【日本国の名誉】江戸幕府の侍は、アメリカを見て何を思った?

 

日本の天皇について、自由と平等を最も大事な価値観とする国の人はどう思うか、知人のアメリカ人に聞いてみた。
するとアメリカではあり得ない存在だけど、天皇はいまの世界で「エンペラー」と呼ぶことのできる唯一の人物だからとても特別だという。
そんな記事をこのまえ書いたのですよ。

アメリカ人から見ると、「日本の天皇」ってどんな人?

今回はそのときに書こうと思ったけど、「なんか違う」と思ってやめたヤツ。
江戸時代の侍はアメリカ社会を見て何を思ったのか?をご紹介しよう。

 

1854年に開国した江戸幕府は、1860年(万延元年)にアメリカへ使節団(万延元年遣米使節)を派遣する。
数年前、日本人は初めて蒸気船を見て度肝を抜かれた。しかし、西洋人から蒸気船の操縦を習い、この使節団の派遣では自分たちの力で海外へ行くことを決めた。
福沢諭吉はその高揚感をこう記す。

日本人が初めて蒸気船なるものを見たのは嘉永六年、航海を学び始めたのは安政二年のことで、安政二年に長崎においてオランダ人から伝習したのがそもそも事の始まりで、その業成って外国に船を乗り出そうということを決断したのは安政六年の冬、すなわち目に蒸気船を見て足掛け七年目、航海術の伝習を始めてから五年目にして、それで万延元年の正月に出帆しようというその時、少しも他人の手を借りずに出掛けて行こうと決断したその勇気といいその技倆といい、これだけは日本国の名誉として、世界に誇るに足るべき事実だろうと思う

(福翁自伝 岩波文庫)

 

「少しも他人の手を借りずに出掛けて行こうと決断したその勇気」を侍は現実にして、日本人がつくり、日本人が操る船で太平洋を横断し無事にアメリカへ到達することができた。
こんな国は欧米以外にはない。
たしかに日本国の名誉として世界に誇るに足るべき事実だ。

 

アメリカ人と写真に収まるサムライたち

 

15歳の白人の少女と記念写真を撮る福沢諭吉
なるほど、これが世界に誇るに足るべき事実か。

 

アメリカに渡った幕府の役人は、議会を見学して衝撃を受けた。
そこは江戸城での真面目で厳かな話し合い(評定)とは真逆で、アメリカの議員は自分の意見を堂々と言って活発な議論を行っている。
これに驚いた侍たちは、その様子はまるで日本橋の魚河岸のようだと話したという。
当時の日本人には、市場で多くの人間が大声で値段交渉をしている光景と米議会が重なったのだろう。
各自が平等な立場から、自由にモノを言い合える雰囲気が江戸城にあったとは思えない。

またアメリカの国政選挙に関心を持った人もいた。
大統領の選出では、黒人以外なら、良い性格の人物であれば誰でも大統領に選ばれる資格があると随員の一人が記している。

そんなアメリカ視察から帰ってきたあと、老中から日本との違いについて聞かれた勝海舟は面と向かってこう言い放つ。

「わが国とちがい、かの国は、重い職にある人は、そのぶんだけ賢こうございます」

選挙で選ばれた政治家が国を動かすアメリカと、武士の子が自動的に武士になり、そのまま支配階級になる封建制度の日本を比較して、勝海舟らしい皮肉でこう表現したのだろう。

 

この万延元年遣米使節は、参加した日本人の意識を確実に変えた。
訪米前、多くの侍たちが持っていた西洋人に対する認識が、実は無知と偏見に基づいたものだったと気づく。
いろいろなアメリカ人と接して随員の一人はこう思った。

「一行のほとんど全員はこれまで西洋人を憎んでいた、しかし、今西洋人の態度を理解するに至り、そのような考えが変わった。あたかも西洋人が犬や馬のようであるとして彼らを卑しむことは失礼なことであり、大きな間違いである。」

日本人としての勇気や技量、そして国の名誉を持っていても、当時の武士はアメリカ社会の文明力に圧倒されたと思う。
それでも現実を見て、彼我の差を素直に認め、明治時代になると積極的に欧米に学んで国を発展させた学習能力は日本人のすぐれたところ、世界に誇るに足るべき事実だ。

 

参照:在NY日本国総領事館HPの「遣米使節団 アメリカの本質を理解した日本人

 

 

日本 「目次」

明治の文明開化に庶民はパニック!ポストや電線を見た日本人の反応は?

世界よ、これが明治日本の正義感だ! マリアルス号事件・人種差別撤廃

新幹線の始まり「あじあ号」、明治(満州鉄道)から平成(JR)へ

日本はどんな国?外国人(インドネシア人)の感想、違いや特徴

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。