今回の登場人物は20代のハンガリー人男性だ。
彼は以前、留学生として静岡の大学で学んでいて、今は帰国して首都ブダペストの大学に通っている。
ここでは、フン族の王アッティラに敬意を表して彼の名前を「アッティラ」としよう。
(実際にこの名前をもつハンガリー人はいる。)
アッティラに日本のイメージや、良いところ・悪いところについて話を聞いてみた。

AI画伯によるブダペストのイメージ
日本都の出会いはアニメから
ーーハンガリーというと「東ヨーロッパ」ってイメージがあるんだけど、実はハンガリー人的にはそれはよくない?
アッティラ:そりゃそうだ。
冷戦時代じゃないんだから、「中央ヨーロッパの国」って認識してほしいところだね。
ーーOK。じゃ、そうする。
そんなヨーロッパの中央にいて、アッティラはどうやって日本に興味を持ったんだ?
ア:ハンガリーの若者にとって、日本を知る最初の入り口といえばやっぱりアニメだよ。
俺は『ナルト』を見て「忍者になりてぇ〜」って思ったけど、それは無理だとわかった。
ーー忍者は本当に海外で有名だよな。
アメリカ人に聞いたら、「日本の天皇を知らない人はいるだろうけど、忍者を知らないアメリカ人は考えられない」って言ってたし。
ア:ハンガリーでも忍者は人気だよ。
圧倒的に独特で「東洋のミステリアス」みたいな雰囲気もあるしな。
ーー滋賀県で「忍者選手権大会」が開かれるから、アッティラもそれに参加したらいいじゃん。
優勝したらトロフィーと免許皆伝巻物がもらえて、海外旅行に行けるらしいぜ。
ハンガリーだったら笑うな。
ア:そんな大会があるんだ。さすが日本だな。
ーーちなみに、『水上走り』の種目・女子の部の大会記録は、「ポン影」さんの 8.51秒だって。
ア:そうか、…すごさがまったく実感できない。
それに、なぜわざわざ女子の部の記録を持ち出した?
ハンガリーでサッカーに次ぐ人気を誇る「空手」
とにかく、俺は忍者をあきらめて、空手を習うことにしたんだ。
ーー「ハンガリーと空手」については知らなかったけど、いまネットを見たら、首都のブダペスト市内だけでも空手道場がいくつもあるんだな。
競技人口ならサッカーに次いで国内第2位って、そんなに人気があったんだ。
ア:礼儀作法や日本の精神も学べるからな。
ーーそれが人気の秘密だったか。
前にSNSで、日本人よりも日本人らしい外国人を見たよ。その人は空手の有段者で、黒帯を締めているコスプレイヤーを見て、こう言ったんだ。
「もし、彼が認められてそれを持っているのなら構わないが、ただのコスプレの道具として使っているのなら、とても不愉快だ」
ア:俺にもわかるね、その感覚が。
ところで、忍者はどんな日本の精神を表しているんだ?
ーーそれはグーグルに聞いてくれ。

あるインド人は日本の観光地で忍者を見つけて歓喜し、斬られる写真をSNSに投稿していた。
ハンガリーから見た日本のイメージ:寿司と清潔
ーーハンガリーでは日本について、一般的にどんなイメージがあるんだ?
「日本」と聞いたら、ハンガリーの人たちの頭には何が思い浮かぶんだよ。
ア:それは「寿司」だろうねえ。
ハンガリーには昔から寿司店があって、ブダペストだけで何軒もあるからね。
ーーやっぱりそれか。
でも、店のオーナーやシェフは中国人だったというオチだろ?
ア:そうでもないさ、ベトナム人かもしれない。
ーーハンガリーで寿司店を開く日本人は少ないから、それは仕方ないか。
アッティラは忍者や空手とかで日本を知ったわけだ。
ア:あと最近は「清潔さ」だね。
ほら、サッカーのワールドカップで日本のファンは会場の掃除をするだろう?
ニュースやSNSでそれを知って驚く人は多かった。
それでヨーロッパでは、「日本人は規律正しく、清潔好きな人たち」ってイメージができたんだよ。
ーー今もそれをして、世界的に話題になっている。
そういう地味な働きが、日本ブランドの価値を高めているんだよな。
といっても、あれが「美談」になるのを嫌って、日本国内の「汚点」を強調する人もいるけどな。
ア:完璧を求めちゃダメだよ。
俺が実際に来てみたら、都市の路上でもゴミなんてほとんど落ちていなかった。
予想以上に清潔で快適な国だよ、ここは。
外国人に褒められたら素直に感謝したり、内心で誇ったりしてもいいんじゃないかな。
ヨーロッパ人が想像する日本の労働文化
ーーまぁ、「日本アゲ」はそこまででいいよ。
逆に、日本の社会にはどんなネガティブなイメージがあるんだ?
ア:日本の労働文化だろうね。
過酷で、サービス残業が当たり前で、休みも取りにくい。自分のプライバシーや家族との時間を「犠牲」にしてまで、仕事に捧げている――
ハンガリーだけじゃなくて、ヨーロッパで広くそんなネガティブなイメージがあると思うぜ。
ーーヨーロッパだけじゃないさ、タイ人にも同じことを言われたよ。
ア:実際に日本で働いたことはないから、これはあくまで想像だ。
俺は、自分のキャリアに応じてステップアップしていくのが理想というか、それが常識と思っている。
でも、日本では、同じ会社でずっと働き続けるのが一般的だと聞いた。もしそれが本当なら息が詰まるし、人生がもったいないと感じるね。
ーー今では外資系企業も増えてきたし、そういう「年功序列」のシステムも変わったと思うけどな。
でも、そういう鎌倉武士の「一所懸命」みたいな価値観は悪いことじゃないし、今でも根強くあるかもな。
ア:そう願うよ、俺は日本での就職を考えているからね。
日本社会の「闇」:ペーパーワークとIT化の遅れ
ア:あと、実際に経験したことで言うと、ペーパーワークの多さには閉口させられたよ。
ハンガリーなら、オンラインでサクッと済ませられるようなことでも、日本ではわざわざ役所に行って、手書きで書類に記入してハンコを押さなきゃいけない。
ーーそれか。
これまでインド人、中国人、トルコ人、アフリカ人から、日本のペーパーワークの多さについて苦情を聞いた。
韓国人からはさ、「なんで日本人はあんなにたくさんノーベル賞をとっているのに、社会ではこんなにIT化が進んでいないのですか?」って真顔で聞かれたこともあった。
ア:その指摘には、心の底から賛同するね。
ハンガリーならスキマ時間にできたことが、日本では、平日にそのための時間を作らないといけない。
しかも、バスに乗って往復するから半日はかかってしまう。
俺からすると、日本の人たちがこの非効率さに不満を感じないのが不思議だね。
ーー日本人の99.999%は、ハンガリーを基準に考えないからな。
それでも、日本に20年以上住んでいるイギリス人に言わせると、スマホのおかげで元号をすぐに西暦に変換できるから、ペーパー作業が劇的にラクになったらしいぜ。
スマホがなかった時代に、たとえば「平成21年」を西暦にするのはかなり大変だったらしい。
ア:そうか。俺だったら、その場で書類を破り捨てて帰国を決断するかもしれないな。
そうかと言って、それが社会を未来に進めない理由にはならないと思うけどな。
ーーそれに、一周回ってその苦労が懐かしさに変わることもある。
あるトルコ人は、自分の名前が刻まれたハンコを今でも大事に持っていると話していたよ。
ア:そうか。確かにハンコはユニークな日本文化だからな。俺も帰国したら、懐かしく振り返ると思う。
かと言って、それが社会を変えない理由にはならないけどな。
ーー次に市役所に行ったら、用紙にそれを書き込んで意見箱に入れろよ。
ア:…チッ。

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