明治日本はヨーロッパの「良いとこ取り」英の海軍、独の憲法など

 

はじめの一言

「日本人は夢想し、遅滞させ、万事当てにならないミョウニチ(明日)へ先送りしながら、突然嵐のごとく果敢に行動し達成することで外国人を驚かせます。

(シドモア日本紀行 講談社学術文庫)」

 

 

今回の内容

・日本は今世紀最大の謎
・明治のむずかしさ
・明治日本は、龍だ!

 

・日本は今世紀最大の謎

日本は今世紀最大の謎であり、最も不可解で矛盾に満ちた民族です

「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」

 

アメリカ人の女性シドモアは明治の日本をこう表現している。
明治の日本は先進国のヨーロッパからいろいろなことを学んで取り入れて、大きく国を変えた。

この時代の日本にいたシドモアは、明治時代の日本の変化を「魔術的指揮棒の一振りで完成させた」と目を丸くしている。

日本の陸海軍の創設、警察機構、行政組織は諸外国の最高例を範とし、また教育機関は完璧で、米国、英国、ドイツも制度から得た賞賛すべき最高結合体となりました。

さらには郵便制度、灯台、電信、鉄道、病院も西洋と同じ方式を採用しています。

すべてこれらは、緩慢な成長、遅鈍な発達、悠長な必要性の所産ではなく、ほとんど自発的に日本帝国の魔術的指揮棒の一振りで完成させたのです

「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」

 

これだけではない。

民法や刑法はフランスのものを参考にし、憲法はドイツを参考にした。
海軍は英国から学び、陸軍はフランス式だった。
それも、普仏戦争でのドイツの勝利を見てからは、「ドイツに学ぶべき」と陸軍をドイツ式に変えている。

すごいぞ、明治ジャパン!

 

 

数あるヨーロッパの国をよくみて、その「いいとこ」をちゃ~んと理解する。
そして、「どこの国から何を学ぶのか?」ということを的確に判断して、日本にとって良いところを選んで取り入れた。

平成の日本人がみても、よくこれだけのことをができたと不思議に思うんじゃないかな?
まさに、「魔術的指揮棒の一振りで完成させた」という感じじゃないですか!

 

チェンバレンという外国人も明治維新後の日本を見て感嘆している。

日本がかくも多くの新思想と新制度をまるごと呑みこむ能力を、外国人たちはしばしば呆然として驚き眺めるのみであった。

「逝きし日の面影 渡辺 京二(平凡社)」

 

・明治のむずかしさ

でも、実際には、一つの国が「魔術」で発展するわけがない。
どんなマジックにも、タネや仕掛けがある。

何もないところから鳩が飛び出しきても、その仕掛けがわかっていて、そのとおりにやっていれば、当然、鳩は飛び出す。
マジシャンにしてみれば、その手順どおりやって鳩が出なかったら、その方が不思議なはず。

 

明治の日本が飛躍した理由は、魔法や奇跡でもない。
その最大の要因は、日本人の「学習能力の高さ」でしょ!

日本を発展させるためには、先進国のヨーロッパから学ばないと!
と思っても、これはすっごく大変。
ヨーロッパには、国がたくさんあるから。

 

数あるヨーロッパの国の中から、「どこの国から、何を学ぶか」ということを見極めることが、とても大事になってくる。

これは、奈良・平安時代に中国(唐)に学んだときとは違う。
あのときは、唐の1国だけから学べばよかった。
明治時代には、「どこから何を学べばいいか」という選択をする必要があった。
これは、遣唐使のときにはなかった難しさだ。

 

結果、明治の日本はヨーロッパの「良いとこどり」に成功した。

民法や刑法については、フランス式のものを採用する。
憲法はドイツのものを参考にした。
海軍は英国から学び、陸軍はフランス式だった。

 

明治時代に日本がつくった大和ホテル
大連(中国)

 

・明治日本は、龍だ!

こう考えてみたら、明治の日本はこんな感じにみえる。

「ドイツ・イギリス・フランス・アメリカなど、いろいろな要素からできている集合体」

シドモアは、日本を「賞賛すべき最高結合体」と言っていたしさ。

となると、明治の日本は「龍」のようにもみえる。

 

龍は、いろいろな動物の要素からできているといわれる。

「角は鹿、頭は駱駝、眼は鬼(幽霊)、胴体は蛇、腹は蜃、背中の鱗は魚、爪は鷹、掌は虎、耳は牛にそれぞれ似るという

(ウィキペディア)」

欧米のさまざまな「おいしいところ」をとり入れた日本を、こんな龍にたとえてもいいんじゃない?

 

 

「欧米からいろいろなものをとり入れた」と、文字で書くだけなら簡単だけど、このどれか一つをとっても、大変な作業だったはず。

たとえば、憲法を例にとってみる。
日本には、天皇という君主がいる。
だから、アメリカやフランスのように、君主制のない国の憲法は合わない。
君主(王)がいて憲法がある国となると、イギリスとドイツがある。

 

この2国の憲法をみた場合、イギリスのものは王の力が弱く、ドイツの憲法は王の力が比較的強い。まあ、イギリスには成文憲法がなかったけどね。

 

「日本という国に合っているのは、ドイツの憲法だ!」
と決めて、日本はドイツの憲法を参考にして、大日本帝国憲法をつくることになる。
憲法をつくるにしても、いろいろな国をよくみて、日本に合ったものを探している。
これだけでも、大変なはず。

 

ちなみに、このとき中心となったのが伊藤博文で、当時40歳ぐらい。
40歳って平成の今でいえば、会社の課長あたりじゃないの?
明治日本は、本当に若い国だったんだね。

 

この後の明治日本は、教科書で習ったとおり。
日清・日露戦争に勝利して国際的な地位をぐっと高める。
さらに第一次世界大戦のあとには、国際連盟の常任理事国になった。
完全に欧米列強と肩を並べたわけだ。
国際社会でのこの日本の飛躍も龍のようだ。

そういえばシドモアも日本をこう評していた。

突然嵐のごとく果敢に行動し達成することで外国人を驚かせます。

 

おまけ

中国人から見た「明治の日本の成功」について「サーチナ」の記事があったから、それも紹介します。

中国人が注目したのは福沢諭吉だった。

その理由の1つとして、福沢諭吉の脱亜論を挙げ、西欧諸国に敗れた中国を「師と仰ぐ」ことを止め、西欧に学ぶよう日本人に働きかけた人物こそ福沢諭吉であり、その思想こそ脱亜論だと論じた。

日本はなぜ明治維新を成功させることができたのか=中国メディア 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。