日本の「キャラ弁」に魅了されたアメリカ人
友人のアメリカ人女性、エマ(仮名)は日本文化が好きで、ニューヨーク州にある大学に通っていたときは、「茶道クラブ」に所属していた。
日本に興味をもったきっかけは10代のとき、彼女がネットかテレビで日本のキャラ弁を見て、その華やかさとかわいさに一目惚れしたこと。
前にSNSで、弁当を「海外から伝わったもの」と誤解している日本人がいたけれど、これは逆に日本から海外へ伝わった文化だ。
だから、英語版ウィキペディアには「Bento」という項目が作られていて、「日本発祥(Japanese origin)」と紹介されている。
そんな弁当に「かわいい」の要素が加わったキャラ弁は、さまざまな日本の価値観や表現が凝縮された一品と言うことができる。
エマにとっては異文化を超えて、異世界の食べ物に見えたかもしれない。

アメリカ生まれの「アメリカ文化」は意外と少ない?
そんなエマは日本に住んでいたことがあって、数年前に帰国して、今はジョージア州にある病院で働いている。
最近、そんな彼女と日米の出産祈願の文化について話をした。

今回はその続きで、日米の文化の特徴について書いていこう。
両国の文化には、どんな共通点と異なるところがあるのか。

ーーネットで調べたら、ベイビーシャワーってアメリカ発祥のパーティーなんだってな。
そこは「帯祝い」と同じだな。これも中国由来じゃなくて、日本独自の文化なんだ。
エマ:そうなんだ。ベイビーシャワーの始まりまでは知らなかったよ。
ーーアメリカってさ、エンタメ大国だけど、じつはアメリカ生まれのアメリカ文化って意外と少ない気がする。
アメリカン・フットボールは、イギリスから伝わったフットボールが独自に進化したものだし。サンクスギビングやハロウィンもルーツはアメリカ以外にあるしさ。
エマ:そうやって、マウントを取られるのは嫌な気持ちになるけど、言ってることは正しいかもしれないね。
ピザはイタリア系、ベーグルはユダヤ系の人たちが持ってきたものだし。
ーーそんな嫌なものを取とうとしてねーよ。
サンクスギビングとハロウィンのルーツが、ヨーロッパにあるのは常識的なことだろ。
エマ:アメリカ生まれのアメリカ文化って、たしかに少ないかもしれないね。
「とてもアメリカらしい」という意味で、「As American as apple pie」(アップルパイのようにアメリカ的だ)って言葉がある。
でも、アップルパイはもともとイギリスやヨーロッパの食べ物だった。
ーーアメリカは移民大国で、移民たちが母国の伝統や文化を持ってきたから、そうなるんだよな。
「鎖国」をしていた島国とは国の成り立ちがぜんぜん違う。
エマ:アメリカは若い国で250年くらいの歴史しかなくて、日本みたいに長い伝統のある国じゃないから仕方ないよ。
ーーここで自慢させてもらうと、現在まで続いているという点では日本は「世界最古の国」なんだぜ。

でも、日本文化にはひな祭りや七夕とか、中国由来のものがたくさんある。
世界的に有名な日本文化の寿司も、起源は東南アジアにあると唱える人もいるしな。
(寿司につながった魚介類の保存方法 )
桜だって、起源はヒマラヤのあたりらしい。
エマ:へ〜、そうなんだ。
ベーグルはユダヤ人の食文化だったといっても、パンの起源はまた別にあるだろうし、キリスト教もヨーロッパにとっては外来宗教だしね。
ーーあれは中東のアジア人が始めた宗教だからな。
エマ:ルーツをどこまで求めるかで「独自性」も変わってくるよ。
ーー日中韓の東アジアには、「優越感」がもとになった文化の起源論争があるけど、欧米人はあんまりこだわらないんだろうな。

日本だけが古代から途切れなくつづいている。
「融合」するアメリカと、「日本化」してしまう日本
エマ:さっき、「アメリカは移民の国」だって、知ったような口をきいたじゃない?
アメリカの文化ってさ、移民の人たちが世界各地の文化を持ち込んで、それぞれの影響を受けて新しくできたものが多いんだよ。
ーー知ったかぶりなんてしてねーよ。
で、異なる要素が触れ合って新しく成立した文化って、たとえば何があるんだ?
エマ:たとえば、アフリカとヨーロッパの音楽文化が融合して生まれたジャズ。
ジャズは代表的なアメリカ文化だよ。
ーーそこは日本と似ている。
昔は中国から文物が伝わって、日本で日本らしくアレンジされて日本文化になったものが多い。
たとえば、中国の団扇(うちわ)が日本で扇子(せんす)になった。

明治時代になって西洋料理が伝わると、トンカツやオムライスとかの日本料理が生まれた。
トンカツなんて、日本語の「豚」とフランス語のコートレット(côtelette)がそのまま合体したからわかりやすい。
エマ:オムライス大好き!
ーーあれを気に入るヨーロッパ人は多い。
「初めてなのに懐かしい」みたいな感じなのかな。
エマ:そういえば、ジャズの本場のニューオーリンズは、フランス人がつくった都市なの。フランス語の「ヌーベル・オルレアン(新しいオルレアン)」の英語読みが「ニューオーリンズ」。
※オルレアンとは、18世紀にルイ15世の摂政を務めた王族のこと。

日本とアラビアの文化が隣り合わせになっているのも、アメリカらしさの一つ。
ーーここまでの流れをまとめると、日本とアメリカの文化にはこんな特徴がある。
異なる種類の文化が出会って、新しい文化が生まれることでは一致している。
でも、アメリカでは外国の文化どうしが融合して、日本では海外の文化を日本人が吸収して「魔改造」してしまう。
エマ:それがすべてじゃないけれど、大きな特徴ではあるよね。
ーー日本は、今でも国内にいる人の95%以上が日本人で、世界的に見ても同質性が高い国で、そこはアメリカ社会とはまったく違う。
だから、中国や西洋の文化が「日本化」して、日本文化の一つになるんだ。
エマ:うまくまとまったね。でも、ちょっとイラッとするのは何でだろう。
ーー心が歪んでいるからじゃないか?

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