食べ物の始まりの物語 古代の日本人はこう考えた 

 

ことし1月、ミス日本グランプリを受賞した女性が、じつは不倫していたことが発覚して「ミス日本」を辞退する騒ぎがあった。
マレーシアでも先日、美人コンテストで優勝した女性が、海外で肌を大胆に露出した姿で男性と踊っていたことが分かり(というか自分でSNSに公開した)、優勝を取り消された。

この美人コンテストを開催したマレーシアの文化協会は、優勝者は高潔な精神を持つ伝説の女性『フミノドゥン』を象徴する人物だから、今回の行動はそれにふさわしくないと激オコ。
フミノドゥンはボルネオ島に伝わる神話に出てくる。
あるとき、作物が取れなくなって人びとは飢えに苦しみ、このままでは全滅するしかないような危機的状況におちいった。
しかし、この問題を解決する方法がたった一つだけあり、それは若い娘を生贄(いけにえ)にすることだった。
話を聞いたフミノドゥンは自分が犠牲になり、人びとを救うことを決める。
命を捧げる前、彼女は父親にこんな話をした。

「私の体(死体)から、さまざまな種類の食べ物が生まれるでしょう。私の肉は米、頭はココナッツ、骨はタピオカ、足のつま先はショウガ、歯はトウモロコシ、そして私の膝はヤムイモになるでしょう。それによって、人びとが飢えに苦しむことは無くなります。」

そして彼女が犠牲になると、言ったとおりになって、豊かな収穫がもたらされたという。(Huminodun

 

このように、神や特別な人物が死んだ後、体から作物が生まれるという話は世界のいろいろな場所にあり、ドイツの民俗学者が「ハイヌウェレ型神話」と呼んだ。
この「ハイヌウェレ」とは、インドネシアの島に伝わる神話に出てくる女性(女神)の名前。
彼女には文字どおり“汚いチート能力”があって、お尻からサンゴや磁器といった宝物を出すことができた。言ってみれば、貴重品をウ◯チとして排せつしていたのだ。
しかし、村人たちはこの不思議な能力を気味悪がって、ハイヌウェレを生き埋めにしてしまう。
父親は彼女の死体を掘り出した後、死体をバラバラにしてあちこちに埋めると、そこから新種のイモ(ヤム芋やタロイモ)が生まれ、人びとはそれを食べて暮らすようになったという。
めでたしめでたし(か?)

 

おそろしく乱暴で強い神・スサノオ

 

もちろん、これは大昔の人間が地中にイモがあることを不思議に思い、こんなストーリーを作ったのだろう。
日本の神話にも、食べ物の起源についての話(ハイヌウェレ型神話)があって、古代の日本人の発想が下品&直球ストレートで面白い。
例えば『古事記』には、高天原を追放されたスサノオに、食物神のオオゲツヒメが食べ物を出す話がある。

困っている人に食事を提供するだけなら美談なんだが、オオゲツヒメは鼻や口、お尻などから食材を出して、それをスサノオに差し出していたのだ。
大便のように食べ物を生み出す様子を見てスサノオは激怒し、その場でオオゲツヒメを瞬殺してしまう。
たしかに、こんなオモテナシはいらない。
オオゲツヒメの死体からは、稲、粟、小豆、麦、大豆の五穀と蚕(カイコ)が生まれたという。

また、『日本書紀』にはこんな話がある。

ある日、天照大神(アマテラス)の指示を受けて、月夜見尊(ツクヨミ)がウケモチという神を訪れた。
するとウケモチは、口から米、魚、動物を吐き出し、「遠慮はいりません。どうぞお召し上がりください」とツクヨミをもてなす。
しかし、ツクヨミは「そんな汚いモン、誰が食えるか!」とやっぱり激怒し、ウケモチを斬り殺してしまう。
それを聞いたアマテラスは怒り、もうおまえとは会いたくないと言ったことから、太陽と月は顔を合わせないように昼と夜とに分かれて出るようになった。
ウケモチの死体からは、牛や馬、粟、蚕、稗(ひえ)、稲、麦・大豆・小豆が生まれ、それを知ったアマテラスはよろこび、これが日本人の食べ物となった。
日本神話における食物起源神話

 

食べ物のはじまりを「神」に求める発想は世界中にある。
しかし、今回出てきたハイヌウェレ、オオゲツヒメ、ウケモチは現代の価値観からするとかなり下品で、フミノドゥンの自己犠牲の精神は悲しく美しい。
前者の3人をもとにした美人コンテストが開催されることはない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。