【日本の氷室・かき氷】ドイツ人とロシア人が大好きな理由

 

日本人が一年のうちで、最もたくさんの水を使うのはこの時期だ。
ということで日本では8月1日を「水の日」にして、水の大切さについて改めて考えるようにしている。
この時期に水の消費が飛躍的に増える理由には、あの夏の定番スイーツがあるはず。

以前、日本に住んでいて、いまはブレーメンにいるドイツ人と先週の土曜日にスカイプで話をした。
「いまは日本では夏祭りの時期だよね~。なつかしいし、うらやましいにもほどがある」と言う彼に、祭で良かったことを聞くと、まず浴衣を着て外を歩けることだという。
ドイツに浴衣を持って帰ってきたけど、それを着る機会はいまのところ一度もない。

ほかにも彼は、日本の夏祭りでは花火とかき氷が大好きだった。
ドイツで花火を打ち上げることができるのは、新年の時だけだから夏に見ることはフツウならない。

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かき氷はドイツにはないという。
ドイツ人も暑い夏には冷たいものがほしくなるから、アイスクリームやイタリアのジェラートをよく食べる。
ドイツのどこかにあるかもしれないけど、彼はかき氷を見たことがない。
それで日本で初めて食べてみたら、おいしくてとても気に入ったと。

個人的に、夏と氷は世界中にあるから、かき氷なんてどこの国にもあるものだと思い込んでいたが、どうやらドイツにはないらしい。
ネットで調べてみると、日本人が多く住むフランクフルトで、日本人がかき氷店をオープンしている。やっぱりこれはドイツの文化ではない。

 

このあと、日本に住むロシア人と会う機会があったんで話を聞いてみた。
すると彼女にも同じように、かき氷はロシアでは未知の食べ物で、日本で初めて見た時は氷をけずって食べるという発想に驚いたと言う。
ロシアでは夏になると、アイスクリームや冷たい飲み物を楽しむのが一般的で、「水を凍らせたものに、味を付けてもオイシイわけがない」と思い込んでいて、そのロシア人はかき氷に手を伸ばそうとしなかった。
でも、夏の超あっつい日、祭の屋台でかき氷を試しに買って口に入れたら、ビックリするほど美味しかった。
味もフワフワの食感もすごく良くて、想像していたのとまったく違う。
それでいまでは、かき氷が夏の楽しみになってしまった。

その人が住んでいたロシアのサンクト・ペテルブルクでは、一年のうちでいちばん暑い7月でも最高気温は25度ぐらい、最低気温も13度ほどとかなり低い。
しかも、日本より湿気が少ないからすごく快適らしい。
日本人ならきっと肌寒さを感じるレベル。

 

水無月

 

そのロシア人は日本文化に興味があって、それに関するユーチューブ動画をよく見る。
それで最近、「これはとても日本らしくて興味深い」と感じたのは、白のういろうに小豆を乗せた和菓子の「水無月」だ。

まだ氷を作る技術がなかったころ、日本では冬にできた氷を集めて「氷室」(ひむろ)と呼ばれる洞窟や穴などに保管していた。
そんな氷や雪を貯蔵する施設が氷室で、まさに天然の冷蔵庫。
むかし氷室があったところは、現在でも氷室という地名になっていることもある。

日本では夏が始まるころになると、氷室から取り出した氷を食べる「氷室の節会(せちえ)」が行われていた。
これは納涼の風習で、赤い小豆には邪鬼祓いの意味があったから、健康を願う意味もあったはず。
夏に氷を食べるぜい沢が許されたのは天皇や将軍、それと限られた高貴な人たちだけ。
庶民にとって氷室の氷なんて手の届かない高級品だったから、氷をイメージした水無月を作って食べるようになったという。
水無月が三角形なのはこの氷をイメージしたとか、四角の半分に切って「半年」を意味するという説がある。

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イギリスの氷室

 

ユーチューブ動画を見て、日本には「氷室の節会」という宮中行事があったことや、庶民が貴族のマネをして氷を模した「水無月」を食べるようになったということを知って、ロシア人はこの夏の文化をとても面白く感じた。
ロシアで氷を貴重品と考えたり、食べたりする習慣は聞いたことないという。
「氷をけずって食べるなんて!」と初めて見た時は驚いたけど、氷室や水無月の話を聞いてそのロシア人には謎が解けたし、日本文化の深さや面白さを知った。

 

イギリスのスラッシュ

 

英語版ウィキベテアの「Shaved ice」を見ると、ヨーロッパでもスペイン、イタリア、フランス、イギリスに氷を使った冷たい飲み物や食べ物がある。
ただ上のスラッシュみたいに、日本のかき氷というよりはスムージーやシャーベットに近いようだ。

ロシアは冷房が必要ないぐらい夏でも涼しいから、氷を食べる発想なんて生まれなかったのだとロシア人は推測する。
ロシアに氷室なんてないんだろうな~と思ったら、「どんな必要があるの?」と聞かれて撃沈。ですよねー。
ドイツも基本的に日本より寒くて湿度も低く、夏でも冷房がいらないぐらい涼しいから、氷を食べる必要性や発想なんてなかったのだろう。
ロシア人の話では、蒸し暑い日本で食べるからかき氷は特においしい。これをロシアで食べたいかと聞かれると、チョット分からない。
日本人にとっても、肌寒い時期のかき氷はあまり魅力的ではない。
ということでかき氷や氷室は、日本のムシムシ・ジメジメした気候が育てた夏の文化だ。

 

後日談

このまえモンゴル人と祭に行った時に聞いたら、氷を食べるなんて発想はモンゴルにも無いとのこと。
これって実はわりと少ない?

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。