【日本の昆虫食】外国人は“いなごの佃煮”を見てどう思う?

 

15年ぐらい前にカンボジアを旅行していたときのこと。

首都プノンペンから北部のラタナキリという街へ長距離タクシーで移動していて、途中で食堂に立ち寄り、乗客と運転手がそこで昼食をとった。

ボクもチャーハンをたのんでイスに座って待っていると、1人の青年が青いかごに黒い物体を山盛り載せて店に入ってくる。
近くで見たらなんとクモ。

 

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一緒にいたカンボジア人に聞いたら、クモの揚げ物はパリッとした食感と味がビールにとても合うらしい。
日本でなら「柿ピー」的なスナックか?

でも、もともとカンボジア人にクモを食べる習慣はなく、これは200万人が亡くなったという1970年代のクメール・ルージュによる圧政が原因といわれる。
くわしいことはこの記事を。

「飢え」が変えた食文化。日本と世界(ドイツ・カンボジア)の例

 

話は変わってきょねんタイ人、リトアニア人、トルコ人、ロシア人と一緒に岐阜県の馬籠宿にプチ旅行にでかけた。

馬籠宿は江戸時代の宿場町でいまも当時の様子をそのまま伝えていて、とても日本らしい雰囲気を味わうことができる。
こういうのは外国人の大好物。

 

 

 

「ここの建物は保存状態がすごくいい。日本人が丁寧にものを扱うことがよく分かる」なんて感心しながら散策していたリトアニア人が、「マジかっ」と驚がくしたのがこの一品。

 

 

何だか分からなかったロシア人が近づいてよく見ると、「うっ」と顔を背けてその場を離れる。

いやいや、いなごの佃煮だぞ。
これならボクも子どものころに食べた記憶があるし、いままで何度も見たこともある。

食味は一般的な佃煮と同じく甘辛い。わずかに、緑茶の茶葉のような爽やかな風味もある。歯ごたえは小エビに似る。

いなごの佃煮

 

いなごの佃煮は日本の代表的な昆虫食だけど、ボクとしては店主の反応が気になったほど、リトアニア人とロシア人のヨーロッパ人には超絶NGらしい。

「日本人が昆虫を食べるなんて、まったく知らなかった!」と目を丸くする2人を見ていると、カンボジアでクモのフライを見たときの自分と重なった。

でもタイ人は違って、「タイにも昆虫食の食文化があるから私は平気です。食べてみたいです」と笑顔で言う。

もちろんヨーロッパでも昆虫を食べる人はいるし、タイ人でも無理!という人はいるから、すべての人がこう思うわけではない。

 

日本ではわりとポピュラーな昆虫食、いなごの佃煮。
それを食するというのは外国人にとってどれほどショッキングなのか、この動画に寄せられた感想から理解してみよう。

 

 

「I would try a locust!」(オレもいなごを食べてみるよ!)という反応は例外で、ほとんどは「やめて!」「絶対に食べない」「恐ろしい」「あなたちは勇気がある」と否定的なものばかり。

・No, stop it!
・I would NEVER eat any insects in my life! You’re much more courageous than me.
・Oh . I think I can’t eat this. I’m really afraid with all this little insects.
・You two are so courageous.
・”Is that a spider?” OMG I’m dying XD

中にはいなごがクモに見えた人もいる。

一言に外国人といっても、「日本人とそれ以外の人」という二分法は大ざっぱ過ぎる。
日本人でもいなごの佃煮を見て、「ゲテモノ!あり得ない」と言う人がいた。(杉本、おまえのことだよ)
上の拒否反応はおもに欧米人のもので、昆虫食が食文化になっている東南アジアの人たちに聞いたら反対の感想を言う人も多いはずだ。

 

 

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5 件のコメント

  • >日本人でもいなごの佃煮を見て、「ゲテモノ!あり得ない」と言う人がいた。

    欧米人が昆虫食に拒否感が強いことは知っていますが、現在の日本人に比べるとどうですかねぇ。確かにイナゴの佃煮とか蜂の子(ヘボ)入りご飯とか、少し前まで割合にポピュラーだった伝統食材も今では拒否感を覚える人が次第に増えて、あまり欧米人と変わらなくなってしまっているような?

    それより、米国においても昆虫食が広まったことが一時期あったのをご存知でしょうか?
    米国では、19世紀から20世紀初頭にかけて、「ロッキー・トビバッタ」という種類のイナゴがたびたび大発生して農作物に大きな被害を与えていたのです。その頃の話。
    米国政府はこのイナゴ災害対策にやっきになった(当時は効果的な殺虫剤も生産する技術がなかった)のですが、その一つとして、国民に「イナゴは料理すれば十分に食べられる」ことを広めて、実際に食する人が増えたのです。この対策、総じて、イナゴの数を減らすためには有効だったとはとても思えない(さすがにそこまで食わなかっただろう)のですが、この考え方によって、人々はイナゴの恐怖にパニック行動を起こすことはなくなり、政府の対策に国民が冷静に協力するようになったのだそうです。で、結局、20世紀になって殺虫剤その他徹底した近代的対策が功を奏したらしく、このイナゴは絶滅してしまいました。(出典:ハワード・エヴァンズ「虫の惑星」)

  • 一部でしょうけど若者の間で昆虫食の人気は高まっています。
    今回のせんべいは販売すぐに売り切れで、ネットでは「昆虫食の通販ショップTAKEO」が有名で昆虫食の自動販売機もあります。
    これらは主に若者がターゲットです。

  • ボクはイナゴや蜂の子はいまだに食べたことがありません(80年生まれ、今年40歳の世代です)。
    なので多少の抵抗はありますが、こーゆうのは文化的なものなので、感覚として食べれる(食べ慣れてる)かどうかであって、もちろん食べれないもの(害のあるもの)ではないですよね。それでいうと、殻があってうじゃうじゃした脚のついてるエビが食えるんやから虫も食えるやろって思うんですよね。将来のことを思うと、昆虫食も必要になってくるんやろなぁって思うし、チャレンジすべきやと思っています。

    少し話はそれますが、他に注目しているのがビヨンドミートのような代替肉。アメリカのスーパーで、大豆製品のコーナーではなくて初めて精肉売り場に置かれたフェイクミート。
    競合他社のインポッシブルフーズは既に全米のバーガーキングで導入されてるし、ビヨンドもKFCやマクドナルドで試験販売、今後はスタバでも扱われるそうです。
    残念ながら日本にはまだ未上陸で、今のところ国内で試せる物で評判がよかった大塚食品のZEROミートを食べてみましたが全然ダメ。昭和のレトルトのミートボール以下でした。

    欧米に昆虫食が広まるかどうかはわかりませんが、環境への影響や将来の食料難を思うと、こういったものは考えていかないといけませんね。

  • 日本にもフェイクミートがあったのは初耳です。
    でも、需要は少なそうですね。
    昆虫食のほうが伸びるかも。

  • んー、フェイクミートですか。日本にも70年代くらいからありましたよ。確か、中国製の「模倣食材」とか、「精進料理」のために作られたんじゃなかったかな。一時期、回転寿司の偽物イクラとかフェイク魚種とか問題になりましたよね。
    70年代あたりのフェイクミートは、大豆タンパクで作られた肉とか、魚肉ソーセージとか、そんなのが中心だったような気がします。米国の大手食品会社(ケロッグだったか?)が製造販売を始めたことで、一時は世界的に広まってました。そのような風潮を皮肉った「ソイレント・グリーン」というチャールトン・ヘストン主演のハリウッド映画も作られたと思いましたが。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。