日本と海外との習慣の違いに「チップ」の有無がある。
ホテルやレストランとかで「この場合、いくらのチップをどうやって渡せばいいんだ?」と悩むのは日本人の海外旅行あるあるのひとつ。
この習慣の起源はハッキリわかっていないけど、一説にはこんな話がある。
イギリスのあるレストランが「To Insure Promptness(素早いサービスを約束します)」と書かれた入れ物を用意して、客がそこに金を入れたことから「Tip」の名がついたという。
でもこれには問題がある。
これによって、客のチップを見込んで従業員の給料を安くしようとする雇用者が出てきたことで、ヨーロッパでチップは1900年代初めまでに廃れていった。
この習慣は19世紀ごろにアメリカへ伝わり、いまでは社会に広く浸透して常識になっている。
そんなアメリカでいま、チップに対する見方が大きく揺れていた。
朝日新聞の記事(2020年6月18日)
チップは米国文化か、格差の象徴か 低すぎ時給に廃止論
アメリカらしいと言っちゃなんだけど、1863年に奴隷が解放された後、飲食店などの白人オーナーが黒人に金を払うのを嫌がり、賃金を客からのチップでまかなおうとして米南部を中心にこの習慣が定着したという話があるとか。
アメリカ社会ではチップが実質的に従業員の給料とみなされるケースもあって、一般労働者の最低賃金が7・25ドルなのに対して、チップ労働者は2・13ドルしかない。
ただこのへんの考え方は州によってちがい、カリフォルニアなど7州では両労働者の最低賃金は同水準にある。
これはこれで、「チップ労働者が得をしている」という批判があるのだろうけど。
日本でも心付けのようにこれに似た習慣はあるけど、日本人は欧米式のチップの考え方には抵抗感があって、まったくと言っていいほど受け入れられていない。
2012年にマスターカードが行った「チップを渡す比率が高い国調査」によると、日本は間違いなく、世界で最もチップのない国のゾーンに入る。
タイ89%、フィリピン75%、香港71%、インド61%、マレーシア40%、インドネシア40%を挙げている。台湾17%、韓国13%、日本3%といった調査結果を挙げている。
ということでチップの習慣の定着度において、日本とアメリカは正反対で天地ほどに離れている。
そんな日米の文化や考え方の違いで、知人のアメリカ人(20代・男性)がえらく苦労したと話していた。
日本で英語を教えている彼のもとに、「やあ、愛するわたしの息子よ、元気か?今度の休みに日本へ旅行に行こうと思うんだ。スシとラーメンが待ちきれないよっ」という文面かは知らないけど、とにかくそんなメールが届いて、両親が日本へ来ることになる。
それまでアメリカから出たことがなかった彼らにとって、これがはじめての海外旅行だ。
日本に来て早々、やってくれた。
夕食時にファミリーレストランで天ぷら定食を食べた父親は、レストランの清潔さと食事の味、さらに従業員の笑顔やテキパキした働きぶりが気に入って、片付けにきた店員に「すばらしい食事とサービスだった。これはチップだ」とニコニコしながら千円札を差し出す。
「え、それはいいです」と困り笑顔で断る従業員の話が分からなかった父は、息子に日本語で説明するように求める。
日本ではチップの習慣がなくて彼女は困っていると伝えると、「そんなはずはない!お金をもらって困る人間がいるわけないだろう。おまえはちゃんと説明したのか?」と父親から日本語の能力を疑われてしまった。
そのうち店長が出てきて、請求額以上のお金を受け取ることは禁止されていると話したけれど、アメリカの価値観ややり方しか知らない両親にはその店のルールとやらが理解できない。
店としてはホメられているから嬉しいのだけど、それを表現するのは言葉だけで十分で、現金はありがた迷惑。このばあいはアメリカ迷惑だ。
店と親のあいだに入ってやり取りした彼はその時を振り返って、「あれがアメリカ人なんだ。みんなお金を欲しがっていて、自分たちのやり方が正しいと信じている。大きい子供だよ」とため息をつく。
いろいろ面倒くさいし、もうチップはアメリカ文化ではなくて格差の象徴として廃止すればいいのに。
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>「あれがアメリカ人なんだ。みんなお金を欲しがっていて、自分たちのやり方が正しいと信じている。大きい子供だよ」とため息をつく。
そのアメリカ人も、もう一つ別の見方を忘れていますね。「みんなお金を欲しがっていると信じて、自分のカネを与えたがっている」という事実をね。こういうのを醜い拝金主義というのですよ。何でも金を払えば手に入ると思っているのか?
私なんかはカチンと来ますけどね。