着物を着る外国人:京都人とアメリカ人の問題意識の違い

 

夏の京都を旅行すると、こんな浴衣姿の観光客をよく見る。

 

 

やっぱり日本の伝統衣装は古都の風情によく合う。
それにSNSにも映えるから、外国人もよくこんな格好で京都観光をしている。
でも、京都をこよなく愛する京都人からすると、TPOは超大事で、京都への敬意を欠いた振る舞いを見ると不快になるらしい。
今月2月、10人ほどの金髪の白人女性が夏っぽいデザインの浴衣(か薄い着物)を着て、祇園を歩いているのを見たある京都人がその様子を写真に撮って、京都を愛する人たちの集まるSNSグループにアップして「どうなんですかねコレは?」と問題提起した。

その人の感覚や考え方からすると、外国人が着物を着て日本文化を体験することは良い。でも、冬に浴衣を着るのは季節感を無視しているし、いまの時期の京の街にも合っていない。
文面からするとこの京都人さんは、場所が祇園白川だったこともあって、この集団が冬の京都の景観や雰囲気を壊していると感じてレンタル着物店と外国人に不満らしい。

寄せられたコメントを見ると、反応は賛否両論に分かれた。

 

〇投稿主と同じように不快な人たち

・着物は奥深いものです。
季節感を大事にして、その人の体型にあった着せ方、帯の結び方をしないといけません。
・寝間着で歩かれたら日本文化が壊される…
・もう少しマシな着物と着付があるでしょう。
・ペラペラ化繊の浴衣風キモノですよね。
・この季節にこんな薄い着物だけとは。
季節にあった着方を教える日本人はいないの?

 

〇投稿主に批判的な人たち

・寒そうですけど、本人が喜んでいればそれでいいのでは?
・レンタル着物は使うたびに洗わないといけませんし、“ペラペラ”でも仕方ないかと。
それに外国人は派手なデザインを好きな人が多いと思います。
・“マシな着物”というのは正絹の着物のことでしょうか?
レンタルと着付け代を予算内でおさえないといけないでしょうし、これで充分です。
・着物の奥深さを求めたら、着付け、草履、所作などキリがありません。
海外で民族衣装を着る日本人も細かいことは考えないでしょう。
・正絹の着物をクリーニングするなら、最低でも金額は5千円、期間は1週間はかかる。
そんな物を安くレンタルできるわけない。

レンタル着物店に勤めていたという人の話では、外国人は好みや考えがハッキリしていて、設定した金額の枠内で自分の納得したものを着る傾向が強い。
こちらが季節に合った柄や着物をススメても、その外国人の感覚と合わないと無慈悲に却下されるし、外がどんなに寒くても、追加料金が必要な物はイラナイと言う。

まえに京都で外国人が浴衣&スニーカーで、清水寺のあたりを歩いているを見たことがあるし、個人的にこの人の話はすごく納得。
外国人観光客ならきっと予算が最上位にあって、その少し下に自分の好みがきて、季節感や日本文化のマナーはかなり下にある。
外国人が歩きやすさを重視したら、日本の常識を無視してスニーカーを選ぶのは仕方ない。
でも、さすがに左前の外国人を見た時には、それを見逃した(か許した)店に腹が立った。

 

さて今回と同じように若い白人女性で、有名モデルのカーリー・クロスさんが着物を着たらアメリカではどうなったか?

 

 

上のように着物を着て、芸者のような髪型をした写真を2017年に、ファッション誌『ヴォーグ』に載せたところ、「日本文化を盗んだ!」、「これは人種差別だ!」といった批判がアメリカで噴出。
それが無視できるレベルを超えたため、カーリー・クロスさんは日本文化を盗用したと認めて、心から申し訳ないと公式に謝罪した。

こんな感じにアメリカ社会では、白人が日本の着物やインドのサリーなど別の文化圏の衣装を着ると、「文化盗用」になるからよく炎上する。
でも、このアメリカ人の問題意識が日本人にはほとんど無い。

日本に関する「文化の盗用」と見なされる事柄に対する批判も日本人側からでは無く、外国の個人や団体からの批判であることが多い。

文化の盗用

 

“多い”とウィキベテアには書いてあるけど、外国人が日本の伝統的な衣装や飾りを身につけているを見て、「文化盗用だ!」「差別だ!」と怒り出す日本人なんているか?
上の一件についても、これで文化を盗まれたり差別されたのは日本人のはずなのに、日本では写真を見てうれしく思った人がほとんどだ。
そもそも問題になるポイントや、謝罪する理由がわからない人が多い。

でも、すべてがそうではないが、アメリカ人の価値観・考え方からするとこれはNG。
「文化盗用」について以前は、それによって利益を得る行為に対して批判が飛んできたけど、最近はその適用範囲が広がって、個人が趣味でSNSに写真を載せても「文化を盗むな!」とたたかれることが増えてきたように思う。

 

話を京都人に戻すと、批判ポイントは「なんで冬に浴衣を?」ということで、外国人が浴衣や着物を着ることを問題視する人は一人もいなかった。
これが“差別行為”だったら、外国人に着物を貸す店はその悪事を助長していることになる。
でもアメリカ人からしたら、季節感なんてどうでもいい。
批判が上がるとしたら、白人が着物を着るという“文化盗用罪”に対してのはず。

 

 

アメリカ 「目次」

日本人への人種差別?ドイツ人が「スシの国」と呼び批判殺到

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浜ちゃんの”黒メーク騒動”。日本と欧米の人種差別意識の違い。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。