【This is 日本文化】扇子は中国発祥なんてナンセンス

 

パリ五輪で日本は20個の金メダルを含め、銀と銅メダルを合わせて計45個を獲得。海外で行なわれたオリンピックでは、金メダルと総数はこれが史上最多だ。
これまでの日本の最高記録は、金メダルがアテネ大会(2004年)の16個、メダルの総数はリオデジャネイロ大会(2016年)の41個だった。

そんな歓喜に湧いたパリ五輪の閉会式では、北口榛花選手と半井重幸選手が日本選手団の旗手をつとめ、ネット上では、両選手の179センチ&166センチの身長差が映えて、「オリンピック史上1番推せる閉会式だ」と話題を集めた。
さらに閉会式では、各国の選手たちが扇子(せんす)を持っていたことにネットに反応し、こんな声が上がった。

・日本人としてなんか嬉しい
・起源は中国だろ
諸葛公明がいつも持ってたの有名だぞ
・扇子なんて遥か昔にヨーロッパで普及してんだろ
・扇子の起源は韓国
焼肉で煙を払うために開発された
・扇子ってアントワネットも持ってたっしょ
別に日本のものだけじゃないのでは

ちなみに、日本の選手が持っていた扇子にはイタリア語で「La Dolce Vita(甘い生活)」と書かれていたらしい。

 

19世紀にフランスの画家クロード・モネが描いた『ラ・ジャポネーズ』
万国博覧会で浮世絵や工芸品などの日本美術がヨーロッパで注目され、芸術家たちに大きな影響を与えてジャポニスムが流行した。

 

ネットのコメントを見ると誤解している人が多いが、団扇(うちわ)は中国発祥かもしれないが、扇子は日本生まれの日本文化だ。
少なくとも、日本と中国文化のスペシャリストで歴史作家の陳舜臣氏はそう言っている。

夏になると団扇でバタバタやっていたのを、折り畳み式の扇子で懐にはいるように改造したのも日本人である。平安時代から、扇子は日本から中国への重要輸出品だったのである。

「日本的 中国的 (徳間文庫) 陳舜臣」

 

扇子がどこで発明されたかについては、高麗や中国説もあるが、ウィキペディアの説明を読むと、「そう解釈できるっぽい」記述があるだけだから、この説はかなりアヤシイ。
いっぽう、日本には「現物」がある。
奈良時代の長屋王邸から、薄い檜(ひのき)をたばねて作った開閉式の扇が出土した。この檜扇(ひおうぎ)が最古とされている。
くわしいことは、奈良文化財研究所の「平城京の発掘」をご覧あれ。
ただ、団扇を改造して作られたのが扇だから、もともとのルーツは中国にあると考えていい。

平安時代に扇子は日本から中国へ輸出され、東アジアの扇は16世紀にヨーロッパに伝わった。17世紀には扇がヨーロッパで製作され、貴族の女性が持ち歩くおしゃれアイテムとなる。
だから、マリー・アントワネットが持っていてもおかしくない。
諸葛孔明が持っていたのは扇子ではなくて団扇だ。
扇子が中国文化という指摘はナンセンス。
あれは日本文化の1つだ。

 

 

日本 「目次」

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。