外国人が日本で桜や花見を見たらなにを思うのか?
日本人では「花より団子」みたいに、桜より食べ物が目的になる人がいる。
それと同じように(?)、花とは別のものに目がいく外国人もいる。
たとえば明治時代に来日したドイツ人ベルツには、花見をしている日本人の様子が印象的だった。
入り乱れて行きかうすべてが、何という静粛で整然としていることだろう。乱暴な行為もなければ、酔漢の怒鳴り声もしない — 行儀の良さが骨の髄までしみこんでいる国民だ
「逝きし日の面影 (平凡社)」
では、「外国人と花見」シリーズの第三弾、今回はインド人の感想について書いてきますよ。
インド人は日本の桜や花見を見たらどう思うのか?
ということを知る前に、インド人の「驚きの前提」を知っておこう。
インド人でも日本人でも、外国人は母国の考え方や価値観で異国のものを見る。母国の常識や基準がスタートになっているから、それから離れるほど驚きや衝撃は大きくなる。
これがカルチャーショックってやつ。
ということでここで少し、彼らの社会をのぞいてみようず。
これは首都デリーの駅前の様子。
インドは広いから場所によって全然ちがうのだけど、庶民が行きかう街はだいたいこんな感じだ。
のっけから、野良牛が歩いてくる。
印度と書いて「カオス」と読む理由がおわかりいただけただろうか。
こういう社会を「あたりまえ」と思っている人たちが日本の桜や花見を見たら、どんな印象をうけるのか?
今回は、インド人夫婦と子どもの計3人を佐鳴湖の湖畔に連れて行った。
*この記事上の写真がそれ。
ここは湖と桜を同時に楽しめるという浜松市では有名な花見スポット。
彼らも前回のベトナム人同じく、日本で桜や花見の様子を見るのは初めてで、駐車場にあった桜を見て「本当にきれいだ…」とさっそく言葉をうばわれたのだった。
駐車場の桜
ここで予想外の事態が発生。
3人のインド人家族による撮影会がはじまって、駐車場から先にすすめなくなってしまった。
桜をバックに1人1人の写真を撮る、次は桜に顔を近づけて撮る、さらに子どもを抱いて撮る。
とにかく撮るトルとる。
それぞれを確認して、気に入らないとまた撮りなおすから、時間だけが過ぎていって駐車場から抜け出せない。
「インド人は写真(と自分)が大好きだし、生まれて初めて家族で日本の桜を見たらこうなるのか」とあたたかく彼らを眺めていた。
笑顔といっしょに「そろそろ行きませんか?」というオーラを出していたのだけど、これがまったく通じない。まあ、インド人は基本的に空気を読まない。
心ゆくまで写真を撮ったのか、残りのギガ数が気になったのか、駐車場での写真大会を終えてようやくメイン会場へと足をすすめる。
芝生・桜・ビニールシートの春の3点セットはこの季節、日本全国のどこにでもある。
写真だと少ないけど、この公園にはたくさんの花見客がいた。
この様子を見てインド人カップルが、「行儀の良さが骨の髄までしみこんでいる国民だ」という明治のアメリカ人と同じような感想を口にする。
大勢の人がいても静かだし、整然としていてゴミが一つも落ちてない。
インドでは逆で、人はいないのにゴミだけが落ちている。
インド人はピクニックが好きだから、自然に囲まれた場所で食べたり飲んだりすることはある。
でも、飲酒はしない。
公園など公共の場でお酒を飲むことはできないから、日本の花見はインドではあり得ない。
インドの常識ではアルコールは室内で飲むもので、外で飲んでいたらきっと警察に捕まるという。
だから彼は、新幹線の中でビールを飲むことを日本での最高の楽しみのひとつにしている。
それにインドでは、お酒が入ると危なくなる人がいるから、「乱暴な行為もなければ、酔漢の怒鳴り声もしない」という日本人の様子には感心していた。
さらに団子屋の前には列ができていて、みんな静かに並んでいる。
インドだったら店先に「人のかたまり」ができていて、一列に並ぶことはないという。
そういえばインドは「整然」や「静寂」からほど遠い国だった。
インド人が行儀よく一列に並んでいたのは、ムンバイの空港で銃を持った軍人がいたときだけだったような気がする。
インドの課題はミンドか。
なんて言ってみる。
写真を撮りあうインド人カップルと近くで遊ぶこどもの図
ここ佐鳴湖の周囲は舗装された道でかこまれていて、車はふつうに通るし、ランニングをする人や犬の散歩をする人もいる。
話をきくと、インドではこれも「無理」と言う。
車を整理する人がいなかったら、先に来た人から、車をそこらに勝手に停めてしまう。
それであとから来た人がそれに怒ってクラクション鳴らしまくる。そして渋滞とクラクションの二重奏、三重奏がはじまる。
それに、車が行きかうなかでランニングや犬の散歩をするのがそもそも危ない(下手したら命を失う)から、そういう場所では車は通行止めにする。
日本人は写真を撮っている人を見ると、みんな大回りしてその後ろを通ってくれる。ときには車がとまることもある。
インド人はふつう、そこまで配慮はしない。
ということでまとめると、このインド人カップルの場合、桜の花より花見をする日本人のほうが印象的だったらしい。子供は花より団子で、桜よりアイスクリームの方が良かったはず。
おまけに書くと、大正時代に日本を訪れたインドの詩人タゴールはこう言っていた。
*タゴールはアジア人初のノーベル賞受賞者(文学賞)
一つのことが、この国の巷で目につく。街には人はあふれているが、いっこうに騒々しくはない。人びとは大声で話すことを知らないかのようである
「日本賛辞の33撰 (ごま書房)」
インドを歩けば、これが奇跡的ということがよく分かる。
タゴール&ガンディーという、インド最高のツーショット
後日談
ベトナムで日本の桜は有名で、「SAKURA」でだいたいみんな分かる。
でもインドでは、桜はそこまで知られていないらしい。
インド人カップルが桜の写真をSNSにアップすると、「映画やテレビでその花を見たことがあるけど、あれは日本の桜だったのか!」というコメントがきていた。
きれいな花で印象に残っているけど、それが日本の花であることは知らないインド人が多いらしい。
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