【インドネシアの呪術文化】呪いをかけられた女性の体験談

 

日本に3年ほどいて、いまは母国インドネシアのカリマンタン島で暮らす知人(20代の女性)がいて、前に話をしたとき、彼女が以前、呪いをかけられたという興味深い話を聞いた。
なので今回は、インドネシアの呪術文化の一例を紹介しようと思う。
はじめに言っておくけど、これはすべて彼女から聞いた話で、信じるかどうかはあなた次第。

 

でもその前にインドネシアの基本情報を知っておこう。

面積:約189万平方キロメートル(日本の約5倍)
人口:約2.55億人(2015年)
首都:ジャカルタ(人口1,017万人:2015年)
民族:大半がマレー系(ジャワ,スンダ等約300種族)
言語:インドネシア語
宗教:イスラム教 87.21%,キリスト教 9.87%(プロテスタント 6.96%,カトリック 2.91%),ヒンズー教 1.69%,仏教 0.72%,儒教 0.05%,その他 0.50%(2016年)

以上の数字はインドネシア共和国(Republic of Indonesia) 基礎データから。

 

知人のいるカリマンタン島とはインドネシア語の呼び方で、英語ではボルネオ島(Borneo)と言う。
グリーンランド島、ニューギニア島に次ぐ、世界三位の面積を誇るカリマンタン島は、日本の約2倍ととんでもなくデカいのだ。

 

 

インドネシア・マレーシア・ブルネイの3か国の領土がカリマンタン島にある。
そんな三国志のような島は世界でここだけだ。

インドネシアには、恨みを持った人が黒魔術師(ブラックマジシャン)に頼んで、相手に呪いをかけることがよくある。
それ自体はめずらしいことでもないけど、呪いに失敗した呪術師を襲うという事件はめったにないだろう。

じゃかるた新聞の記事(2014/05/21)

呪術師宅に放火 黒魔術失敗恨む

東ジャワ州で、呪術師の家に火をつけた疑いで4人が逮捕された。
こういう事件はレアだとしても、呪いや魔法をかけることはインドネシアの文化としてある。
今回とは別のインドネシア人から、フラれたことを逆恨みした女が黒魔術師に頼んで、その男の性器を切り取ったという話を聞いた。
繰り返すけれど、今回の内容を信じるかどうかは自分で決めてほしい。

では早速、その具体例を紹介しよう。

 

2010年のある日、知人の体調が突然おかしくなった。
夕方6時ごろになると身体が急に重くなって、歩くこともできなくなる。
それでベッドで横になっていると身体の半分が熱くなって、もう半分は寒くなってたまらない。身体を起こすのも困難な状態だけど、目だけはハッキリと開けることができる。
すると夜中、幽霊のような人影が見えた。

でも朝になると、「あれは夢ですか?」と不思議に思うほど何ともなく、食事や外出も、友達や家族と話すことも普通にできる。
でもまた6時ごろなると身体が重くなり、ベッドの上で寝ていると半身が熱くなって…、でも朝になるとまた完全復活。
医者に診てもらっても身体に異常はみられず、原因がさっぱりわからない。
となるとこれは、誰かに呪いをかけられていること以外には考えられない。
実際、カリマンタン島では午後6時から朝4時までの間が黒魔術の働く時間帯で、お化けが積極的に活動をしているとされる。

自分に黒魔法がかけられている!
それがわかったら白魔法の効果に頼って、呪いを解いてもらうしかない。
カリマンタン島の「黒魔術師 vs 白魔術師」のリアル「呪術回線」の始まりだ。
知人に紹介してもらった、力があると評判の白魔術師は30代の女性で、ふだんはどこかのお店で働いている。だから呪いを解くのはサイドビジネスだ。でも腕は確からしい。
呪いを解く儀式をおこなうのはその白魔術師の自宅で、これから3日間はこの家から出ないように言われる。
返事は当然、ハイかイエスしかない。

昼間は普通にご飯を食べたりテレビを見たりして、リラックスして過ごし、6時になったら魔術師が儀式を行う。
魔術師は、インドネシアやマレーシアにある独特な形をした短剣・クリスを机の上に置いて、その霊力を利用して相手の黒魔法を無効化する儀式を行った。

武器であり霊的なものでもあるクリスは、幸運ないし悪運を持つ存在と考えられる。
2005年、インドネシアのクリスはユネスコの無形文化遺産(工芸)に登録された。

クリス(短剣)

呪い解除の儀式のときには幽霊(精霊?)を使うらしく、本人は怖くて一度もその様子を見たことはない。
そのときは別室で横になっていたという。

 

3日後、「すべて終わった。これでもうあなたは大丈夫」と告げられた。
相手の黒魔術師が使役する霊(使い魔)を倒したからこれで安心。自宅に戻っていいという許可が出る。
白魔術師は儀式で使ったクリスを満月に照らしてから川の水で洗った。それでクリスの霊力を保つことができるという。それなら怖くないから、その儀式は見たらしい。

その後、半信半疑で家に戻ってみると、6時になっても身体に異変は起こらないし、夜はぐっすり寝ることができる。そして翌朝、快適に起きることができた。
日常が完全に戻った。

白魔術師から、「あなたに呪いを依頼した相手に呪いをかけるか?」と言われたものの、それは断った。
報復として呪い返す人もなかにはいて、その魔術師は人形に針を刺すと、相手のその部位に痛みを感じさせる魔法ができるらしい。
でも怖いからそれはノーサンキュー。
カリマンタン島には、相手の体内に虫や釘を入れる魔法の使い手がいるという噂もあるとか。

 

今回、呪いをかけられて、儀式で解除してもらったインドネシア人はキリスト教の信者だから、本来であれば、呪術を信じて呪術師に頼るというのは良くはない。
でも実際に、特定の時間帯になると歩けなくなって熱が出たのだから、これはもう魔法を信じて呪術師にお願いするしかない。

インドネシア人と知り合ったら、ぜひ魔法の話をきいてみてほしい。
体験談かどうかは分からないけど、そういう話の1つや2つは知っていると思う。
呪術はインドネシアの文化のひとつだから。

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。