韓国の日本観 今も昔も「宝物は倭寇に盗まれた」で通じる

 

日本と韓国は政治的にはいろんな対立があっても、民間交流はそれとは反対に活発になっている。
きょねん韓国を訪れた日本人観光客の数は約 231万人と、11年ぶりに世界最多を記録したし、同じ年に日本を訪れた韓国人は約 700万人超と、こちらも国・地域別でトップとなった。
日韓の双方で観光客の数が1位だったのだから、国民目線ではグルメやショッピングなどの人気がとても高いことがわかる。でも、日韓の間にはダークサイドや、解決しないといけない問題があるのは事実。

 

19世紀の終わりごろ、本間 九介(きゅうすけ)という日本人が朝鮮半島を旅行し、その体験を新聞に連載した。
彼の旅行記『朝鮮雑記』(祥伝社)から、当時、朝鮮の人たちが倭寇(や日本)に対し、どんな感情を持っていたか見てみよう。

*倭寇と聞くと、「13〜16世紀に活動していた日本の海賊」とイメージする人も多いと思われるが、実際には高麗人や中国人もいた。

本間は現地で聞いた次のような話を紹介している。

あるとき倭寇が慶尚道の寺に侵入し、釈迦の頭舎利(頭の骨)と袈裟を盗み出すと、たちまちあたりが暗くなり、雷が落ちて盗人(倭寇)がそれに打たれて死んだ。そして、舎利と袈裟は寺に戻ってきた。

ほかにも、倭寇が古代の王の墓に忍び込むと、「神兵」が現れて駆逐したという話もある。
そんなことから、当時の朝鮮では倭寇に対し、こんな悪い印象があったと本間は書く。

「八道(朝鮮全土)の王陵・古墳で、倭寇によって発掘されなかったものは、 ほとんど稀である」
「八道の宝器は、いずれも倭寇に掠められ、王陵・古墳は、いずれも空蟬の脱けがらであるという」

朝鮮人は、数百年前にあった倭寇の害や残酷さを強調していたという。しかし、そもそもそこに宝物があったのかを含め、こうした話は根拠の無い言い伝えに過ぎないから、本間は信じられないと語る。
『朝鮮雑記』の注釈にはこうした倭寇略奪説について、

「国内で盗難や横流しがされた場合も、倭寇の責任にしておけば、追及がされにくいという心理はあったにちがいない」

と書いてある。
倭寇が略奪したこともあっただろうが、こんなケースもあったはず。
朝鮮では倭寇に対する憎しみは強い。
だから、貴重品を盗んで利益を得ても、「倭寇のしわざ」と主張すれば「きっとそうだ!」となり、あまり問題にならなかったのだろう。
こうした説によって、倭寇は実際以上に悪者になってしまうのだけど。
残念ながら、こんな発想は現代の韓国にもあるらしい。

 

2012年に韓国人の窃盗団が対馬の観音寺から、重要文化財の仏像を盗み出し、韓国へ持ち込んだところ、警察に見つかって逮捕された。
仏像は回収され、盗まれた仏像はお寺へ戻ってきて一件落着と、簡単なことが簡単にいかないのが日韓関係。(対馬仏像盗難事件
その後、韓国の浮石寺(プソクサ)が、「その仏像は数百年前に倭寇に略奪されたものだ!」と 130年前と同じ主張をすると、韓国の地裁はそれを認め、韓国政府に浮石寺への引き渡しを命じる。
韓国政府がこの理不尽な決定を受け入れるわけなく、すぐに控訴。
次の高裁は一転して政府の主張を認め、地裁の判決を取り消すと、浮石寺側が反発し、「最終決戦」にもつれ込む。
そして韓国最高裁が昨年10月、浮石寺の上告を棄却し、仏像の所有権は観音寺にあることを認めた。

そもそも韓国は、盗まれた文化財の返還を定めるユネスコの条約(文化財不法輸出入等禁止条約)を批准しているのだから、窃盗問題がここまで長期化することがおかしい。
韓国最大のメディア・朝鮮日報も「世界の文化界で韓国は盗品すら返さない国と評された」と批判している。

全体的に見ると地裁だけが異議の判決を出し、高裁・最高裁は対馬の寺や韓国政府の意見を支持したことになる。

「対馬仏像盗難」で韓国が受けた屈辱・世界の冷たい視線

 

でも、これですべてが終わり、やっと仏像は対馬に戻ってきた、とはならなかった。
司法で決着がついたにもかかわらず、半年を過ぎても、まだ仏像は観音寺に返還されていないと産経新聞が報じた。(2024/4/25)

「音沙汰がない…」対馬盗難仏像の所有権は日本との韓国判決から半年 観音寺前住職の胸中

仏像が盗まれてから今までの間に、仏像の返還を待ちわびながら、その願いがかなうことなく、亡くなった島民もいる。

観音寺の前住職はこう話す。

「どこからも音沙汰がない。韓国政府は単純な窃盗品なのに返さない。日本政府にも取り返す意欲が見えない」

前住職は韓国に対して、信頼と不安の入り混じった複雑な心境にいる。

「時空を超えた怨念のような呪縛に縛られるような国ではないと信じたい」

韓国最高裁は倭寇の呪縛を解いたから、次は韓国政府の番だ。
日本政府も仏像返還に向けて、もっと積極的になるべき。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。