【出っ歯・つり目・メガネ】米国社会の典型的な日本人像

 

つい先日、女性芸人コンビの「アジアン」が解散を発表した。
その理由のひとつが、隅田さんがいわゆる〝ブスキャラ〟を嫌がったためという。
「尼神インター」の誠子さんも「容姿イジリはやめました」と言ったように、容姿を利用して笑いをとるスタイルは日本ではもうなくなりつつある。
コンプライアンス的にもこれはあまり歓迎されないのでは。

ヒトが生まれもった身体的特徴をあげつらうような言動をすると、それは人種差別行為になる。
ヨーロッパ人がタイ人に向かって、指で目をひっぱる「つり目」のジェスチャーをして大炎上したことは前回書いたとおりだ。

 

さて昭和史のナゾとされるのが、太平洋戦争を引き起こした罪などで処刑された東条英機元首相らA級戦犯の“その後”。
遺骨が遺族に戻ることはなく、その行方は謎とされていた。
最近それに関する資料が見つかって、米軍によって遺骨は太平洋上空から海にまかれたことがわかった。

太平洋戦争のころといえば、アメリカ人が日本人に対して公然と人種差別を行っていた時代だ。
当時の日本人もアメリカ人やイギリス人を平気で「鬼畜」とよんでいたのだから、今となってはそういう歴史があったというだけのこと。

そんな時代にアメリカで制作・公開された戦争のプロパガンダアニメがある。

下のインターネットアーカイブで無料で見られるから、もう著作権は切れているのだろう。

Take Heed Mr. Tojo

なので映像のスクリーンショットを載せよう。
*この「Tojo」という日本人名はきっと東条英機を意識した名前だ。

 

「ジャップ」は日本人への侮辱語・差別語で、戦時中のアメリカでは新聞や雑誌で普通に使われていた。

 

「つり目」と「出っ歯」で日本人を表している。

 

当時のアメリカ社会にあった「醜い日本人」のイメージそのままの Tojo が襲ってくる。

 

しかし米軍に撃墜され、出っ歯だけが残るというオチ。

 

日本人に対するこんな偏見や人種差別意識まる出しの映像は、トランプ前大統領でも「チョットマテ、それはマズい」と放送禁止にするレベル。
現代では絶対にありえないシロモノだけど、今となっては70年ほど前のアメリカ人の価値観や、日本人への見方を示す資料とても貴重だ。

 

日本人・中国人・韓国には欧米人に比べて、目が小さく(細く)見えるという特徴がある。
寒冷地でも住みやすいように適応していった結果、こういう目の形になったという。
これが欧米社会でいう「アーモンド・アイ」だ。
*画像はリンク先に。

 

これを意図的に指で引っ張って「つり目」にすると、差別行為として袋叩きになるのが現代の世界。

「背が低い、メガネをかけている、出っ歯」といった日本人のステレオタイプなイメージは、戦後のアメリカ社会では鉄板だった。

1950年代の映画『ティファニーで朝食を』で日本人男性「ユニオシ」をそんな風に表現したことで(当時はOK)、90年代ごろには「差別的だ!」と猛批判されるようになる。

 

これを演じたのは白人の男性

 

1993年には『ロサンゼルス・デイリーニュース』も「攻撃的なステレオタイプであり、侮辱と傷をもたらした」と批判するなど、映画版ユニオシへの批判が相次ぐ。

ユニオシ

 

アメリカ社会から「出っ歯・つり目・メガネ」といった典型的な日本人像が消えたのはここ3、40年の間だと思う。
もうこんな日本人のイメージは昔話か、差別主義者のものでしかない。
いわゆる「デブ・ブス・ハゲ」といった身体的特徴をイジって笑いを取る時代も、きっともうすぐ過去になる。

 

 

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2 件のコメント

  • 「メガネ出っ歯の日本人」と言えば、一番思い当たるのは、水木しげるの『サラリーマン山田』ですね。これ、特定のマンガの主人公ではなく、複数の水木しげる作品にしばしば登場する有名なサブキャラです。水木しげるは出征して片腕を失っています。当時、米軍と直接に接触があったとは思えないが、おそらく、何らかの理由により米国人が日本人をしばしばそのように描くことを知っていて、そのキャラクターを作り上げたのでしょうね。なお一時期、水木しげるは、本人の「自画像」としてもこのキャラクターを使用していたようです。
    次に本当の意味で米国ハリウッド映画に登場した「メガネ出っ歯」(の日系人?)と言えば、映画「ビバリーヒルズコップ2」に登場する「バーンスタイン会計士」ですかね。高い声でべちゃくちゃ早口でしゃべって、主人公E.マーフィー演ずるアクセル刑事が匂わせたワイロの要求に、平然と応える。あの映画での本当の意図はどうだったか知りませんが、ぱっと見、私は「ああリトル・トーキョーにいる日系人のことだな」と分かりました。(ただし演じていたのは日系人でも東洋人でもありません。)
    まあ別に、そんなギャグ漫画・ギャグ映画の登場人物に怒りを覚えるなんてことは、自分はありません。むしろ笑える。が、今後はその種の「笑い」も次第に世の中から消えていくのでしょうね。

    でも、映画「フィフス・エレメント」でブルース・ウィリスの相手をした「空飛ぶ立ち食いうどん屋のおやじ」とか、「キル・ビル2」で「沖縄のマズイ寿司屋」を経営している日本刀製作者のハットリ・ハンゾー(演:千葉真一)なんか、独特の雰囲気でとても味があるんですけど。あれもきっと「差別表現」に分類されるのだろうな。

  • 外見上の特徴で特定民族を表現するのが差別であるとすれば、動物で表現するのはどうなんでしょうね?
    日本は「柴犬」だそうですけど。でも柴犬よりはもう少し大きいので「秋田犬」かな?

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