日本をサムライの国、ニンジャの国、サクラの国と呼ぶ外国人はいたけれど、「スシの国」はどうなのか?
先日、ドイツのサッカーチーム・ハノーファーに所属する室屋 成(むろや せい)選手が、チャンスの場面でゴールをきめきれず。
この試合を中継していた番組で解説者のダールマン氏はこう言う。
「これが決まっていれば、彼のハノーファーでの初ゴールになるはずでした。彼は自身の最後のゴールをスシの国(=日本)で決めています」
するとSNS上で「人種差別は容認できない」といった書き込みが殺到。
隣国のイタリアメディアも「人種差別の嵐」と報じるほどの騒ぎになった。
日本を「スシの国」と表現することが人種差別行為になるのか?
騒ぎを受けてダールマン氏は、「私が日本のことを寿司の国と見なせば、それは人種差別になるのか?そんなことはあり得ないだろう?」と言って人種差別を否定し、ハノーファーもこの発言を問題視せず。
でも、無視できないほどの抗議がきたことで、テレビ局はダールマン氏を降板させることにした。
さて、“差別された”の日本人の反応をみてみると、これを差別発言とみる人は皆無と言っていい。
・日本人は誰も差別だと思ってない
・これは別に何とも思わないな
・全然馬鹿にされてる気はしないけどね
・ポテトの国に、パスタの国、ハンバーガーの国はいかんのか?
・どの国も言葉狩り酷いな
・寿司の国ってドイツじゃ悪い意味の言い回しだったりするのかな?
・寿司って差別用語だったのか
個人的にも、ゴールに失敗したうえでのこの発言は「人種差別だっ!」と抗議するほどのことではない。
『あのスシ野郎、外しやがった』だったらムカつくけど、これでも差別発言とまでは思わない。
「イルカ(クジラ)を食べる民族」ならアウト。
ドイツを『ビールの国』『ソーセージの国』と言うと、「この人種差別主義者めっ」と非難される世の中もなんか息苦しい。
この前ドイツ人と話す機会があったから、この『スシの国発言』についてきいてみたところ、「『ライジングサンの国』だったらよかったのに、スシの国はダメだよ~」とのこと。
確かに不適切な発言だったけど、日本人に対する人種差別とまでは思わない。解説者が番組を降板させられたのは、この発言よりも、もともと局が彼を切りたいと思っていて、良い口実になっただけかもしれないと彼はみる。
となるとある意味、大事な場面でダールマン氏はオウンゴールをきめてしまったことになる。
それに、いまはタイミングが悪かったと彼は指摘する。
最近はコロナの感染拡大のせいで、ヨーロッパ各国でロックダウンが実施されていて、店は閉まっているから飲みに行くことも、友人と自由に遊ぶこともできない状態が続いている。
そうしたストレスから人種差別意識が出てきて、ヨーロッパではアジア人を敵視する人が増えている。
それはネットの書き込みを見ればわかる。
先月、フランスのパリで日本人が塩酸をかけられた事件も、人種差別によるものとこのドイツ人は言う。
現地の日本人もそう言っていたし、それが正解だろう。
コロナ前ならまだよかった。
人種差別が特に問題視されているなかでの「スシ国発言」はタイミングとしては最悪。
それにこのことばには日本人への蔑視や、日本を見下す感じがあるから、テレビ番組にはある程度の“けじめ”をつける必要があったかもしれないと話す。
ちなみに外国人がドイツを『ソーセージの国』と呼んだらどう思うかきくと、それが友人なら問題ないけれど、初対面の人だったら、怒ることはなくても不愉快には思うし、付き合いたいとは思わないらしい。
聞いといてよかった。
以下、余談
日本人なら「スシの国」よりも、ベルリンにある慰安婦像に対して怒っているのだが、ドイツ人はあれをどう思っているのかきいてみた。
あの像にはプレートが設置されていて、日本が数十万人の女性を強制連行した、性奴隷にしたといった歴史わい曲の説明文がある。
こっちのほうが大問題だ。
彼ははじめこの問題をまったく知らず、きょねんボクからきいて「マジで?」と驚く。
その後、像について調べてみたところ、プレートに書いてある内容はだいたい正しくて、日本軍が残酷なことをしたのは間違いないと知った。(おいっ)
ドイツではナチスに対する反省もあって戦争犯罪に厳しいから、あの像は問題ないと言う。
日本が好きで、慰安婦問題については『白紙』の状態だった外国人が、いまではこんな誤解に染まっている。
『スシの国発言』なんてもはやどーでもいい。
海外にあふれるフェイクニュースに、日本は国としてしっかり対応しないと。
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> 人種差別が特に問題視されているなかでの「スシ国発言」はタイミングとしては最悪。
> それにこのことばには日本人への蔑視や、日本を見下す感じがあるから、テレビ番組にはある程度の“けじめ”をつける必要があったかもしれないと話す。
うーん、難しい問題ですが、この問題に関して以下の2点のことが言えると思います。
1.一般に欧米では、特定の国や民族のことを「食べ物」に例えるのは、(日本人の感覚に比べて)相手を見下したような感覚があるらしい。文字通り「食い物にする」という感覚なのかな?(思うに、多民族との紛争関係で征服・被征服の歴史を繰り返してきたこともその理由の一端なのかも?)
2.中でも特に「スシ」については、特に日本人だけに対する差別語と言うより、最近の英語のスラングで「てめぇ、スシにしてやるぞ!(Make you sushi!)」という相手を罵るセリフに使われることが、特にここ20年くらいで増えてきています。ハリウッドのマフィア映画とか、犯罪アクション映画とか、その表現が時々出てきますよ。(具体的には今ちょっと思い出せないですが。)
日本人にはあまり知られていない、この辺りの事情も関係しているんじゃないですかね。
向こうはフランス人に対してカエル喰い、イギリス人にライミー、ドイツ人にクラウト等々と国を代表する食べ物で罵声を浴びせることがあるので。食べ物で表すのが一番わかり易いし。両大戦時なんて「ナッツ」も含めてその応酬は当たり前だったので。