日本↔韓国の侵略行為:歴史で“憎悪”を育て、政治があおる愚

 

1570年のきょう5月24日、越前の朝倉義景を討つため織田信長が3万の軍を率いて京都を出発。
この戦いの最中、義弟の浅井長政に裏切られて織田信長は朝倉・浅井の挟み撃ちにあい、死兆星が見えるほどの危機をむかえるものの、豊臣秀吉が鬼の働きをして信長は京都へ戻ることができた。
そんな大ピンチをクリアした信長も、1582年の「本能寺の変」は無理ゲー。
信長の天下統一の夢は家来の豊臣秀吉が実現し、鬼畜な主君に鍛えられた秀吉は朝鮮出兵を決意して、1592年きょう5月24日、小西行長らの軍が釜山に上陸した。
この文禄の役と1597年の慶長の役を合わせて朝鮮出兵といい、これは結局、98年に秀吉が亡くなって日本軍が撤退し終了する。

視点を変えると、韓国ではこの出兵を「侵略」と考えていて、さらに身分の下の者が上の者に対して行うというニュアンスで「倭乱」と表現されている。
ただ、「倭乱」という用語はあまりに自国中心の見方で不適切だという意見が韓国にもある。
それで「壬辰戦争」という表現が使われることもあるけど、これは激レアだ。

戦国時代を生き抜いた日本の武将に攻められ、大きな被害が出た韓国では、その怒りや恨みが後世へ語り継がれていく。
出兵からおよそ300年後、19世紀の朝鮮半島を旅したイギリス人女性イザベラ・バードの旅行記にはこうある。

三世紀にわたる[豊臣秀吉の朝鮮出兵以来の]憎悪をいだいている朝鮮人は日本人が大嫌いで、おもに清国人と取り引きしているからである。しかし貿易では清国人に凌駕されてはいるものの、朝鮮における日本人の立場は、日清戦争前ですら影響力のあるものであった。

「朝鮮紀行 イザベラバード (講談社学術文庫)」

 

同じ歴史の出来事でも、国が変われば見方も変わるのが世界のアタリマエ。
1950年の朝鮮戦争について韓国では北朝鮮が攻め込んだ戦争とみているが、北朝鮮では「祖国解放戦争」という正義の戦いになっている。
北朝鮮を支援し、アメリカ(美国)と戦った中国は「抗美援朝戦争」と呼ぶ。
韓国は北朝鮮や中国の見方を否定し、北朝鮮や中国も韓国の歴史認識を否定する。

そんな韓国の歴史観は独特で、朝鮮出兵を「倭乱」とよぶ高校生用の歴史教科書にはこう書いてある。

わが民族は身分の貴賤や老若男女を問わず、文化的な優越感に非常に満たされていて自発的な戦闘意識をもっていた。こうした精神力が国防能力に作用して倭軍を撃退させる力となった。

「韓国の歴史 (明石書店)」

 

民衆の精神力の影響もあったのだろうけど、実際には中国(明)軍が主体となって日本軍と戦い、最後は秀吉の死で日本が撤退して終わったのだから、中国さえ無視したこの記述はあまりに自国中心的すぎる。
それに日本の歴史教育なら、隣国に対する「文化的な優越感」を強調することもない。
おまけにいうとこの教科書には、「倭乱」の記述の直前に「朝鮮の先進的な文物」が日本に大きな影響を与えたと書いてある。にもかかわらず侵略してきたという書き方をして、日本の加害性を強調する。
「先進的な文物」については具体的には分からない。

 

秀吉の朝鮮出兵が韓国にとって“侵略”なら、1419年に朝鮮が対馬に攻め込んだ「応永の外寇」は日本にとって“侵略”になる。

朝鮮軍は道を分けて島を捜索し、船129隻を奪い、家1939戸を燃やし、この前後に114人を斬首、21人を捕虜とした。

応永の外寇

 

さらに13世紀に元・高麗の連合軍が二度にわたって攻め込んだ「元寇」も日本にとっては“侵略”だ。
高麗軍は日本の男は殺して、女には手の平に穴を開けて数珠つなぎにして連れて行ったと『高祖遺文録』に記録されている。

「百姓等ハ男ヲバ或ハ殺シ、或ハ生取ニシ、女ヲバ或ハ取集テ、手ヲトヲシテ船ニ結付、或ハ生取ニス」

こうした女性が奴隷同然の扱いを受けたことは間違いない。
また『八幡愚童訓』によると、高麗軍は日本人を見つけては虐殺した。(高麗ノ兵五百艘ハ壱岐・対馬ヨリ上リ、見ル者ヲバ打殺ス)

 

いまの韓国で、最も嫌われている日本人のひとりが豊臣秀吉だ。
3年前に大阪でG20首脳会議が行われたとき、「侵略された国の大統領が侵略者の城を背景に記念撮影することになる」と韓国メディアが批判した。

中央日報の記事(2019年05月24日)

壬辰倭乱を起こした豊臣秀吉の本拠地「大阪城」でG20首脳記念撮影?

それは400年以上前の話で、秀吉は大阪城にはほとんどいなかったのに…。
それに「大阪夏の陣」で家康に負けた秀吉の息子の豊臣秀頼は自殺に追い込まれ、秀頼の子である国松も処刑されたから、大阪城は豊臣家滅亡の象徴でもある。
オバマ米大統領は2016年に広島を訪問し、原爆死没者慰霊碑に献花して被爆者と握手をしとしたというのに。

同じ年、精密機器メーカーの工場を視察したムン大統領は、「壬辰倭乱で日本が最も欲しがったのは陶工だった」と言う。
ムン氏が「当時も今も日本は(韓国の)技術を狙っている」と主張することで、国内の反日感情をあおったことには批判があがったと朝日新聞の記事にある。(2019年8月13日)

文大統領の発言、反日あおりすぎ? 韓国内でも批判の声

それにしても、朝鮮出兵で日本が最も欲しがったのは朝鮮人陶工だった、という説は初耳。
もちろんムン大統領はその根拠を何も示していない。
これはただの反日扇動で、確かにあおりすぎ。

 

歴史を忘れちゃダメだけど、数百年のことを昨日のことのように恨みに思うこともいけない。
きょう5月24日は1915年に第一次世界大戦で、イタリアが三国同盟を破棄して連合国側で参戦した日でもある。
第一次世界大戦で受けた被害を持ち出して「侵略された国の大統領が侵略者の~」なんて言い出したら、ヨーロッパはめちゃくちゃになる。

日本人が「応永の外寇」や「元寇」を学ぶことは大事でも、この残酷面を強調して、韓国に憎悪や嫌悪感を抱かせるような歴史教育をするべきじゃない。
それは韓国の歴史教育でも同じで、さらにメディアや政治家が歴史を利用して反日をあおってはいけない。
過去が現在・未来の友好関係のジャマをしないよう配慮する必要がある。
という考え方が、隣国さんにはなかなか通じない。

 

 

日本 「目次」

韓国 「目次」

日本よ、これが韓国の伝統文化だ。国楽と雅楽の共通点・陶磁器

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。