感」くらいでしょ。
あなたがわたしと話すときに感じるのと同じ感覚、「高嶺の花」みたいなものだよ。
ーーそう感じたことは一瞬もないけどな。質の悪いイタコ芸を披露すんな。
カントリークラブからわかる「階級」のリアル
ーーで、その「違和感」ってどんなものがあるんだ?
エマ:たとえば最近、私の義母がカントリークラブに入会していて、そこで私のためにパーティーをしてくれることになったの。
それで、友人を招待するように言われたのだけれど……。ってその前に、カントリークラブって知ってる?
ーー聞いたことはある。入会費を払ってメンバーになると、カントリークラブのゴルフやテニス、レストランなんかを利用できるんだろ?
エマ:年会費も払わないといけないし、最初に資格審査もある。だから、アメリカでカントリークラブに入っているのは、中流階級以上の層が多いのよ。
ーー俺には縁のない世界だな。
エマ:うん、門前払いだよね。
ーー「ふざけるな」って言おうとしたけど、そのとおりだった。
今、AIにカントリークラブの相場について聞いたら、入会金の平均は500万円以上、年会費は170万円以上が珍しくないらしい。
これなら門前払いされる前に、そもそも申請しようと思わないな。
エマ:私の仲良しの友だちは『労働階級』の人で、彼女もカントリークラブとは縁がない。だから声をかけたら、彼女はちょっと戸惑って「後で返事をする」って言ったの。
ーーその友だちは知らないけど、気持ちはわかる気がする。場違い感がハンパないんだろうな。
エマ:そのカントリークラブは名門じゃないから、そんなに敷居は高くないよ。結局、彼女は来てくれることになったし。
ーー日本でも「場所を言ったら引かれた」ってことは起こると思うけど、そんな経験はめったにない。
エマ:良くも悪くも平均的っていうのが日本の特徴よね。アメリカ社会みたいに、ちょっとしたことで見えない壁にぶつかることがない。
「シャンパン社会主義者」という偽善
ーーその「階級」ってやつと関係があるんだけど、最近、知り合いのアメリカ人から「シャンパン社会主義者」って英語を聞いたんだよ。
エマ:え、「Champagne Socialist」ってなに?
ーーあれ、これってアメリカで一般的な言葉じゃないの?
「自分は優雅な生活をしているのに、貧富の差を嘆いたり、社会的な不平等を批判したりするセレブ」みたいな偽善的な人間のことを英語でこう呼ぶと聞いたんだけど。

エマ:シャンパン社会主義者、ね。その言葉は初めて聞いたけど、そんな人は日本にも、どこの国にもいるよね。
ーーもちろん。
ある有名人が国民には「平等に貧しくなろう」と訴えたのに、自分は東京の高級タワーマンションに住んで外車を乗り回しているのがバレて、ネットで袋叩きにされた。
こういう人は政治的にリベラル思考の人に多い。
エマ:社会の格差を無くそうとするから、当然そうなるよね。
アメリカだと、民主党の支持者でお金持ちがそんなことを言いそう。高級シャンパンを傾けながら労働者の味方を自称しても、説得力なんてないよね。
ーー「上から目線」で社会正義を語るのは偽善的だけど、本人は正義に酔っているから分からないんじゃないか。
エマもカントリークラブの中で、「人間は平等なはず! この社会に、選ばれた人だけしか入れないクラブがあるのはおかしい」とか言うなよ。
エマ:わかった。気をつけるよ、忠告ありがとう。
あなたはカントリークラブに申請できるくらい、頑張って成功してね。
ーーお、おう。

コメント