ドイツ軍のロンドン大空襲に、イギリス人は「平常心」で対抗

 

政府が日本全国すべての小中高校や特別支援学校に休学するよう要請するなど、新型コロナウイルスによって列島は緊急事態に突入した。

ドラッグストアやスーパーではマスクの売り切れが続出。

 

これまでどおり生産・流通しているのに、デマに踊らされてトイレットペーパーもなくなってしまった。

 

こんなふうに社会に混乱が広がって、国民がパニックになりそうなときほど冷静になることが大事ですね。
日本で最近よく聞く「正しく怖れる」というやつですよ。

底知れない不安や恐怖と戦うとき、イギリス人は「Keep Calm and Carry On」 (平静をたもち、普段の生活を続けよ)」という言葉を使った。
今回は世界的に有名なこのスローガンについて知っていこう。

 

 

第二次世界大戦中、ナチス=ドイツがヨーロッパ各地を侵略していき、フランスまでもその魔の手に落ちた。
次は当然、イギリスだ。
ここで1940年7月10日から、イギリスの制空権を握るためのドイツ空軍とイギリス空軍による空の戦い、人類史上最大の航空戦といわれる「バトル・オブ・ブリテン」がはじまる。

3カ月間にわたるこの戦いにイギリスが勝利したことで、世界はナチスから救われた。

10月になってイギリス空軍はドイツのイギリス上陸作戦を断念させることに成功した。その意味でバトル・オブ・ブリテンの結果は第二次世界大戦の重大な転機となった。

バトル・オブ・ブリテン

イギリス空軍の戦闘機スピットファイア

 

ドイツ空軍の戦闘機メッサーシュミット Bf109

バトル・オブ・ブリテンでは、中二病をくすぐるカッコイイ名称がいろいろ登場するのだ。

 

イギリス・ドイツ軍の戦闘機による激しい空戦

 

バトル・オブ・ブリテンのさなか、「ザ・ブリッツ」と呼ばれるドイツ軍によるロンドン大空襲が行われる。(1940年9月7日~1941年5月10日)
*ブリッツ(Blitz)とはドイツ語で「稲妻」の意。

ロンドンで特に被害が大きかったものの、ドイツ軍による爆撃でイギリスの各都市が大きなダメージを受け、43,000名以上の市民が死亡して100万以上の家が破壊された。
ヒトラーの目的はイギリス人の戦意をそう失させること。
戦う気力をなくしてドイツに降伏させようと考え、イギリスの都市に爆弾を次々と投下した。
ロンドン市民は地下鉄の駅の構内へ逃げ込み、そこが人々の避難所となった。

 

ドイツ軍による空爆

 

太平洋戦争中、空襲を受けた日本は竹やりで米軍に“対抗”しようとしたけど、ドイツ軍のロンドン大空襲にイギリス人は平常心で対抗した。
士気を砕こうとするヒトラーに、「いつもどおりの生活」をつらぬく。
ドイツ軍がどれほど街を破壊しても冷静さを失わなず恐怖にも負けず、日常生活をつづけることでイギリス人は戦っていた。

 

ザ・ブリッツを受けても店を開けるレストラン

 

店がなくなったら、路上で料理をつくって客に提供する。
シェフも店員も店内でいるときと同じ格好だ。

上の4枚の画像は「NHK 映像の世紀 第5集」のキャプチャー

 

ジャーナリストのコリン・ジョイス氏は当時のイギリスについてこう書く。

イギリス人はナチス・ドイツの脅威にひるむことなく生きていた。最悪の事態が迫っていた人々は犬を散歩させ、仕事に出かけ、配給制の下でなんとか日々をしのいでいた。

「驚きの英国史 (NHK出版新書) コリン・ジョイス」

犬の散歩も「戦い」になる。

 

非常事態になっても心を乱さない。
ドイツ軍に平常心で対抗したイギリス人の精神は、「Keep Calm and Carry On (平静をたもち、普段の生活を続けよ)」というスローガンで表現される。
絶体絶命のピンチに追い込まれると、逆にニヤリと笑うシーンは欧米の映画でありそう。

国民の不安をしずめてパニックを防ぐために、イギリス政府はこの言葉が書かれたポスターを250万枚つくって各地に張り出そうとした。
でも実際に張られたのはほんの少しで、ほとんどの国民は「Keep Calm and Carry On」というスローガンを知らなかった。
でもドイツに勝ったから、終わり良ければすべて良し。

 

この言葉はイギリス人の精神をよく表していて、ポスターには高いメッセージ性が込められていることから、いまでは世界中で見ることができる。

このメッセージは、2000年代後期の世界金融危機や、イギリスの病院で非公式なモットーとして用いられた。ポスターの画像を使った商品はアメリカの金融機関や広告業者によって大量に注文され、またドイツでも有名である。

Keep_Calm_and_Carry_On

日本人もいまこそ「Keep Calm and Carry On」

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。