3月19のいま、日本はお彼岸の最中だ。
春分の日をはさんだ前後3日の7日間が春のお彼岸で、この期間中にお墓参りに行ったり、仏壇にぼた餅やおはぎを供えしてご先祖さまを供養する。
この文化は中国やインドにはない、日本独自のもの。
秋のお彼岸のときには「おはぎ」をお供えするんだが、これがぼた餅とどう違うのかというと、実は同じもの。
蒸したもち米をあんこで包んだお菓子を春は「ぼたもち(牡丹餅)」、秋には「御萩(おはぎ)」と言うだけのこと。
呼び方はどうあれ、ぼたもち(おはぎ)がお彼岸のお供え物であることに変わりはない。
このへんについては他にも説があるから、くわしいことは「ぼたもち」を見てくれ。
ちなみにぼたもちには、夏は「夜船」、冬「北窓」と四季に応じた呼び方がある。
おはぎ(=ぼたもち=夜船=北窓)
そんな感じに「お彼岸のとき、日本ではぼたもちを食べますよ~」とSNSで発信したところ、韓国の人から「韓国では、邪気を払うために小豆でお粥を作ります。」というメッセージをもった。
日本のぼたもちと、韓国の小豆(あずき)のお粥には何か関係があるのだろうか?
実は大あり。
ではこれから日本と韓国と、それと中国に共通する「魔除け文化」を書いていこう。
大きい豆が「ダイズ」で、小さい豆はショウズ。ではなくて「アズキ」と呼ばれる。
縄文時代の遺跡からも発掘されている小豆は古代から日本にあった食べ物で、アズキとは昔の日本語(大和言葉)と考えられている。
*あずきは中国から伝わったとされていたけど、DNAを調べた結果、中国のあずきとは遺伝的に別系統で進化したようだという報告がある。
そんなことで、日本語を学ぶアメリカ人が「大豆をダイズと読むのは簡単だけど、小豆を見てもなかなか「あずき」が出てこない」と文句を言う。
韓国では冬至に、あずきをのお粥「パッチュク」を食べる風習がある。
日本でも小正月の1月15日に、あずきのお粥を食べる風習がある。
日韓ではあずきの赤色には魔除けの効果があると信じられていて、邪気や厄を払って健康を願う意味であずきを食べる文化があるのだ。
お彼岸でご先祖さまに、ぼたもち(おはぎ)をお供えする理由もこれと同じ。
東海農政局 (農林水産省)のホームページにはこんな説明がある。
あずきは古来から人々の生活と密接に結びついた豆で、わが国や中国、朝鮮ではあずきの赤色に魔除けなどの神秘的な力があると信じられ、行事や儀式などに供されてきました。
ある韓国人が心霊スポットに行くとき、死ぬほどビビッていたら、魔除けとしてあずきの入った袋を持って行くよう勧められという話を聞いたことがある。
あの赤には「神秘的な力がある」という考え方(迷信?)があるからだ。
韓国の小豆粥「パッチュク」
前に、あんこを英語で何というのかアメリカ人にきいたら、paste(ペースト状)のred bean(あずき)だから「red bean paste」でいいと言う。
それを聞いて「あんこって黒色じゃね?」と思ってしまったが、ペースト前の小豆はたしかに赤い。
このことばはひょっとしたら、中国語の「紅豆(あずき)」を英語訳したものかも。
この赤を見て昔の日本人や韓国人は、あずきには魔除けなどの神秘的な力があると考えた。
そんな発想をうんだのは中国。
中国最古の薬物書である「神農本草経」には、あずきの煮汁が解毒剤として使われたと書いてある。
これはそのままパッチュクでは?
日本でもあずきを薬として食していたという。
古代の中国人はあずきの赤を見て、太陽、火、血など「生命」を象徴していると考えた。そして呪術的な力を持った特別な食材として、あずきが使われるようになったという。
このへんは井村屋のホームページ「あずきの起源」にある。
この発想が農水省HPにあった「行事や儀式などに供されてきました」につながるのだろう。
「あずきの赤には神秘的・呪術的な力があり、魔除けの効果がある」という考え方が中国から日本や韓国に伝わって、それぞれで独自の文化となったのだ。
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>大きい豆が「ダイズ」で、小さい豆はショウズ。ではなくて「アズキ」と呼ばれる。
Wikipediaによると、読みは「ショウズ」としても間違いではないみたいですよ。
それから、赤飯を炊くとき、昔は赤米という専用の米を使ったようですが、今では小豆を入れて色付けするか、もしくは食紅を使う地方もあるみたいですね。赤飯も、お祝いの意味と魔除けの意味があるのでしょう。
「ショウズ」でも間違いではありせん。
でも、一般的には使いません。
外国人が覚えるならアズキがいいでしょう。