【日本人は盗まない】ザビエルから現代ドイツ人の感想

 

8月15日の終戦記念日はタイムスリップすると、1534年にイグナチオ・デ・ロヨラらがキリスト教のイエズス会が結成した日だ。
歴史の授業で習うこのイエズス会は上智大学の設立母体でもある。
イエズス会と上智大学の設立
8月15日は1549年にそのメンバーの1人、フランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸した日だという。(8月15日
ザビエルは当時の日本人について、キリスト教で重罪とされる男色(男性の同性愛)がノープロブレムだったことに驚いた。
日本人についてのポジティブな印象としては、「彼らは親しみやすく、一般に善良で悪意がありません。驚くほど名誉心の強い人びとで、他の何ものよりも名誉を重んじます。」といったものがある。
これもその「名誉」に関係していると思うのだけど、日本では泥棒が少なく、盗みの悪習を日本人はとても憎んでいるとザビエルは記録した。
ヨーロッパ人に比べると戦国時代の日本人にはこんな美徳や節度があって、その傾向は現代で同じらしい。

 

以前日本に住んでいて、いまはブレーメンにいるドイツ人とこのまえ話す機会があった。
「元気?近ごろは何かあった?」とあいさつすると、「元気だよ。いまはネトフリで見つけた『異世界おじさん』にハマってるよ!」とか言って話に入るかと思ったら、彼は「最悪だ。先週、電動自動車を盗まれた」と言い出すから、予想外の展開に思わず固まる。
話を聞くと、毎週日曜日に弓道を習っている彼は、いつものように電動自転車でスポーツ施設まで行くと、それを施設の中に入れて弓道場のすぐ近くに停めておいた。
2時間後、弓道のレッスンが終わって着替えをして、自転車に乗ろうとしたら、そこにあるのは空気だけ。
マジかっ!とあたりを見回しても約7万円の愛車は無く、いつもと変わらない風景が広がっている。

 

そのドイツ人が通っている弓道場

 

カギはかけていなかったけど、建物の中に入れておけば大丈夫だと思っていた。結果的にはその考えが甘かったか、今日はひどく運がなかった。
ぼう然としている彼に、通りかかった弓道仲間が声をかけてきたから、「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!」とポルナレフ風に説明すると(いやしらんけど)、「最近は外国人が多くなって、このへんの治安も悪くなったからな。建物に入って物色するヤツがいたんだろ。ツイてなかったな」と言って肩を軽くたたく。
もちろんドイツ人のしわざかもしれないが、今日は歩いて帰ることが確定した。

 

「どうせダメだろうな~」と思いつつも警察へ行って聞いてみたら、やっぱりダメだった。
愛車の情報なんて皆無で、もう完全にあきらめがついた。
警察署に行ったら落とした財布が戻ってきたという、日本のミラクルをドイツで期待しても無理。
彼としては泥棒よりも、それまでの経験から、カギをかけなくても大丈夫と判断してしまった自分を小一時間ばかり説教したくなる気分だ。
それとブレーメンの治安についても、認識を変えないといけない。

こういう経験をすると、日本で過ごした日々はとても素晴らしかったと彼は改めて思うと言う。
彼が大学へ通っていた時、道の途中にある素晴らしい盆栽を見ることが楽しみだった。
それはその家の人が育てているモノで、簡単に盗めるほど無防備で置いてあったから、彼は小さな芸術を見てうれしく思う反面、いつか無くなるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
でも結局、彼がそこを最後に通る日まで、盆栽は当たり前のようにそこにあった。
ドイツだったら3日で無くなりそうなのに、日本では誰も手を付けようとしない。
ドイツにも日本にもはいろんな美点や欠点はあるけれど、生活で「盗み」の心配をほぼしないで済むのは、日本の最高にいいところの一つだとそのドイツ人は話す。
21世紀のヨーロッパ人も、16世紀のザビエルと言ってることは変わらない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。