数年前の初夏のころに、アメリカ人の男性2人を後部座席に乗せて車を走らせていたときのこと。
英会話の練習だ!と思って彼らの会話を聞いていると、
「しかし今日はあっついよなー」
「だな。見ろよ、気温は100度に近いぞ」
と聞こえてきた。
気温が100度?
それは水が沸騰する温度で、人間が死に絶えるレベルじゃないか。
なのにボクらは生きている。
ということは、ボクには「ハンドレッド・デグリー」と聞こえたけど、しょせんその耳は英検2級、何かの聞き間違えか?
と思って2人に確認したら、100度で間違いないと言う。
ただしそれは摂氏ではなくて華氏(かし)で。
アメリカやイギリス、ジャマイカなどでは気温の単位として華氏を使っていて、ボクはそれを摂氏で理解したからこうなった。
*イギリスは摂氏の使用も進んでいる。
華氏を使うところ
水が氷になる摂氏0度が華氏なら32度になる。
そして摂氏で温度が1℃上昇するところ、華氏なら1.8度上昇する。
だから水が沸騰する温度も摂氏100℃に対して、華氏だと212度とまったく違う。
ということで華氏を摂氏で表すには、32を引いたあとに1.8で割らないといけない。でもそれだと面倒くさいから、ー32のあとに2で割れば大体の数値はわかる。
華氏100度を摂氏にすると34度(1.8で割ると38度)になるから、上のアメリカ人のことばも摂氏に換算すれば違和感はない。
逆に日本の感覚に慣れていないアメリカ人だと、「今日は34度」という言葉を聞いて一瞬謎に包まれることもある。
5月16日の東京の気温
これを華氏と間違えると、-7度という前代未聞の異常気象
アメリカ人が使う単位を考案したのは、ゴールデンバウム朝の軍人アーダルベルト・フォン・ファーレンハイトではなくて、グダニスク(ポーランドの都市)で生まれたガブリエル・ファーレンハイトという物理学者。
水銀温度計をつくり出したのもこの人だ。
中国語でファーレンハイトに華倫海(華倫海特)の字を当てたことから、この温度は漢字圏で「華氏」と表記されるようになった。
「摂氏」はスウェーデンの天文学者セルシウス(Celsius)を表す中国語「摂爾修斯」に由来する。
だから摂氏はCelsiusから「℃」、華氏はFahrenheitから「℉」になる。
ちなみにファーレンハイトには、1701年の夏に両親が毒キノコきのこを食べて死ぬというかなり珍しい悲劇がある。
これがきっかけで彼はオランダのアムステルダムに移り、そこで物理学に興味を持つようになったことが歴史的偉業につながった。
ファーレンハイト
アメリカでは華氏のほかに、距離はマイル、体積ならガロンの単位を使っている。
だから日本の生活に慣れるまで、感覚がつかめなくて困ると言うアメリカ人が何人もいた。
あるアメリカ人を助手席に乗せて京都へ向かっていたとき、浜松からの距離をきかれて「250キロメートルぐらい」と答えたところ、返事が返ってこない。
「なにこの静けさ?」と思って隣を見たら、彼女はスマホでキロをマイルに換算していた。そうしないと距離がつかめないらしい
ガソリンの値段もリッター125円と言うと、1ガロンは約3.8リットルだから彼女にはよくわからない。
このときは「もう面倒」とスマホは出さず。
日本の場合はこのほかに「年号」という、全ての外国人にとって高いハードルもある。
「平成3年」「昭和60年」と聞いて、すぐに「ああ、あのころか」と実感がつかめる外国人はなかなかいない。
16世紀末に天下統一を果たした豊臣秀吉は、それまでバラバラだった距離や面積を統一した。(太閤検地)
でも、世界規模で同じことをする大人物が人類の歴史に現れることはなかった。
アメリカはこれからも、これまでの単位を使い続けるようだから、「郷に入っては郷に従え」で面倒くさくても仕方ない。
ガロンとリットルの併記
こちらの記事もいかがですか?
> 16世紀末に天下統一を果たした豊臣秀吉は、それまでバラバラだった距離や面積を統一した。(太閤検地)
> でも、世界規模で同じことをする大人物が人類の歴史に現れることはなかった。
それは間違いですね。ちゃんと現れていますよ。我々が今使っている「メートル法」がそうです。
国際商取引の利便性の確保、及び自然科学の基礎を確立する目的で、元々のメートル法のシステムを考案したのはフランス革命政府であり、その後に長い年月をかけて世界中へ普及させてきたのは「国際度量衡委員会(本部フランス国内)」に所属する人々です。なお「メートル法」は昔の呼び方であり、現在の正式名称は「国際単位系(またはSI単位系、仏語で Système International d’unités、英語で International System of Units)」と言います。
今では世界の殆どの国でメートル法(国際単位系)が採用されてきています。英国もEUに所属して以来、確実に普及が進んできました。現在、メートル法の導入を頑なに拒んでいるのは、世界中で米国だけという状況です。(なんと愚かな人々!)
温度も、国際単位系のケルビン温度K°に準じているのは摂氏温度℃の方です。というのも、-273℃(これ以上の低温は理論的にあり得ない、いわゆる『絶対零度』)が0K°であり、水の氷点0℃は273K°、水の沸点100℃は373K°、つまり「1℃の温度目盛巾=1K°の温度目盛巾」と決められているのです。
体積の方は悲惨です。日本(メートル法)だったら水1リットル(=1kg)は10cm角の立方体の体積であり、つまり基準物質の体積と重さがしっかり結びついています。でも英国では未だに「1英国ガロン(ワイン用ガロン)」という単位が日常的に使われています。米国はもっとひどくて、英国ガロンとはまた違う「1米国液体ガロン」「1米国穀物ガロン」なんていう状況で、合計3つもの異なる「ガロン」を、英米では未だに使っているのです。(めんどくせぇ!)
言語の方は、英語で将来も世界標準語は決まりでしょう。度量衡くらいは他国に合わせりゃいいのに。
未だに大英帝国の夢を追っている分離主義者たちが、世界の統一を阻むのです。
世界を統一し、度量衡も同じにした人物がいますか?
ああなるほど、ブログ主さんは豊臣秀吉の「天下統一」の方を、私よりも重要視していたのですね。
それは誤解していて失礼しました。
度量衡については上記コメントにも書いた通り、個人ではないですけど、「国際単位系」のシステムがほぼ世界を統一できています。今なおそれに真向逆らっているのは米国だけという状況(ただしさすがに「科学」の分野では米国もSIです、でないとあまりに不合理で科学の論理が組み立てられない)。この度量衡システムの影響はたとえばネジの規格にも及んでいて、米国以外の国の「ミリねじ(=ISOねじ)」と、米国の「インチねじ」の2種類のネジが世界にはあります。近年、米国の自動車産業が米国以外にうまく進出できず、世界レベルでは凋落が著しいのは、米国の自動車産業がメートル法(国際単位系)を採用していないことも、その一因なのだと思います。(米国に参入する側は米国規格に合わせて生産している。)
その一方で航空宇宙産業の分野は圧倒的に米国が強く、そのため今でも世界中で航空分野はヤード・ポンド(及びガロン)法を使っています。なので国際線飛行機のアナウンスは「只今の高度は3,300フィート(≒高度1万m)です」となってる。
国際単位系による世界の度量衡の統一は、英語を標準語とする世界の言語統一よりもはるかに進んでいます。
未来はSTのように皆が英語を使うようになるのかな? (それもつまらん気がするけど。)
天下統一したあと度量衡を統一した豊臣秀吉のような人物で、世界的な人はいなかったなというこです。
もしいたら、マイルやキロメートルといった単位の違いはなかったでしょう。