日本の技がユネスコ無形遺産に!外国人が驚く神宮の式年遷宮

 

寿司や刺身なんかの料理もそうなんだが、日本文化には素材が本来もっている良さを生かす、引き出すという特徴がある。

そんな日本人の感覚に触れたデンマーク海軍の軍人エドゥアルド・スエンソンは木造建築を見てこう思った。

日本人の美的センスは、どんな種類の塗料、ラッカーよりも白木の自然な色を好むのである。新しい家は〔障子〕紙と白さを競い合い、古い家は樫の木のような艶を帯びて、こちらの美しさも捨てがたい

「江戸幕末滞在記 (講談社学術文庫) E・スエンソン著、長島要一訳」

エドゥアルド・スエンソン

1867年にはフランス公使レオン・ロッシュと徳川慶喜に謁見した。

 

そんな日本の職人技が世界に認められ、このたびユネスコ無形文化遺産への登録が決定。
正式には「伝統建築工匠(こうしょう)の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」というのだけど、こまけぇはいいとして、これで日本の無形文化遺産は二十二件目だ。めでたい。
古来から伝わる匠(たくみ)のスキルを後世に伝えるためにも、これはとってもすばらしい知らせだ。
今回は木造の建造物を受け継ぐための伝統技術が対象となった。

これまで登録された日本の無形文化財には、歌舞伎や雅楽、チャッキラコなどがあるから、くわしいことは文化庁のホームページを見てくれ。

産経新聞の社説をみると、日本産のボクでもよく分からんニッチなところも文化遺産になってる。(2020/12/21)

檜皮葺のための「檜皮採取」や、漆塗りに必要な漆を採る「日本産漆生産・精製」といった、資材を確保する裏方の技も含まれていることだ。

無形文化遺産/日本の匠の技を千年先へ

 

でも、いまの悩みは後継者不足。
世界が賞賛する日本の技を伝承する人材が足りないというから、瓦や畳をはじめ木造建築物を取り入れてもっとお金をつかいましょう。
「ほめて伸ばす」は小学生の話で、職人の技にはそれなりの対価が必要だ。

 

 

いままでアメリカ人、タイ人、トルコ人、インド人、イギリス人、台湾人などなど、いろんな外国人を日本人のソウルスポット、伊勢神宮へ連れて行ったことがある。

スエンソンの言う、白木の自然な色を好む日本人の美的センスが表れているのがまさにここ。

伊勢神宮について話をすると国籍や宗教を問わず、「式年遷宮」という日本の発想に驚く外国人が多い。
伊勢神宮では20年ごとにすべての建物や鳥居、橋などを新しくつくり、神さまは新宮へうつってもらうことになっている。
この式年遷宮が1300年にわたって繰り返し行われてきたことで、伊勢神宮にある建物はそっくりそのまま現在に受け継ぐことができた。

この行事の目的には、神さまを新しくキレイな社殿にお迎えするという宗教的なもののほか、20年に1度すべての建を解体してまたつくることで、宮大工の技術を継承させることがあったといわれる。

匠の技を認めたユネスコ委員会は「熟練の職人が、伝統的な技能の知識を継承する後継者として、弟子たちを育成してきた」と称賛した。
式年遷宮はその生きる具体例だ。

ボクが聞いた範囲では、海外で定期的にすべての建物をつくり直すという発想や行事はない。
昭和の日本を訪れたドイツの世界的建築家、ブルーノ・タウトは式年遷宮をこう表現した。

「この事実一つの中にも、何という崇高な、まったく独自な考え方が現れていることであろう!」

 

知人のモロッコ人は、伊勢神宮にある建物には釘が一切使われていないことを「最も印象的」と言う。
ただ着色も彫刻もない、単純で純粋な建物を「退屈」と言う外国人もいたから、みんなみんな激賞するわけでもない。
そういえばそのモロッコ人は、世界最古の木造建築物(法隆寺)が地震の多い日本にあると知って驚いていた。

こういう外国人の反応からも、「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」は本当にユネスコ無形文化遺産にふさわしいと思う。

 

 

 

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1 個のコメント

  • 一部の伝統的神社が定期的に「式年遷宮」を実施する理由、古くから言われているのは「穢れを祓う」という意味ですが。建築技術的な観点からすると、おそらく、多くの日本人は昔から「白木はいずれ古びて虫食いや腐食により劣化する」ことをよく知っていたのでしょう。特に、伊勢神宮があるような森林の中の環境ではその傾向が著しいです。
    これに対し、仏教寺院は日本国内であっても「定期的に建て替える」ような慣習はありません。というのも、森に囲まれた神社とは違い、寺は、開けた風通しの良い場所に建っていることが多く、また柱など各部を朱色に塗装した建物も多いので、白木の神社に比べて腐食劣化のおそれが少なかったからだと考えられます。

    住宅のウッドデッキや外壁・フェンスなど木材でしつらえるのが昨今の流行ですが、まあ、ニスやペンキを塗って定期的に塗り替えることをお勧めします。その方が結局は長持ちしますよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。