音の文化・マナー:欧米人が日本人にドン引きした/されたこと

 

いま世界中の人が使っているハンカチの四角い形を決めたのは、18世紀のフランス革命で処刑された仏王妃のマリー・アントワネットだった。
てな記事を「ハンカチの日」に書いたのですよ。

【四角いハンカチ】決めたのは仏王妃マリーアントワネット

ハンカチといえば、日本の中学校で英語を教えていたアメリカ人(男性)から、日本人にドン引きされたという話を聞いたことがある。

その日、いつものように英語を使ったゲームをしていたら、鼻の奥がムズムズしてきた。
それで「みんな、ちょっと待ってくれ」と言って、いつものようにポケットからハンカチを取り出して音を立てて鼻をかむ。
そのあとハンカチを畳んでポケットにしまい、「さあ、続きをやろうか」と言うと、生徒が「あり得ないモノをみた…」という顔をしてこっちを見ている。
「あれ?何この空気?」と思ったら、一緒にいた日本人の先生が、

「はーい、これは文化やマナーの違いですよー。日本人はティッシュペーパーで鼻をかんで捨てますが、欧米人はハンカチでそれをしてまたポケットに入れるのです。汚いんじゃなくて、これは文化の違いですよー」

と説明して動揺する生徒を落ち着かせた。

「あのときオレは犯罪行為をしたのかと思ったよ」とアメリカ人が言うと、このとき一緒にいたイギリス人女性も同じような経験があるという。
彼女が語学学校で成人の日本人グループに英語を教えていたとき、ハンカチを取り出して「チーン!」とかんでポケットにしまって前を向くと、そこにはドン引きする生徒の顔があって「アレ?」と思ったという。

鼻水を取り除くのに、紙かハンカチを使うのかはマナーの違いで上下や優劣、どちらが優雅か汚いかという議論は無意味。
とはいってもボクもこれまでその場面を何回か見てきて、あるていどの耐性はできたけど、でもやっぱり欧米人が目の前で大きな音を立てて鼻をかみ、鼻水の付いたハンカチをそのままポケットにしまう様子を見ると「うわー」となる。
「あんなもん、汗と同じじゃないか」というアメリカ人もいたけど共感できんわ。

 

 

でもこのアメリカ人とイギリス人からすると、日本人が鼻水をすする方がハンカチとは比べられないほど「きったねー」と感じる。
ラーメンをすする「ズルズル」という音はいい。
母国のレストランでそれをしたら周囲の人はドン引きするし、家なら母親に怒られるようなマナー違反だけどここは日本。
そうやって音を立てて食べるのは日本人の礼儀と常識の範囲内にあるし、あの音も慣れたら何とも思わなくなる。

くわしくはこの記事を。

外国人は日本人の麺をすする音が嫌い。でもここまでする必要が?

 

でもイギリス人は日本人が鼻水をすする、あの「ずずずっ」という音を聞くと背筋がゾッとするという。
あの音に慣れるのは不可能で、なんであれが日本でマナー違反にならないのかが分からない。
生徒の日本人に聞くと、「いいこととは思わないけど、みんなの前で音を立てて鼻をかむのはもっと失礼な気がする」という。
自分とは反対の発想で驚いた。
もちろん紙で鼻をかむ日本人もいるけど、すする人の方が多くて困る。
この感想はアメリカ人もまったく同じ。

そのアメリカ人が企業で6人の会社員を相手に英語を教えていたとき、何度も鼻水をすする男性がいた。
そのうち、どうしてもその音に耐えられなくなる。
それで「これを英語でどう言うか、みんな文章を考えてくれ」と課題を出して自分はトイレに行く。
そしてトイレットペーパー1つをまるごと持ってきて、「鼻水ズズズ」の男性の前にドンっと置き、

「好きなだけ鼻をかんでくれ。これだけあれば十分だろう。欧米では人前で鼻をかむのは礼儀正しい行為だし、いまは英語のレッスン中だから西洋流でやろう。文化の違いを学ぶことも大事だ」

と言ったあと、欧米人の前で鼻をすするのは絶対にやめたほうがいいと念を押す。

人類のコミュニケーションの基本は「郷に入っては郷に従え」で、日本でなら麺類や鼻水を豪快にすすってもいい。と言いたいところなんだが、やっぱり「鼻水ズズズ」はやめたほうがいい。
鼻をすすると細菌の付いた鼻水が鼻の奥に入って、運がかなり悪いと、耳にまで到達して中耳炎をおこす可能性がある。
だから衛生的には「チーン」が最適解。
個人的にも鼻水をすするよりは、紙を使って音を立てて鼻をかんだほうがマナーとしてはいいと思う。

 

 

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1 個のコメント

  • 「鼻すすり音」や「麺すすり音」なんかと同じように、一昔前は日本では普通のコトだったけど、欧米人からはひどく嫌われていた習慣(?)に、食後の「げっぷ」があります。いやもう、昔の日本人は、オジサンだけでなくしばしばオバサンでも所構わず「げっぷ」をするので、それはそれは欧米人から呆れられたものでした。
    でも確か、昔の日本とか中国では「うまい食事を腹いっぱい食べることができた」という意味で、「げっぷ」をするのが食後のマナーとしてむしろ自然で良いこと(?)であるかのように扱われていた気がします。(「のらくろ」など昔のマンガを見ると、そのようなシーンがよく出てきます。)

    それが今では、日本人も人前で「げっぷ」をすることがめったに見られないですね。欧米人からの指摘が世の中に拡がったのかな?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。