ヨーロッパ人から見た「日本の月」。母国の月とのちがい

 

2021年5月26日のきょうの夜は、外に出て空を見上げよう。
そこにはきっと、スーパームーンが輝いているから。
…と言いたいところなんだが、静岡の今夜は曇りか雨のようだからきっと闇しか見えない。

スーパームーンとは言うまでもなく、外交の天才と言われた韓国・文(ムン)大統領…とは関係なくて、月が地球に超接近して超でっかく見える現象をいう。

くわしいことはスーパームーンを見てくれ。

ネットでは期待と不安が高まっている。

・昨日の夕方やけに月が大きく見えるなと思ったわ
・パンデミックがおきるんだよね
・ギヤアアアア地震がくるあああああ
・ おもろいくらい真っ暗になるよ
・スーパームーンで皆既月食なんて、オリンピック中止だろ
・もう場所取りしてる奴いたわ

だがしかし、月を見て不吉な予感がする人は海外にもいたらしい。

 

スーパームーン

 

数年前に東ヨーロッパのリトアニア人2人とドイツ人と京都旅行をした時に、月見の名所として知られる広沢池に彼らを連れて行った。

多くの日本史の有名人がこの池に足を運び、湖面に映る月を見ては歌を詠んだ。

「やどしもつ月の光の大沢は いかにいつとも広沢の池」(西行法師)
「広沢の池に宿れる月影や 昔をてらす鏡なるらん」(後鳥羽法皇)
「名月や池をめぐりて夜もすがら」(松尾芭蕉)

 

広沢池

 

月を見て風流に歌を詠んだり、いまでも「月見」の風習があるように、日本人は昔から月を愛でていたという話を彼らにすると、ヨーロッパの母国では逆に、伝統的に月には悪いイメージがあったと言う。

特に満月が不吉でヤバい。
満月の光を浴びて人がオオカミ男に変身したり、吸血鬼や魔女が活発に動き出すという話が昔のヨーロッパにはあった。
もちろん現代ではそんな迷信を信じる人はまずいないし、月を見るのが好きな人もたくさんいる。

日本とヨーロッパでは、月に対する見方が正反対だねー。という話をしていると、ドイツ人が「そもそも日本で見る月はドイツとはちがう」と言いだす。
湿度の高い日本では月がぼんやり見えるけど、ドイツの月は輪郭(りんかく)がはっきりと見えて煌々(こうこう)と光っている。
彼の印象としては日本の月はやさしくて、ドイツの月は冷たくどこかオソロシイ。
これと関係あるかしらんけど、ドイツ語で月は男性名詞で、太陽は女性名詞だ。
このドイツ人の意見に、リトアニア人(ヨーロッパ北部にある国)も「言われてみれば確かに」と納得していた。

ドイツもリトアニアも日本に比べればはるかに寒い国だから、月の印象も冷たいものだったかもしれない。
日本で月の絵はよく黄色で描かれるけど、ヨーロッパでは銀や白色が多い。

 

とはいえヨーロッパでも、月の見方は時代によって変わっているはず。
ギリシャ神話に出てくる月の女神アルテミスは良く見られていたと思う。けど同時に、アルテミスは闇の女神ヘカテーとも考えられていたからダークな一面もある。
ちなみに太陽神アポロンと月の女神アルテミスは、ともにゼウスの子どもで双子という設定だ。

そういえば別の機会にリトアニア人、アメリカ人、インド人と一緒に伊勢神宮へ行った時、日本では太陽神アマテラスが女性で月の神ツクヨミは男性だと話すと、「マジで!逆だと思ってた」とビックリしていた。
太陽神と月の神の性別については、欧米では日本の反対が一般的かも。

 

月の女神アルテミスは狩猟の神でもある。

 

一緒に京都へ行ったリトアニア人の1人はいまは母国に戻っている。
最近、久々にメールして月の印象について聞いたら、こんな返事がきた。

「In Lithuania, in the past, moon was a sign for agriculture. What I mean,is that you can’t plant something when it’s a full moon because it affects the yield」

昔のリトアニアで月は農業のサインだった。つまり、満月の日には何も植えてはいけなかった。それは収穫に影響を及ぼすと考えられていたから。

満月の日に作物を植えると、収穫量が少なくなるという迷信があったのだろう。
炭坑節で「月が出た出た月が出た、ヨイヨイ」と陽気に歌われていた日本のお月様と違って、やっぱりヨーロッパで満月は不吉のシンボルだったらしい。
数百年前にスーパームーンが出ていたら、日本人なら筆と紙を持って外に行き、ヨーロッパ人なら家の中に閉じこもっていたかも。

 

 

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1 個のコメント

  • > 太陽神と月の神の性別については、欧米では日本の反対が一般的かも。

    それでは事実を列挙してみましょう。
    日本語では、太陽神アマテラスが女性、月の神ツクヨミは男性。
    ヨーロッパに目を転じてみると、
    フランス語では、太陽は le soleil(ル ソレイユ)で男性、月は la lune(ラ リュンヌ)で女性。なお「シルク・ド・ソレイユ」は「太陽のサーカス」ですね。フランス語はラテン系言語の一つであり、今でも学術用語で「太陽」のことをラテン語で「ソル」と言ったりします。
    ドイツ語では、Sonne(ゾネ/太陽)が女性で、Mond(モーント/月)が男性。ドイツ語はゲルマン系言語であり、明らかに、英語の Sun と Moon へ影響したことが分かります。ただし、現在では、英語の普通名詞には一般に性別がありません、すべて「中性名詞」だとも言えます。でも人間の職業や家畜・動物には、性別があることも。

    ヨーロッパの場合、おそらく、ゲルマン系やケルト系など北方の古い言語ではドイツ語と同様に、冬の寒さを和らげてくれる太陽が女性で、冷たく夜空に輝く月が男性。一方、地中海を中心に広まったラテン系の言語では、力強く輝く太陽が男性、優しく光を放つ月が女性なのでしょうね。
    日本の女性太陽神アマテラスは、子孫繁栄・五穀豊穣の願いと関係するのでしょうか。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。