【韓国の旅】130年前と現代の日本人が感じた“旅の情緒”

 

今回は、昔と現代の日本人が韓国で感じた「旅の情緒」について紹介しよう。

まず、「昔」のパートは、19世紀末に朝鮮半島を旅行した本間 九介(きゅうすけ)の体験。
二本松藩(いまの福島県)出身の彼は、日清戦争がはじまる直前、明治27年(1894年)に新聞に『朝鮮雑記』という紀行文を連載して、朝鮮の文化や社会事情などを日本人に広く伝えた。

その記録によると、約130年前の朝鮮では、宿で蚊や虱(シラミ)、蚤(ノミ)といった害虫に加え、ビンデーという「寝床の虫」が出て旅人を悩ませた。
このビンデーにかまれると1週間は痛むらしい。
虫は夏になると大量発生するから、宿の主人は暑くなると客を室内に案内しないで、内庭や路上に蓆(むしろ)をしいて、木製のまくらを持ってきて客を寝かせたという。
そして、蚊に刺されないように、蚊取り線香のようなものをたく。
煙が出ている間は、蚊は近づいてこない代わりに、煙のせいで自分も寝ることができない。
煙が消えると、今度は蚊の大群に襲撃されるから、結局は寝れない。

それでも、本間は「宿を得ておきながら、野外で寝ることで、かえって旅の情緒が感じられる」と、この逆境をポジティブにうけとめた。

 

 

現代の日本人が韓国で感じた「旅の情緒」というのは、恐縮ながら、わたしの経験デス。

21世紀の韓国では、蚊に悩まされることはあっても、シラミやノミの被害にあったというのはSNSで見たことあるだけで、直接そういう人に会ったことはない。
ビンデーという“謎虫”については、正体がよくわからん。

2010年ごろ、ソウルを旅行した際、韓国の伝統建築っぽいつくりの「大元旅館」を利用した。

 

 

19世紀と違って、ここには内側にオープンスペースがあった。
日本人や外国人の旅行者が自然とここに集まって、旅の情報を交換したり、いろんな旅の話を聞いたりして楽しく過ごすことができた。
オンドルの床があるから、冬でも部屋の中はあったかいのだけど、シャワーを浴びるために一歩外へ出ると、そこはマイナス10度の極寒で、フィンランドのサウナみたいに温度差がすごかった。

宿のおばさんは簡単な日本語を話すことができて、まるで親戚の親切なおばちゃんのように、親切に旅行者の世話をしてくれた。
朝、観光に出かけようとすると、おばさんに出会い、「いまチヂミ焼いているから、それを食べて出かけなさい」と声をかけてくれる。
その気持ちは渤海より広くて、とてもありがたいのだけど、用事があっていまはその時間がない。
「スミマセン」と言って出かけようとすると、おばさんは「ちょっと待って」と言って、作りた立てのチヂミをビニール袋に入れて持たせてくれた。
チェックアウトをした際の「ありがとねー。またきてくださいねー」という言葉はいまも耳に残っている。
個人的に、韓国で「旅の情緒が感じられる」と思ったのがこの宿。
でも、残念なことに、日韓関係が悪化した影響で、このハートウォーミングな宿は無くなったと聞いた。

 

「大元旅館」にあった交流スペース

 

数年後、値段にひかれて、今度はソウルにあったモダンなゲストハウスに泊まった。
しかし、このときは旅の情緒なんて1ミリも感じられず。

 

 

フロントにいた青年は英語を話すことができたから、宿泊の対応は問題なくできたのだけど、サービス精神なんてかけらもない。
ゲストハウスに入ったら、彼はフロントでスマホをいじっていて、ボクが目の前にいることに気づいているはずなのに、何も言わずに待たせて、メッセージを打ち終わってからチェックインの手続きを開始した。
客と視線を合わせようとしないし、不機嫌そうに手続きをするから感じ悪し。
そしてシゴト終えると、またスマホに手を伸ばす。

 

 

フロントでカギを渡され、そのナンバーの部屋を開けると、どう見てもアパートの一室で強烈な違和感を感じる。
そこに、可能なかぎりベッドを詰め込んだ空間で、囚人のような感覚を味わうことができた。
旅のコスパを最優先して宿を選んだら、宿の方がはるかにコスパの達人で、大元旅館にしなかったことをホントに後悔する。

*後で知ったのだけど、このころソウルでは、無許可でアパートを改造した「違法ゲストハウス」が多かったらしい。

値段的には大元旅館と同じだから、ネットで料金と外観とフロントの写真だけを見れば、こういう宿に泊まる日本人が多いのはわかる。
あのステキな宿が消えた理由に、こんな現代的で低質なゲストハウスとの競争もあったはずだ。
悪貨は良貨を駆逐するという。
「コスパ重視」のいまの韓国で、あんなあったかい「旅の情緒」を感じられるところはどれだけ残っているのか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。