「下瀬火薬」と「下田ケース」
明治の日露戦争で、日本を勝利に導いた要因のひとつに「下瀬火薬」がある。
これは、旧日本海軍で技師をしていた下瀬雅允(まさちか)が開発した火薬で、当時の世界水準を大きく超える威力をもっていたのだ。

今の日本で「下瀬火薬」は忘れられていて、これを知っている人は3割もいないのでは?
「シモダ・ケース」になるとその数はもっと少なく、「ああ、あれか」となる人は1割以下だと思われる。
しかし、原爆投下を「国際法違反」と明確に断じたこの裁判の判決は、もっと日本人に知られていい。日本中に知れ渡っていい。
きょうは8月6日だから、あの歴史的な判決を紹介するタイミングとしては最適だ。

1945年8月6日、人類史上、初めて核兵器が使われた。
写真の人物は広島でその被害を受け、治療を受けている。
原爆投下に対する海外の反応
原爆投下について、当事国であるアメリカでは一般的に、「戦争を早期に終わらせ、犠牲者を可能な限り少なくするために、アメリカは原子爆弾を落とした」とされている。
(これがアメリカ国内での主流な見方だったが、最近は否定的な見方をする人も増えている。)
アメリカでは原爆投下を正当化する声が多いが、海外に目を向けると否定的な見方をする人が多い。
たとえば、あるカナダ人はこう指摘した。
「In Canada a lot of people see it as a war crime US did to win it quick and dirty.
But it’s not the “official” point of view.」
(あれはアメリカが早く、不正に勝つためにおこなった戦争犯罪とカナダでは多くの人が考えている。しかし、それは“公式”な見解ではない。)
メキシコ人は「アメリカは人間のことを気にしない」、アフガニスタン人は「あれはテロ行為だ」、イタリア人は「アメリカよ、勇敢に立ち向かった戦争というのがこれか?罪のない人々を虐殺することか?」と非難した。
国籍は分からないが、アメリカを「戦争犯罪者(war criminals)」と非難する人もいた。

第三者である外国人の意見を見ていると、原爆投下を「戦争犯罪」と考えている人が多いことに気づく。
日本には、そんな世界の認識を先取りした判決がある。
世界初、原爆を違法とした「下田ケース」
戦後、被爆者である広島の下田隆一らが日本政府を相手に訴訟を起こし、1963年に東京地裁が世界で初めて「原爆投下は国際法違反」という画期的な判決を下した。
当時の判決文からにじみ出る「怒り」には、現在の日本人も共感できるはずだ。
「広島、長崎両市に対する原子爆弾による爆撃は、無防備都市に対する無差別爆撃として、当時の国際法から見て、違法な戦闘行為であると解するのが相当である」
「原子爆弾のもたらす苦痛は、毒、毒ガス以上のものといっても過言ではなく、このような残虐な爆弾を投下した行為は、不必要な苦痛を与えてはならないという戦争法の基本原則に違反している」
この裁判において、米軍の広島・長崎への原爆投下に対して世界で初めて「国際法上違法」であるとの司法判断が下された。
そしてこれが世界で唯一の事例で、国際的には「シモダ・ケース」と呼ばれている(日本への原子爆弾投下)。
日本人が知っておくべき真実
63年前の東京地裁の判決は時代を超えて、今も影響をあたえている。
1996年にハーグ(オランダ)にある国際司法裁判所(ICJ)が、「核の使用、威嚇は一般的に国際法の原則に反する」と勧告的意見を出した際にも、「シモダ・ケース」が重要な判断材料として取り上げられた。
原爆投下から80年以上が過ぎたいま、世界の認識が60年前の日本の認識に近づいているように思う。
唯一の戦争被爆国の国民として、日本人は「シモダ・ケース」という画期的な判決を常識レベルで知っておいていい。

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