友人に、日本文化が好きなアメリカ人女性のエマ(仮名)がいる。
彼女はジョージア州のアトランタに住んでいて、日本の学校で英語を教えることが決まっていたときに、恋人と出会った。
彼は遠距離恋愛が永遠の別れになることを恐れて、仕事を辞めて彼女と日本に行くことを決めた。
こうして2人は日本で一緒に暮らしながら3年ほど英語を教え、数年前にアメリカへ帰国した。
現在、エマはジョージア州にある病院で働いている。
最近、そんな彼女と「出産祝いの文化」について話をした。

アメリカの安産祈願「ベイビーシャワー」
ーー最近は何かあった?
エマ:今、わたしが妊娠しているのは知ってるよね?
ーー知ってる。9月に生まれる予定なんだろ。
エマ:そう、それでベイビーシャワーを楽しみにしているんだ。って、ベイビーシャワーは知ってる?
ーーいや、初めて聞いた。
それは、赤ちゃんに聖水をかけるキリスト教の「洗礼」と関係したやつ?
西ヨーロッパに比べると、アメリカ社会はキリスト教の影響が強いし。
エマ:ううん、1ミリも関係ない。
ベイビーシャワーというのは、もうすぐ出産する女性のために、家族や友人、仕事仲間が集まってするパーティーのこと。
ーーいまネットで調べたら、ベイビーシャワーは安産を願うイベントで、この場合のシャワーは「妊婦さんに祝福を降りそそぐ」って意味らしい。
これは女性だけでやるっていうから、アメリカ版の女子会だな。
エマ:その情報はちょっと古い。
最近は男性も参加してるよ。
わたしも調べてみたけど、ベイビーシャワーの文化が誕生したのは1950年代みたい。
第二次世界大戦の後に何百万人もの赤ちゃんが生まれて、まわりの人たちがベビー用品や衣服、おむつなどをプレゼントして、若い二人を経済的に支援した。
わりと「実用的なイベント」ね。
職場でパーティー|アメリカのチームビルディング?
ーーそれで、ベイビーシャワーでは具体的に何をするんだ?
エマ:みんなで美味しいものを食べておしゃべりしたり、妊婦さんにプレゼントをあげたりする。
わたしの場合は、同僚と義母がしてくれることになっているから、それが今から楽しみなのよ。
ーーそのパーティーは誰かの家でするのか?
エマ:ううん。義母はカントリークラブで、同僚たちは病院でしてくれることになっている。
でも、同僚のパーティーはいつするのかまだ分からない。
ーー病院でってことは、勤務中にベイビーシャワーをするってこと?
エマ:そう、勤務中に1〜2時間くらい。
わたしはその部屋にずっといて、同僚はちょっとした空き時間に10分か15分くらい参加するんじゃないかな。
たぶんプレゼントをくれて、簡単なものをつまみながらちょっとお話をする。
ーー勤務先が場所を提供してくれて、仕事中に私的なパーティーを開くのが認められるってのがアメリカらしいよな。
前にグアム出身のアメリカ人からも、日本でいう「新人歓迎会」を職場で勤務時間内に簡単にするって聞いた。

日本だったらそういう会社は例外的で、仕事は仕事できっちりやってから、レストランや誰かの家でやりそう。
エマ:職場でベイビーシャワーをするのも、職員の連携や信頼関係を強めるためのチームビルディングのひとつって考えられていると思うよ。

ベイビーシャワーでは、たくさんの紙おむつで作った「おむつケーキ」が定番アイテムになっている。
でも、「おむつケーキ」で検索すると、関連ワードに「迷惑」「汚い」「いらない」というネガティブな言葉が出てくるから、日本ではあんまり歓迎されていない予感。
日本の安産祈願「帯祝い」
エマ:日本では、ベイビーシャワーみたいなお祝いの文化はないの?
ーーもちろんある。
神社や寺に行って、赤ちゃんの無事を祈る「安産祈願」はほとんどの人がやっているだろうし、伝統的には「帯(おび)祝い」ってのがある。
妊娠5か月目のころの戌(いぬ)の日に安産を願って、妊婦のお腹にお祝いの帯(岩田帯)を巻くんだよ。
エマ:なんで「イヌ」の日なの?
ーー干支って、英語だと「アニマルイヤー」か。
エマ:なんか一人で納得しちゃってるけど、干支は「zodiac」(ゾディアック)だよ。
日本の干支なら「Japanese zodiac」。
ーーなんかゾルトラークに似ているな。
イヌって子どもをたくさん産むイメージがあるから、それにあやかって「戌の日」にするらしいぜ。
エマ:そうなんだ。
わたしもその「帯祝い」もやってみたかったな。
ーーでも、最近は帯祝いをする人は減っているみたい。
神社やお寺でやってもらうと、5000円〜1万円くらいするから、今の日本人には少しハードルが高い。
エマ:伝統がピンチ!
ーー逆に、ベイビーシャワーをする人が増えている。といっても、だいたい10%以下だからまだまだ少ないけどな。
安産を願う気持ちは世界共通
エマ:こうしてみると、ベイビーシャワーも日本の帯祝いも、やっていることは違うけど、結局は同じだよね。
「子どもが無事に生まれてほしい」という気持ちは、国が違っても変わらない。
ーーだな。
エマ:アメリカはパーティーでお祝いして、日本は神や仏にお願いする。
あれ? 日本のほうが宗教的じゃない?
ーー日本では神道や仏教が生活に溶け込んでいて、文化と一体化しているからじゃないか。

コメント