隣国さんは良くも悪くも日本強い関心を持っているから、韓国メディアには日本に関わる記事やコラムがよく掲載される。それを読むと、日本人のボクが日本について知ることも多くて参考になる。
最近の例として、朝鮮日報の記事を読むと、アメリカ社会における桜の位置づけが見えてきた。(2025/03/25)
「世界で最も成功した広報文化外交」 ワシントンで桜満開、日本の時間がやって来た
イリノイ工科大学のヘンダーソン教授が春に日本を訪れた際、桜の魅力に完全に魅了され、その時の経験を記録し、書籍として発行した。今年の3月には、首都ワシントンD.C.にある駐米日本文化院で講演をおこない、スライドを使いながら桜について説明した。ヘンダーソン教授の講演には100人以上が集まり、会場の座席はすべて埋まったという。
アメリカ人が桜に関心を持つ大きな理由の一つは、毎年ワシントンで開催される「全米桜祭り」だ。毎年150万人がこの桜祭りに参加し、この時期だけでワシントンの観光収入の3分の1以上を稼ぐという。
この祭りの起源は、明治時代に日本に来たアメリカ人女性シドモアにさかのぼる。彼女は、春の桜を喜ぶ日本人の姿について旅行記で次のように記している。
たとえ何でも陰鬱な冬に逆戻りしても、日本全国、白とピンクの花環で彩られるまで、じっと堪えます。栄光の四月、満開の花の雲、桜の爆発で帝の国は歓喜に包まれます
「シドモア日本紀行: 明治の人力車ツアー (講談社学術文庫) 」
日本で桜の美しさに感動したシドモアは、ワシントンD.C.にも桜の木を植えようと考え、アメリカのタフト大統領夫人ヘレン・タフトにその思いを伝えた。タフト夫人はこの計画に賛同し、1912年に日本は3000本の桜の苗木をアメリカに贈ることとなった。それがワシントンに植えられ、現在の「全米桜祭り」の始まりとなった。
今では春になると、アメリカの主要メディアは「ワシントンはどうして日本の桜でいっぱいになったのか?」という記事を掲載する。また、桜祭りの前後にはワシントンで寿司、酒、茶道など日本文化を紹介するイベントがおこなわえw、SNSでも「桜祭りのおいしい日本食」、「ワシントンで日本文化を深く体験できる場所」といった情報が拡散される。
この記事を書いた韓国人記者が確認したところ、桜祭りをテーマにした有名ホテルの宿泊ツアーはほとんどが売り切れだった。
そんなことから、全米桜祭りは「世界で最も成功した広報文化外交」と言われているという。
桜祭りの発案者であるエリザ・ルアマー・シドモア(1856年 – 1928年)は今は横浜に眠っている。
知人のアメリカ人女性は日本に住んでいたことがあって、現在はワシントンD.C.から遠く離れたジョージア州に住んでいる。彼女と話していた際に桜の話題が出たので、その内容を紹介しよう。
ーーアメリカで春の訪れを感じさせるものって何かある?
個人的には、勤務している病院に桜の木が何本かあって、この前きれいな桜が咲いているのを見て春を感じたな。
ーーその桜を見に、たくさんの人がやってくるとか?
それは言い過ぎ。そこまでではない。
通りすがりの人がスマホを向けているのは見かけるけど、わざわざこれを見るために来る人はいないでしょうねえ。ジョージア州のメーコン市では毎年「桜祭り」が開催されて、30万本以上の桜を見ることができる。ホームセンターにも桜の苗木が売っていて、近所でも桜の木を庭に植えている家があるから、このあたりで桜はそんなに珍しくないのよ。
*ちなみに「ホームセンター」は和製英語だから、アメリカ人には通じない。「home improvement store」と言えばOK。
病院に咲く桜
ーーーー日本だと、ソメイヨシノは大きくなるから、一般的な家庭で育てるのはレアケースで、小さな盆栽サイズの桜を育てることが多い。その点、アメリカは何でもデカい。知人の日本人がアメリカのファストフード店でLサイズのドリンクを注文したら、ほぼ1リットルの飲み物が出てきて、その重量感が忘れられないと言っていた。
アメリカの家や庭の広さを考えると、桜はちょうどいいのかもしれない。自宅で好きな時に花見ができる環境はうらやましい。
そうそう。日本に着いてアパートに入ったとき、部屋が狭くて家具が小さくてビックリした。
ーーちょっと古い話だけど、1970年代にEC(今のEUの前身)が報告書で、日本の家について「まるでウサギ小屋」と書きやがったくらいだからね。
日本には、入院している患者さんに季節の変化を感じてもらうために桜を植えている病院もある。
なんであなたの病院は桜をチョイスしたの?
「きれいで育てやすいから」以外に特別な理由は思いつかない。アメリカ人が日本人よりも季節感を大切にしているとは考えられない。合理性を重視した結果でしょ。
今回は、ワシントンD.C.とジョージアの例しか紹介していないけれど、アメリカ社会には思っていたよりも桜が広く浸透していると感じた人も多いのでは?
とはいえ、「世界で最も成功した文化外交」と称され、日本との友好の証(あかし)はワシントンD.C.の全米桜祭りくらいで、それ以外の地域では現地に定着していて、日本のつながりはあまり感じられないかもしれない。
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