モースが見た「日本人の虫好き」
明治時代に来日して、東京帝国大学(現在の東京大学)の教授となったアメリカの学者モース。
彼は日本での経験を『日本その日その日』にまとめた。
そこには日米のさまざまな文化の違いが記されていて、その中のひとつに、日本人の「虫好き」について書かれている。
日本人が昆虫に対して強い好奇心を持っていたことが、このアメリカ人には意外だったのだ。
日本の路上では、行商人が背中に商品を背負って売り歩いていて、なかにはバッタなどの虫を売っている人もいた。
日本のバッタはアメリカのバッタよりも、はるかに大きな音を立てて鳴くという。
モースが注目したのは、子供たちが虫をペットのように飼うことだった。
『日本その日その日』にはこんな一文がある。
子供はこれ等の昆虫を行商人から買い求め砂糖を餌にやり、我々がカナリヤを飼うように飼うのである。
アメリカの子供は虫にエサをあげて、成長を楽しむようなことはしなかったらしい。
神奈川新聞の記事(2021年8月22日)を読むと、日本人の虫好きは今でも変わっていないことがわかる。
育てた昆虫でバトル 横須賀、「世界最強」カブトムシも
小中学生が自分で育てたカブトムシやクワガタムシを対戦させる「昆虫王者決定戦」が横須賀市の公園で開かれた。
相手を裏返しにするか、「土俵」の外に押し出せば勝ちとなる。
今回は、カブトムシ部門では「世界最強のカブトムシ」と言われるコーカサスオオカブト、クワガタムシ部門ではスマトラオオヒラタクワガタがそれぞれ優勝した。
スマホゲームが当たり前の子供たちにもカブトムシやクワガタは魅力的で、その人気は衰えていない。
アメリカとの感覚の違いと現在の日本
それにして、外国人(とくに欧米人)から見ると、日本人の虫好きは「異常レベル」のようだ。
出張で東京へ行った知人のアメリカ人が、(たしか)秋葉原でこんなありえないモノを発見した。

自動販売機でネクターやポテトチップスと一緒に、カブトムシやクワガタが並んでいるのを見て「マジか!!!」と興奮してSNSに投稿。
友人たちの反応を見ると、「そこでカブトムシを買って日本人はどうするのか?」と目的や使用方法が理解できないらしい。
この自販機を見つけたアメリカ人に話を聞くと、地域によって違いはあるだろうけど、彼が生まれ育ったニューヨーク州ではカブトムシを売っている店なんて見たことないと言う。
自販機なんて想像の斜め上すぎる。
外でカブトムシやクワガタを見ても、それを捕まえて自宅で飼うという発想も聞いたことがない。
日本でも変わった生き物が好きな人がいるように、アメリカでも虫を好きな人はいるけど、普通の人なら無料でも「ノーサンキュー」と答えるらしい。
そんな感覚の人間が世界有数の先進国の首都で、カブトムシの自販機を見たから絶句したのだ。
後日このアメリカ人から、カブトムシがネットで売買されているから、興味があったら見てみろと「Beetle Collection」を紹介された。
でもこれは昆虫のはく製のようで、日本の子供が好きな「昆虫バトル」のカブトムシやクワガタとは違う気がする。
日本だと「beetle(ビートル)=カブトムシ」というイメージが強いけど、英語ではクワガタもコガネムシもカナブンもbeetleになる。
だからこのリンクを開くと、いろんな種類のビートルがいる。
日本人に比べればアメリカ人は虫に興味がないから、これらをひとまとめにして考えているのだろう。
昆虫への嫌悪と文化の違い
そういえば中学校で英語を教えていたアメリカ人が、教室の後ろの棚でカブトムシをプラスチックケースに入れて、エサを与えてペットのようにしていたのを見て、「信じられない!」と驚いたという。
「あれはゴキブリと変わらないのに」と言うコイツの感覚からすると、教室でGを飼っているような衝撃か。としたら身の毛がよだつのもわかる。
ニューヨーク在住のライター黒田基子さんがウェブメディアの「ハルクメク」で、日本の子供が夏によくする昆虫採集は「アメリカでは大変特殊な趣味と思われています」と書いている。
昆虫採集以前に虫に対する関心がまったくないのです。日本人だって誰もが虫好きではありませんが、虫に対する無関心のレベルが違います。
だからアメリカで、虫採り網や虫カゴを店で見かけないらしい。
あるときデッキチェアに止まったトンボを見つけたアメリカ人が、「オーマイガーッ」と叫んで、思い切り叩き殺したのを見て「仰天したことがあります」と言う。
トンボはドラゴンフライ(dragonfly)でハエはフライ(fly)だから、アメリカ人は「トンボもハエも区別していないのではないかとさえ思われます」という印象を持ったとか。
なぜ虫を嫌うのか?
専門家が答えてくれるネットのQ&Aサイトに、「欧米人はなぜカブトムシが嫌いなのか?」という質問があったので、答えを見てみた。
「詳しくは分かりませんが…」と困惑気味の先生は、知り合いドイツ人が黒い虫を嫌いで「カブトムシもクワガタも飼育しているのをかなり不思議そうに見て理解出来ないと言っていました」と答えるだけで、なぜ嫌いなのかの理由についてはスルー。
同じものを見て「気持ち悪い…」「カッコイイ!」と思うのはその人の感覚によるから、味覚と同じで「~のように見える/感じる」を理論的に説明するのはムリだろう。
カブトムシがゴキブリ並みの高速移動をしたらオソロシイかも。
ただ「昆虫でバトル」についてはアメリカなら、生き物を虐待しているということで主催者がぶっ叩かれそう。
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コメント
コメント一覧 (4件)
頭の悪い虫は殺しても良い?
Beetle Queen Conquers Tokyo(邦題 : カブト東京)のジェシカ・オーレック氏も言っていましたが、日本人が特に昆虫好きの国と言っていましたね。アジアは闘虫の文化があるので育てても、愛でたり、ホタル見に行ったりはしていないですしね。
なるほど。
やっぱりそうなんですか。
> 頭の悪い虫は殺しても良い?
その通りです。だって、聖書にもクルアーンにも「生き物」として出てこないもの。
宇宙人のことを「BEM」と言うのも、Bug’s Eye Monsters の略ですしね。